ANC-WISM-01(WIDE)

¥39,600 SIZE: 1,2,3
旧式のシャトル織機で時間をかけて織られた13.5ozのセルヴィッチデニムで、様々なデニムに触れ、テストしたなかから厳選された、表面が均一化し過ぎていない奥行きのあるデニム生地を使用。今回の別注ではインラインにはないリペアを採用し、リメイクと特殊なミシンである、千鳥ミシンによるステッチで補強。


腰回りにはスラックスで使用されるテクニックを採用しており、納まりはいいが良い意味での違和感もある。お家芸の加工では、職人の手作業で一本一本 “擦り” を入れ、幾層にも見える立体感のある汚しの表情が生まれている。

4月発売のデニムの次はスエットの別注が待ち構えている。このスエットをウィズム流にアレンジ。
堀家:自分が大事にしていることは、穿いたらいいなと思うようなものではなくて、穿く前に穿きたいと思わせられるものかどうか、ということなんです。
ー 山近さんも似たようなことを仰ってましたよね。
山近:はい。僕が最初につくったデニムって、ちょっと丈が短くて、テーパードしているようなフォルムなんです。ようするに変化球から入ったんです。ラックに並んでいるときから、穿きたいなと思わせるにはどうしたらいいかというところから考えて作りました。
ー 間違いなく目を引く一本になっているかと思います。
山近:パンツの市場ってなかなか入りづらいうえに、さらにデニムなんてほかにもたくさんあるじゃないですか。すでにあらゆるシルエットがあるとは思うんですけど、この加工でこの形となると、ちょっと気になる感じになるのかな、と。
堀家:なるほど。そういうことなんですね。パッと見ていいなと思える部分と、お話を聞いていいなと思う部分、両方ありますね。山近さんは僕よりも全然若いんですが、ただ単に勢いとノリでつくってる感じではないというのは、服を見たときにすぐに感じました。

プリントのバリエーションサンプル。染み込みのパーセントが違うものだったり、インクが違うものだったり。
今回取材でお邪魔した縫製工場は、〈アンセルム〉以外にも錚々たるブランドのアイテムを手がけているのですが、現場の雰囲気としては実にアットホームなものでした。メインで担当しているスタッフさんが山近さんと年が近いということもあって、語らずとも通じ合う部分があるというのは大きいとのこと。
「山近さんが工場に来ると、事務所のおばさんがワクワクしてるのがわかるんですよ。山ちゃん、山ちゃんって(笑)」とは工場のスタッフさんの弁。「とにかく大きい声で挨拶しますからね(笑)」という山近さんを中心としたコミュニケーションには、自然と笑顔があふれていました。

玉野市の宇野港にある「宇野のチヌ」。港周辺の沿岸や児島湖で拾い集めた漂流物を使って作り上げた作品。
お次は、瀬戸内海にほど近い場所に位置する、加工場にお邪魔しました。


これからまさにウィズム別注のデニムの作業に入ろうとしているところ。デニムの山が圧巻。
山近:ここの工場とは、僕が〈アンセルム〉を始めたときからの付き合いなので、そんなに長いわけじゃないんですが、すごく信頼しています。
堀家:みなさん、黙々と作業されていてめちゃくちゃかっこいいですね!
ー こういう加工場って児島にはたくさんあるんですか?
山近:そうですね。いくつかあると思います。ここのスタッフさんとも年が近くて、同じ感じで会話ができるんですよね。さっきの縫製工場の方もそうですけど、みんな服が好きで、なおかつずっと古着を見てきた人ばかり。そういうベースがあるからこそ外せるわけで。こういう人たちがいるから、自分は岡山にいるんです。


言葉を失うほどの加工っぷり。もはやアートの域。ここまで徹底的に“いじれる”工場はそうないはず。
山近:実はデニムの別注ってあんまり受けないことにしていて。かなりお声がけはいただくんですが。
堀家:ありがたいですよね。久々に状況を見てから仕込むのではなくて、最初のタイミングで別注やりたいって思ったブランドなんです。実は最初に別注でスエットをつくったときに、デニムも別注したいなと思ったんですけど、すごく大事にしているのがわかったので、いったんやめたんです。そのあとスエットがスパッと売れたあと、やっぱりデニムをやりたいなって思ったんですけど、それでも迷いました。きっと引き合いも多いだろうし、ほかと同じようなことをやってもいやだしっていう。
ー そんな逡巡があったんですね。
堀家:はい。二日間くらい迷いました(笑)。自分としては結構考えた方なんです。
山近:いつもめちゃくちゃ早いですもんね。オーダーする前にもういろいろ決まってるというか。
堀家:オーダーに時間がかかるのが悪いというわけではないんですけど、やっぱり自分が感じた熱量はある程度まとめて伝えたいんですよね。とにかく久しぶりにあれこれ考えずに、思いついたことに対して、すっとアクセルを踏めるブランドでした。