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今日はただフィッシュマンズにありがとうを伝えたくて、miuちゃんと一緒に欣ちゃんに会いに行ってみた。
We Love Fishmans

今日はただフィッシュマンズにありがとうを伝えたくて、miuちゃんと一緒に欣ちゃんに会いに行ってみた。

健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、どんなときもぼくらの心に寄り添い、真心を尽くしてきてくれたバンド・フィッシュマンズがデビュー30周年を迎えました。そこで今回は、感謝の気持ちを直接本人に届けるべく、フィッシュマンズのファンであるmiuちゃんと一緒に、バンドリーダーの欣ちゃん(茂木欣一)に会いに行ってきました。7月に公開されるバンド史上初となる映画『映画:フィッシュマンズ』の話題を軸に当時を振り返りながら、結成当初の思い出話や、好きな音楽、いまなおバンドを続ける理由、そしてボーカル佐藤伸治についてなど、ファン目線で気になるアレコレを伺いつつ、心を込めて「ありがとう」を伝えたくて。フィッシュマンズの欣ちゃんと、そのファンによる2時間ちょっとのフリートーク。すばらしくてNICE CHOICEな瞬間を、ほぼノーカットでお届けします。

  • Photo_Yuki Aizawa
  • Hair & Make-up:Chiaki Tsuda(Kinichi Motegi)
  • Text_Shuhei Wakiyama
  • Edit_Yousuke Ishii

ヒップホップはすごくヒントにしていたけど、ぼくらはあくまでも生演奏でというのはこだわっていましたね。

ー 本能といえば、フィッシュマンズってライブごとに、それこそ生き物のように曲のアレンジが変わるじゃないですか。映画の中でも「偶然に起きることをみんなに求めるようになった」みたいなくだりもあって。すごい大変だなっと思っていたんですが。

茂木:特に後期はライブごとに変えていたよね。うまくできるまでたくさんリハーサルしていましたよ。それも、スタジオ録音なら家や車で聴くのに一番ふさわしいアレンジを突き詰めていくし、ライブだと会場で気持ちのいいアレンジっていのを突き詰めていった結果なんだよね。まったく違う感じになるのが自然というか、当たり前と考えていましたね。

ー ライブのメンバー紹介がまたいいんですよね。それこそ『98.12.28 男達の別れ』の1曲目『Oh Smile』でのメンバー紹介が好きで。これから面白い物語が始まるぞっていうワクワク感が半端ないです。

miu:一緒に歌っちゃいますよね、名前の部分を連呼するやつ(笑)。あれも練習していたんですか?

茂木:ぼくのサンプラーに「モテギキンイチ!」「カシワバラユズル!」「サトー!サトー!」っていうメンバー全員の名前を読み上げるサンプルが入っていたんですよ。あれは少しずつ、そうなっていきましたね。

ー 当時は「アカイ」のサンプラーを使っていたんですよね。どこかで佐藤さんのレコード棚リストを見た時に、ヒップホップのレコードがいっぱいあるなと思って、「アカイ」のサンプラーというのもそこからなのかなって。

茂木:ヒップホップのレコードはたくさんあったし、特に佐藤くんへの影響は大きかったですよ。98年の終わり頃は、その後の音楽シーンの分岐点でもあったしね。『Just Thing』ができる頃は、みんなでアレステッド・ディベロップメントとかデ・ラ・ソウルを聴いてヒントにしていたし、それがなかったらどういう曲になっていたか想像つかないぐらい。佐藤くんはアレステッド・ディベロップメントが本当に大好きで、来日時に「大阪クアトロ」でライブをした時に、ボーカルのスピーチに新大阪駅で会ったんですよ。

miu:えーすごい!

茂木:たまたま佐藤くんが12インチのレコードを持っていて、サインを貰いに行ったんですよね。スピーチはサインの下に「Stay Thirsty」って書いたんだけど、「乾いたままでこのまま進めよと言われたんだ」っていうのをすごい覚えていて。ヒップホップはすごくヒントにしていたけど、ぼくらはあくまでも生演奏でというのはこだわっていましたね。

ー 『Oh Crime』の「騒げ、騒げ」だったり、ヒップホップの影響は細かな部分にも感じていました。逆にフィッシュマンズってすごくバンドでの生演奏という活動にこだわりがあって、佐藤さんはみんなでやりたかったんじゃないかなとも思っていて……。

茂木:そう! フィジカルな感じね。ファーサイドのライブをみんなで観に行ったんですよ。そこで、ターンテーブルを回すDJはカッコいいんですけど、自分たちの感想としては「ドラムセットが欲しいよね」って話をしていたんです。あそこに生楽器があったら、やっぱり燃えるよねって感想がどうしても出てきて。だから、自分たち的にそこを突き詰めたというか、まあ生演奏したいっていう意地ですね(笑)。でも、みんなもそれが燃えるんですよね。

miu:創造性みたいなのを考えることがですかね?

茂木:そうそう。ぼくらはやっぱり自分たちで鳴らし続けたいんですよ。いまも鳴らしてるというのも、90年代に体験できなかった人にも届けたいというのもあるんだ。フィッシュマンズってこういうグルーヴだったんだっていうのを、音圧でしっかり浴びてもらいたいってうのはすごくあります。

ー ヒップホップといえば、デ・ラ・ソウル来日公演の前座をフィッシュマンズが務めたことがありましたよね? その時に30分超えの『LONG SEASON』1曲のみを演奏して、お客さんがみな呆気にとられたという、都市伝説みたいな話を聞いたことがあります(笑)

茂木:いま思うとめちゃくちゃですね(笑)。じつはデ・ラ・ソウルの前座の時は『LONG SEASON』の初演だったんです。「新宿リキッドルーム」でライブだったんですけど、ぼくらはオープニングアクトとして23時半くらいから時間をもらっていて。お客さん、全然いなかったんだよね。本当に5人ぐらいで、みんなデ・ラ・ソウルを観ようと思っているから来ていないんですよ。

ー 終電ぐらいに来ればいいよね、みたいな感じですね。

茂木:そうそう。だからぼくら的にもそこで『LONG SEASON』の初演をするチャンスが来たなって。うまくいくかわからないけど、やってみようみたいな感じで試させてもらったというか。あれを観ている人はほとんどいないと思います。でも、さっき別のインタビューで「あそこにいました」って言われたんだけど(笑)。すごいびっくりしたよ。

ー その都市伝説には続きがあって……。そこに小沢健二さんが来ていて、『LONG SEASON』の演奏を見て、どういうわけか怒っていた、なんていう噂を聞いたことがあるんですよ。

茂木:小沢くんがいたって話は聞いたことあるけど、どうだろうね……。今度会った時に聞いてみるよ。でも、こっちは小沢くんが94年に『LIFE』を出して、それはもう嫉妬していましたよ。

ー 当時、嫉妬したりライバル視していたバンドっていたんですか?

茂木:佐藤くんは多分、コーネリアスをライバルだと思っていましたよ。影響を受けちゃうからか、佐藤くんはできるだけ同じ時期のバンドの音を聞かないようにしてたと思う。ブランキー(ジェット・シティ)とか別の感じなら違って、好きで聴いてたんだけどね。でも、スピッツとかは聴かないようにしてたんじゃないかな。miuちゃんはスピッツも聴く?

miu:小学校の時に合唱曲で歌った覚えがあります。でも当時は音楽好きな先生に教えてもらったブルーハーツの方が響いたんですが……また違ったよさはありますよね。その頃にフィッシュマンズを知っていたら、また違う風に音楽に食らいついていたのかもしれません。

ー スピッツとブルーハーツは合唱できても、フィッシュマンズはちょっと難しそうですね……(笑)

茂木:合唱する感じではないよね……、想像できないもん。『ナイトクルージング』を合唱してるのとか。

ー ぼくたちはカラオケで『ナイトクルージング』を大合唱してますが……(笑)

INFORMATION

映画:フィッシュマンズ

出演:佐藤伸治、茂木欣一、小嶋謙介、柏原譲、HAKASE-SUN、HONZI、関口“dARTs”道生、木暮晋也、小宮山聖、ZAK、原田郁子、ハナレグミ、UA、YO-KING、川崎大助、西川一三、川村ケンスケ、こだま和文、佐野敏也、植田亜希子
監督:手嶋悠貴
制作:SETAGAYA FISHERIES COOPERATIVE
配給:ACTV JAPAN / イハフィルムズ
公開:7月9日(金)より新宿バルト9、渋谷シネクイントほか全国公開

公式Instagram:@fishmansmovie
公式Twitter:@FishmansMovie
fishmans-movie.com

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