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ALL ABOUT LEATHER SHOES 2022いま革靴を履くべき10の理由。後編
MONTHLY JOURNAL MAR.2022

ALL ABOUT LEATHER SHOES 2022
いま革靴を履くべき10の理由。後編

「今年は革靴の年になる」。これは「GMT」代表、横瀬秀明さんが年賀状にしたためたメッセージ。いままで数々のインポートシューズをヒットさせてきた人物の決意表明ともとれるこの言葉は、2022年の潮流の変化を予見しているのかもしれません。実際その兆しはすでにあり、大手百貨店のバイヤーに聞くと、昨年後半からブランド価値のある10万円前後のドレスシューズが売れていると言います。この革靴回帰の真相に迫るため、今月の「マンスリージャーナル」では横瀬さんをはじめとする業界のキーマンたちにインタビュー。合わせて、いま押さえるべきブランドをピックアップしました。前後編10のトピックスからなるこの特集、いよいよ後編です。

06 : INTERVIEW WITH HIDEAKI YOKOSE(GMT) ローファー、黒白コンビ、そして新ワンマイルシューズ。

PROFILE

横瀬秀明

「GMT」代表取締役。「ワールド フットウェア ギャラリー」でキャリアを積み1994年4月に「GMT」を創業。取引先には〈アイランド スリッパ〉〈G.H.バス〉〈トリッカーズ〉〈ジャラン スリウァヤ〉など現在のシューマーケットに欠かせないブランドがずらりと揃う。直営店は現在14店舗。

インポートシューズ戦線を28年にわたって牽引した会社、それが「GMT」であり、陣頭指揮をとってきたのが社長の横瀬秀明さんです。革靴回帰をいち早く予見し、2018年には〈G.H.バス〉や〈トリッカーズ〉のフラッグシップストアをオープン。東京オリンピックが延期する思わぬ誤算もありましたが、昨年、蒔いた種が一気に花開きました。意気盛んな横瀬さんは新たなライフスタイルを踏まえたオリジナルブランドもローンチします。

ー いただいた年賀状に「今年(2022年)は革靴の年になる」とありました。

横瀬:コロナで数字が読みにくい2年間でしたが、肌感覚では確信しています。去年来、ローファーがヒットモデルに浮上しているんです。しかもスニーカーを履いて来店された若いお客さまがローファーを買って帰るという傾向がみられるように。

しかし考えてみればとそれも当然です。10年続くスニーカーブームで下駄箱にはスニーカーがあふれかえっているはずですから。

取材は東京・代々木上原にある「GMT」のショールームで行った。

ー スニーカーブームは10年続きましたか。ということは起点は2012年あたりですね。

横瀬:そうですね。ラグジュアリーブランドがスニーカーをコレクションに加えはじめた頃です。防災意識の高まりも潜在的にあったと思います。いざというときは頼りになりますから。

ー ローファーの代名詞である〈G.H.バス〉のフラッグシップストアをオープンしたのは青山のキラー通りでした。

横瀬:キラー通りはかつてのファッションストリートです。歴史あるブランドに相応しい通りであるというのがその地を選んだ理由です。東京オリンピックを観にやってくる外国人に見せつけてやりたいという思いがあったんですが、コロナのおかげで先送りに。転機となったのがスケーターたちから支持されるジェイソン・ディル。彼が〈G.H.バス〉の黒白コンビのローファーを履いて一気に火がついたのです。

〈G.H.バス(G.H.BASS)〉復活の立役者となった黒白コンビのローファー。〈ファッキンオーサム〉を主宰するジェイソン・ディルが履いて一気に火がついた。¥25,300

ー なぜ、横瀬さんは〈G.H.バス〉に目をつけたのでしょうか。

横瀬:世界に誇るトラディショナルなブランドながら、これまでは正しく評価されていたとはいいがたい。本国の〈G.H.バス〉のひとたちには何とかしたい思いがあったようです。ぼくにしてみれば〈G.H.バス〉は思い出深いブランド。この業界に入って最初にセールスを担当したのが〈G.H.バス〉と〈トップサイダー〉でした。こうして互いの思いが一致したんです。

ー それにしてもこのタイミングで〈G.H.バス〉を引っ張ってきたビジネスセンスには驚かされました。しかも同じ年に〈トリッカーズ〉の店もつくった。なんと、ジャーミンストリートに次ぐ国外初のお店だそうですね。

横瀬:革靴回帰に火をつけるためには先手を打つしかありません。オリンピックに振り回されましたが、我々の仕掛けもようやく形になってきました。

トリコロールの〈トリッカーズ(Tricker’s)〉は横瀬さんの私物。「恥ずかしくて下駄箱にしまいっぱなしでしたが、今年はがんがん履きたいですね」

ー これまで数々のブランディングを成功させてきた横瀬さんが手掛けるとなれば〈G.H.バス〉も〈トリッカーズ〉も安泰ですね。

横瀬:そうだといいですね(笑)。

ー その手腕に舌を巻いたのは〈ジャラン スリウァヤ〉でした。昨年は駐日インドネシア共和国大使館のアンバサダーアワードを受賞したとか。

横瀬:取り組みがはじまって19年。アワードの受賞は感慨深いものがありました。インドネシアで1919年に創業した〈ジャラン スリウァヤ〉は軍靴とローカルのサンダルをつくっていました。非常に手のいい職人が揃っていて、生産力もある。

この工場なら古きよき九分仕立て(出し縫いのみマシンを使うウェルテッド製法)が再興できるんじゃないかと思いました。これからは機械よりもひとに投資すべきだと持ちかけたところ、二代目のルディ・スパーマンは二つ返事。イギリスで製靴技術を学んだだけあって理解のあるひとでした。九分仕立てはいまや〈ジャラン スリウァヤ〉の代名詞になりました。

〈ジャラン スリウァヤ〉は我々がパターンから起こしており、MD戦略も日本主導で行っています。つまり「GMT」のファクトリーブランドのようなものと考えてもらって差し支えありません。現在は日本のみならず、アジアにも販路を広げています。およそ30人の職人がずらりと並んですくい縫いをしているさまは壮観ですよ。ぜひ取材にいらっしゃってください。

〈ジャラン スリウァヤ(Jalan Sriwijaya)〉のグルカサンダル。柔らかなシボを刻むレザーの編み込みとスクエアな尾錠のコンビネーションは申し分がない。¥37,400

ー 今年注目のブランド、デザインを教えてください。

横瀬:〈G.H.バス〉の黒白コンビに代表されるカラーコンビネーションはポスト・スニーカーの最右翼です。ハイテク系のスニーカーを想像していただければお分かりになると思うんですが、スニーカーは多色使いがひとつのスタイル。それは若いお客さまにとって馴染みのあるデザインなんです。

靴とサンダルの中間的なフットウェアも注目を集めるようになると思います。我々は〈アイランドスリッパ〉と〈ビルケンシュトック〉という二大サンダルブランドを展開していますが、これに続くブランドとしてオリジナルの〈J.B.カパラ〉を立ち上げました。

〈J.B.カパラ〉はスリッパのような佇まいながらしっかりしたソールを履かせています。自宅仕事が多くなると、いわゆるワンマイルシューズ的なフットウェアが必要になってきます。マーケットを見渡しても見合うものが無かったので、自分でつくることにしました。去年のテスト販売で確かな手応えが得られたので本格的にローンチします。

ひとつはポーランド産ムートン、もうひとつはカトマンズ産の縮絨フェルトを使ったもの。いずれもその素材が採れる産地(の製靴工場)でつくっています。

この春満を持してローンチする「GMT」のオリジナルブランド〈J.B.カパラ(J.B.CAPPALA)〉。素材はカトマンズ産の縮絨フェルト。カパラはネパール語でスリッパの意。各¥5,500

ポーランド産のムートンをまとった〈J.B.カパラ〉。このブランドはアッパー材を仕入れた地に構える製靴工場でつくっているのもミソ。つまりこちらはMADE IN POLANDだ。各¥7,700

ー 4月には〈パラブーツ〉のお店も丸の内にオープンしますね。早くも6店舗目とか。

横瀬:〈パラブーツ〉は従来のMDでは括れないブランドでした。ドレス、カジュアルというスタイルを超越するブランドだったからです。つまり、履き手の感性に委ねられるんです。我々にはその世界観を表現する空間が必要でした。

ー じっくりと腰を据えて取り組み、そして新たなスタイルを定着させるためには投資を惜しまない。「GMT」が紳士靴業界で一人勝ちの様相を呈している理由が分かりました。

横瀬:〈パラブーツ〉からも黒白コンビのローファーやラグソールを履かせたラギッドなデッキシューズなど物欲をそそるモデルが登場します。こちらも注目してください。

INFORMATION

G.H. BASS TOKYO

電話:03-5843-0777
オフィシャルサイト
Instagram : @ghbass_japan

トリッカーズ 青山店

電話:03-6805-1930
オフィシャルサイト
Instagram : @trickers_aoyama

ジャラン スリウァヤ 日本橋高島屋S.C本館ガレリア

電話:03-6281-8400
オフィシャルサイト
Instagram : @jalansriwijaya_japan

GMT

電話:03-5453-0033
オフィシャルサイト
Instagram : @gmtinc1994

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