スポーティなデザインがいまのファッションのムードとも合う。
PROFILE
1977年、長野県生まれ。硬軟を自在に操るスタイリングで、雑誌や広告など幅広い分野で活躍。2021年6月と2022年3月には、「スタイリスト池田尚輝 撰」と題し、ある特定の、局地的のものごとを、池田さんの視点で掘り下げた展示を開催し多くの反響を呼ぶ。
Instagram : @_naoki_ikeda
ー 池田さんは今年の3月、イギリスの伝説的なクリエイティブ集団を率いたレイ・ペトリの展示を行なっていました。彼の功績を通して、周辺にあった音楽シーンも紹介する内容でしたよね。
池田:服はもちろん、本も大好きだから、その辺のカルチャーはなんとなくわかるんです。けれど音楽だけは、正直あまりわからなかった。一方で、音楽がファッションに与えた影響は確実にある。なので今回、レイ・ペトリの展示を行うことで、自分のなかに音楽を落とし込みたかったっていうのがあったんです。

ー 池田さんと話す度に、知識の量に驚かされるんですよね。
池田:音楽だけは、本当にわからない。なんですけど、今回の展示で、いろんな方向からレイ・ペトリを探っていくなかで、イギリスにおけるレゲエの隆盛がわかったんです。ピストルズのジョン・ライドンとかがそうなんですけど、パンクをやっている人たちはレゲエ好きが多い。ニューウェーブの立ち上げとかにも関係していたり、パンクの前座でレゲエのDJが回していたりという過去があるんです。そうした歴史をつぶさに見ていくと、だんだん面白くなってきて、いろんなカルチャーと繋がりが見えてきて。
ー なにかひとつのことを掘ろうとしたときは、どう掘っていくんですか?
池田:やっぱり本が多いです。例えばぼく、クラシックもロックも、そんなに詳しくはない。だけど、本を媒介にすれば、そうした音楽もより深く味わえる。「本で読む音楽」とでも言えばいいんでしょうか。なんか、わかります?
ー たしかに、なにごとにも通ずるかもしれないですね。その前後関係であったり、作り手のことを知ってから、作品に触れるという。
池田:過去の解釈とか、先入観だけに左右されたくはないですけど、文脈を知るのは面白いですよね。


ー となると、本屋は結構通われますか?
池田:大好物です。本からインスピレーションを受けることは本当に多い。洋書も見ることが多くて、もちろん読破するのはなかなか難しいんですけど、ある一節に感銘を受けたりすることもあって。
ー いまさらなんですけど、池田さんがファッションに興味を持ったのはいつ頃だったんでしょうか?
池田:小6くらいですかね。いまでも覚えていて、あるとき丸首のスエットを着た上にパーカーを着てたんです。それを姉が見て「着る順番を逆にしろ」って。そうしたら幼いながら、スタイルがよく見えたんです。ファッションの目覚めは、きっとそこです。

ー ファッションの目覚めであり、スタイリストのはじまりですね。
池田:ぼくは、服そのものというより、組み合わせるのが好きなんですよね。一時期はカクテルにもはまっていましたし(笑)。だから、ゼロイチで服を作るというよりも、スタイリングが好きなんだと思います。
ー すでにあるものを、新たな視点で見て、再定義するという感じですかね。
池田:まさにそうです。姉に指摘されたとき、自分が持っているものが視点を変えたことで、蘇った気がして。