Mariとの出会いがなければ、『いかれたBaby』の歌詞は降りてこなかったんじゃないかな。
miu：佐藤さんが作詞される時って、どんな感じだったんですか？
茂木：佐藤くんはそういう姿を全然見せなかったんだよね。ぼくも作詞しているとこを見てみたかったな。
ー 映画の中で、曲づくり期間があって、その期間はあんまり合わず、道端でたまに会うくらいだったみたいな話がありましたよね。
茂木：そうそう。でも、佐藤くんが変わったなっていうタイミングがぼくの中では2回あって。初期の『Just Thing』あたりまでが最初の佐藤伸治のスタイルだとしたら、その後にMari（＊MariMari）という女の子に出会うんです。やっぱり彼女と出会ったことが、とてつもなく大きな出来事だったと思う。
ー MariMariさんと出会ったのはいつ頃でしたか？
茂木：2枚目のアルバム『King Master George』が完成して、アーティスト写真を撮る時に、マリが飼っているパトラッシュっていう犬を借りたんですよ。それをきっかけに仲良くなって、それこそMariとの出会いがなければ、『いかれたBaby』の歌詞は降りてこなかったんじゃないかな。
miu：素敵だな〜。
茂木：メンバー的にもすごい感謝しています。Mariがいたから歌詞のインスピレーションが湧いてきたというのはあっただろうし。この前の試写にも来ていたんですけど、Mariとのおしゃべりって楽しいんですよ。佐藤くんがMariに話しかけた時のMariの返しって、そうとう面白かったんだろうなって。
ー それこそ、配信中にライブの裏でずっとZAKさんと話しているのも印象的でした。
茂木：そうだよね（笑）。佐藤くんの歌詞って、言葉数を絞りに絞って研ぎ澄まされてるじゃないですか。でも、聴いた一人ひとりがそれぞれ想い浮かべられるくらいの無限な広がりがあるのは、やっぱりMariとの出会いがとてつもなく大きい気がしていて。バンドの活動をしている時以外は、ずっとMariと一緒にいたんじゃないかな。
ー やっぱり女性は男を変えますね。
miu：私も頑張ろう（笑）
茂木：もうひとつの大きなタイミングは、所属レコード会社が変わるタイミングで佐藤くんはクルマを買ったんですよ。それも大きかったんだろうなって。クルマでいろんなところに移動するっていうのが、新しい視点を与えたんじゃないかな。免許を取り立ての頃は、ぼくのクルマで車庫入れの練習を夜中によくやっていたんですが、何度もエンストして。でも、その時間もすごく楽しかったな（笑）
ー 佐藤さんはクルマ好きだったイメージがあります。
茂木：うん、最初に買ったのは〈フォルクスワーゲン〉のゴルフ。多分、水色の1980年型じゃないかな。あっという間に変えちゃいましたけどね。確か車庫入れで失敗して、ドアの左側をガ―ってぶつけちゃった後に、譲にあげたと思う。
miu：えー！ 映画に写っていたのが、水色だった気がします。
茂木：確かあれが佐藤くんの1台目で、その後が〈ルノー〉かな？ 1年間ぐらいは乗ってましたね。次が〈ミニ〉のクラブマンだね。
ー クルマや女性で価値観が変わるって、すごく男の子らしいですね。映画といえば、miuちゃんは今回の『映画：フィッシュマンズ』をやるのをいつ知りましたか？
miu：2019年にceroと対バンした「闘魂」の現場で知りました。ライブ会場の外で貰ったポストカードサイズの映画のチラシを、いまもトイレに飾ってます。
ー 「Zepp DiverCity」でやった「闘魂」が最初の情報解禁だったんですよね。お台場で「フィッシュマンズの映画やるんだ！」って歓喜したのを覚えています。miuちゃんは試写で一足先に映画を観ましたが、いかがでしたか？
miu：そもそもミュージシャンのドキュメンタリー映画が好きなんですが、肉体的に出会った音楽をいまこうやってのちに劇場で観られるいいきっかけをもらったなって思いました。作中でマネージャーさんがおっしゃっていた佐藤さんの言葉、「自分がやっている音楽はそこまでみんな理解すると思っていないけど、誰かの人生を変えてしまうくらいの音楽をやっているつもり」っていうのを聞いて、音楽だけど音楽じゃないなって。人生を変えてしまうくらいのものを、私はもらいました。
ー まさに、“音楽はマジックを呼ぶ”ですね。
miu：そうですね。うまく言葉にできないんですけど……。
茂木：ぼくもそうですよ、音楽に人生変えられたっていうのは。話がそれるかもしれないけど、自分が10代に聴いた音楽に出会えてなかったら、こんなに人生盛り上がってたかなって。あの頃にさかのぼって聴いた60年代の音楽で音の生命力に出会って、本当にワクワクさせてられて人生輝かしてくれてるなって思ったから。ミュージシャンにラッキーでもなれたんで、今度は自分が何か人生が音楽で変わるっていうきっかけをちょっとでもつくれたらって。
