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奥深きレギュラーTシャツの世界3。
Dig It Regular T-Shirt

奥深きレギュラーTシャツの世界3。

古着の楽しみ方は人それぞれではありますが、“年代”や“希少性”といった既存の価値観に捉われることなく“それをどう楽しむのか?”という視点が重要となるのが、レギュラー古着と呼ばれるカテゴリーです。このたび、その象徴たるレギュラーTシャツにフォーカスした古着イベント「ドレギュラーTシャツ展」が3度目のカムバック! そこで前回と前々回同様、同イベントを主催する「ドゥージョー(dojoe)」の中野さん、「ウェーバー(weber)」の畠中さん、「アノラック(AnoLuck)」のizmtさんの3名を緊急招集。各々がイベントに出品するTシャツから“ひとつかみ”した推しアイテムの見所、そしてレギュラーTシャツの楽しみ方について語って頂きました。少々長めではありますが、どうぞお付き合いください!

近頃の音楽、夢の国、グズグズ、そしてガンジャ。

Selected by dojoe
Item01_ Music T-Shirt

中野:ではぼくから。まずは近年モノのミュージックT。古着を扱っていると現行モノが着づらい風潮ってあるんですよね。でも、ちゃんと見れば格好イイのも沢山あって。このビリー・アイリッシュなんてその代表例。これって3年位前だっけ?

Izmt:2018年ぐらいかなぁ。1番イイやつだよね。

畠中:これは普通に格好イイでしょ。

中野:グラフィックもイイし、プリントもちゃんとシルク(スクリーン)だからね。マーチャンダイズでありながら、自分たちでちゃんとこだわって作られているっていうのが評価できるポイント。実際、既にちょっと値上がりしているし、20年後にはビョーク超えの20万円位になると思っています(笑)。

ー ところで、読者の中にはシルクスクリーンとそれ以外の違いがイマイチ分からないという人も多いと思うので、教えてもらってもいいですか?

Izmt:シルクスクリーンは職人の腕によってブレが出たりして、そこに面白さがあったりするんですが、近年ではインクジェットの技術力も凄まじく進化しているため、正直パッと見で判断できない部分もあって。

畠中:じゃあ、どこが判断基準になるの?

Izmt:触った際に分かるインクの凹凸感とか。最近は白ベタといって、シルクスクリーンで白を敷いた上からインクジェットプリントを載せる方法もあるから、触っても分かりづらい場合も。それにこれはメイド イン UKでしょ。イギリスにインクジェットでプリント出来る工場がないという判断で……。

畠中:イギリスには無いんだ?

Izmt:多分あると思うけど、そんなイメージかなって(笑)。でもインクジェットって、部屋の湿度を保たなくちゃいけないしランニングコストもすごくかかるので、大きな工場じゃないと難しいっていうのはあるね。なので国内でも工場が減ってきているから、もしかしたら20年後には「これインクジェットだからレアだね」って話している可能性も(笑)。その辺の価値観は時代によって変わるかなと思います。

中野:まぁ、シルクスクリーンであるかどうかっていうのは1つの判断基準であって、そこまで重要視しなくてもいいんじゃないかなって話だよね。で、もう1枚がザ・ローリング・ストーンズの2005年のアルバム『A Bigger Bang』のライブツアーTシャツです。

中野:こちらはグラフィックが新鮮でプリントはシルク、さらにボディには〈アンビル(anvil)〉を使っていたりと、心(デザイン)・技(プリント技術)・体(ボディ)の三拍子が揃っているところがポイント。これなら現行モノでも違和感なく着られるロックT。

Item02_ Disney T-Shirt

中野:お次は、オフィシャルのディズニーTシャツ。どれもアリそうで見かけないのを集めました。これとかラインでミッキーの顔を表現しているんですが、インクがおもしろくて。Izmtくん、このプリントってなんだろう?

Izmt:これはシリコンプリントだね。それこそディズニーのように資本力があって何千枚と作れるからこそ実現出来る技法だよ。

畠中:へぇ〜プリントといっても、シートを張っているような質感なんだ。

中野:ぼくらの世代だと、ミッキーは80〜90年代のモノしか認めないっていう感覚があるけど、Z世代の子からしたら全然オッケー。むしろ変わったグラフィックということで値段が付いていて、1万円を超えるものもあったりするみたい。彼らからしたら十分古いっていうね。

畠中:00年代なら確かにそうだよね。20年近く前になるし。アメリカのディズニーランド限定で売られている『スター・ウォーズ』のTシャツにもすごく格好イイのがあったりするし、ディズニーものというジャンル自体の幅が、昔よりも広がっているのが分かっておもしろいよね。

中野:なので、コレをキッカケにぼくの中でも“年代が新しくても面白ければアリ”というように認識を改めました。で、次のこれがちょっとレアなやつなんですが……。

畠中:タグにキャスト エクスクルーシブ コレクションと記されているけど、従業員用のユニフォーム的なやつなの? コレって。

中野:ディズニー大学という従業員の人材育成機関があって、このアルムナイっていうのは卒業生・同窓生という意味なので、要約するとディズニー大学 同窓会のTシャツってこと。マクドナルドのハンバーガー大学みたいな感じだと思うんだけどね。

畠中:これは珍しいから、古着好きというよりもディズニーファンが欲しがりそう。

Item03_ GUZUGUZU Print T-Shirt

中野:これまでプリント技術の高さをフィーチャーしてきましたが、これはその真逆。前回紹介したミスプリントものにも通じるものがありますが、最大の違いがインクジェットでもシルクスクリーンでもなく転写プリントという点。もうほんとにグズグズ(笑)。

Izmt:どれもヒドイ(笑)。

畠中:そもそもこのデザインで、キレイな状態っていらないでしょ(苦笑)。

中野:そう、それだと全然面白くないんだよね。めちゃくちゃ良く言うとデニムの鬼ヒゲ。ここまでボロボロにエイジングされているから格好良く見える。これなんて、メッセージTで胸に“監視下に置かれなければ私はパニックになってしまいます。ですが……”から先の肝心な部分が、もうかすれちゃってて読めないっていう(苦笑)。

Izmt:これはヤバイよね。

畠中:田舎とかにあるよね、こういうお店。看板が1文字無くって違う意味になっちゃっているの。

ー でもこのかすれたメッセージプリントの雰囲気って、アバクロの近年ものでありますよね。

中野:そうそう。ありますよね、この感じ。

畠中:そっちも大概だけど、このアイコンが並んだホーム画面風のデザインの方もヒドくない?

Izmt:背中には〈アップル(apple)〉のマークがデザインされているんだけど、それも雑に切り抜かれていて、ありえないくらいチープで。

ー こういうジャンク扱いは、買い付け時にすごく安く手に入ったりするんですか?

中野:そうですね。数あるグズグズの中でも、最上級のグズグズのみを選んでいますが、まだ誰もこれには価値を見出してないと思うので(笑)。

Item04_ GANJA T-Shirt

中野:最後はガンジャネタです。現在はアメリカでもいくつかの州で合法化されていますが、これまでは違法だったため、ガンジャモチーフのTシャツは隠語を落とし込んでいたりとアングラ感のあるものが多かったんですよね。それが2010年代以降、合法化されたことでポップなデザインも色々と出てきて。その中でもパロディものに照準を合わせて集めてみました。

ー たしかに、コレなんかはかなりストレートですね。

中野:ただのパロディではなく、センスも良くないですか? 堂々と太陽の下で着られるようなものが出てくる辺り、“Tシャツは時代を映す鏡でもある”と感じさせられますね。

畠中:とはいえ、どれも日本で着ていたら即・職質モンだけどね(笑)。

Izmt:子供の小学校の行事とかには絶対ムリだろうね。ぼくは基本的に見た目がアレなので、なおさらのこと。

畠中:周囲に与える印象が、あんまりよろしくない(笑)。

Izmt:まぁ、ぼくの見た目は置いといて……中野君が選んだこの4ジャンルはどれも角度がスゴイね。これだけで、もうイイんじゃない?「参りました!」って言うしかないよ。だから。最初に出したかったんだけどなぁ……。

畠中:(笑)。でも本当にそう。“まさにドレギュラー”という位、的を得たセレクトを見せつけられたね。

INFORMATION

ドレギュラーTシャツ展Ⅲ そして伝説へ…

会期:4月29日(金)〜4月30日(土)
場所:dojoe
住所:東京都渋谷区元代々木町9-8
電話:03-6884-2425
dojoe-tokyo.com

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