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Retreat for tomorrow. Vol.2三拠点生活がもたらした移動そのものに見出すリトリート。
MONTHLY JOURNAL Jan. 2022

Retreat for tomorrow. Vol.2
三拠点生活がもたらした
移動そのものに見出すリトリート。

日常から離れ、自分の心とカラダと向き合う「リトリート」。横文字だとちょっとお飾り感が強い言葉ではありますが、要は休息してリフレッシュするということ。つまりは、せわしなく生きる現代人にとってはとても重要なことなのです。今回は、東京〜御代田〜伊那谷という三拠点生活を送る編集者・プランナーの村松亮さんに、その暮らしぶりがどのように心身に作用しているのか、そしてリトリートに必要なことを一緒に考えてもらいました。

  • Photo_noru journal/ 住まいnet信州 / Ryo Muramatsu
  • Text_Shinri Kobayashi
  • Edit_Ryo Komuta

PROFILE

村松亮
制作会社「シカク」

スポーツカルチャー、ライフスタイルメディアを経て、現在は「シカク」に在籍。ファッションやライフスタイルなど幅広いジャンルの広告案件を手がける一方で、“new outdoors, reconsider the universe”(新しいアウトドアで世界を考え直す)の頭文字を取った「noru project」を発足。メディア事業「noru journal」、スタジオ事業「noru studio」を手がけ、多様化していく“乗ること”を通じて、人々の生き方を捉え直し、これからの時代の道標となるようなコンテンツを発信中。Instagram:@ryomuramatsu

三拠点生活、そのリアルな暮らしぶり。

伊那谷では美しい稜線が見られる。

ー 三拠点生活となるとかなり珍しいですよね。

村松:経緯をお話しすると、元々は東京と長野の2拠点でした。南信州エリアにある、通称で“伊那谷”と呼ばれる場所にセカンドハウスを購入したのがきっかけです。“伊那谷”は、ふたつのアルプスに囲まれていて、よく撮影場所にも使われるくらい山の景色が綺麗なんですが、そういう場所に2013年頃に小屋を買ったわけです。

村松:東京のマンションは当初は残したままで、週末に長野に通うというスタイルでした。そこは寂れた別荘地で、土地は600坪くらい(のちに400坪を足して現在は1000坪)。家はあるにはあるけど、風呂もないし、冬は寒すぎて越せないようなボロ家。価格は国産車の新車を買うよりも安いんじゃないか、くらいでしたね。でも土地がすごくよかったので、いずれお金が貯まったらリフォームしたらいいんじゃないかな、なんて思ってました。

ー 二拠点生活はどんな暮らしでしたか?

村松:平日は東京で働いて、金曜日の夜に家族と一緒に伊那谷の家に向かい、土日を過ごして、月曜の朝には車で東京に帰ってきていました。やがて長女が生まれて東京の保育園に通っていたんですが、月曜は長野から東京の保育園まで、“エクストリーム登園”してました(笑)。

伊那谷には、手付かずの自然が多い。

村松:伊那谷のエリアにも日本各地にある「森のようちえん」と呼ばれる、自然保育とか野外保育を実践する幼稚園があって、そこに娘を通わせたいなといつからか思うになリました。週末に山や川に子どもを連れて行くと、楽しんではいるんだけど、やっぱり都会の感じは抜けないし、こういう自然のある環境で子どもを育てられたらいいよね、という話は妻としていましたね。その後、東京のマンションを売ったお金で伊那谷の家をリフォームして、娘と妻だけそちらに移住して、平日は僕だけ東京のアパート一室に寝泊まりして、週末だけ伊那谷に通うという生活を3年やったんです。

ー 3年も!

村松:家族がそこで暮らすようになって、週末だけ行くのでは見えてこなかった、コミュニティのあり方や山の暮らしがちょっとわかるようになりました。僕自身は週末だけとはいえ、視野は広がったし見え方も変わりました。あとは単純に休むということ自体の純度が上がったっていうか、今まではちゃんと休んでなかったということに気づくんですよ。

編集とか広告制作という仕事は、仕事とプライベートがバチッと切り替わらない仕事ですよね。ごまかしながら休むみたいな。個人的にも元々休むことが苦手な性格だったり、仕事からプライベートにすぐに切り替えられないのですが、伊那谷に行ったときは本当に休めるようになりました。暮らしにメリハリがついたし、平日に会えない分、子どもをはじめ、家族とのコミュニケーションも濃くなりました。平日は集中して働いて、週末は集中して家族と過ごした3年間でした。

ー ある種、理想的な暮らしだったのですね。

村松:ただ、そのあと二人目の子どもも授かって、妻のワンオペではちょっと大変だろうと。伊那谷の家は、山にあるからあたりまえだけど、スーパーも遠くて歩いて行けないし、熊なども出たりするような場所。雪は降るし薪がないと冬は越せません。長女が幼稚園を卒園するときだったので、この暮らしを小学校卒業するまであと6年間か…と。そりゃ無理ですよね。

正直な話をすると、自分は離れて過ごす寂しさもありつつ、平日は仕事に集中できるし、なかなか快適だったんですよ。でも、今思うと当然、それで抜け落ちたり失うものも結構あったんだろうと。それで家族と話してその暮らし方はやめて、また家族で住む方法を考えようとなりました。

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