このお店の絶対的な価値とは。

ー 「ビリヤニハウス」は、あくまでおいしいビリヤニをつくるための理想の場所であり、ビジネスではなかったわけですよね。では、お店を始めたきっかけはなんですか?
「ビリヤニハウス」でビリヤニを提供するのはひとまずやめて、「ガラムマサラ」で働くことに集中したけど、鬱になってしまって…。そんな時に、お店をオープンすることを人に勧められて初めてその可能性に気づきました。それまでは、「ビリヤニハウス」のつくり方が一番いいと思っていたんですけど、おいしいビリヤニをつくってお客さんに喜んでもらえてぼくは生活できれば、それが理想の状態なんじゃないかと。
ー その気づきがクラウドファンディングに繋がっていくわけですね。
いま考えると黒歴史なんですけど(笑)、大学生のときは起業するぞと意気込んだ、意識の高い学生でした。意識高くいろいろやってみたものの、結局自分には何にもないなと思って、何か揺るぎない価値を手に入れたいとはずっと思っていましたね。それとは別にビリヤニは、単純に好きで食べてきただけですが。
のちのち気づいたんですが、おいしいって絶対の価値だし、どこの人が食べてもおいしいものをつくり出せれば、それはすごい価値になる。研究に研究を重ねて、その価値をつくり出そうと頑張ってきた結果があのクラウドファンディングなので、1回でもビリヤニハウスに食べに来てくれた人は、その価値を感じてくれたんだと思うんです。その人たちが感想を書いてくれて、それを見聞きした人には、これは本物じゃないかとなって、分かってもらえたんじゃないかなって。

ー 飲食店って食べ物そのものだけじゃない、いろいろな価値があるとは思いますが、このお店に限っては、おいしいビリヤニが唯一無二の価値ということですね。
自分の中の価値は、おいしいビリヤニをつくることだけですよね。そのためにはなんでもします。ようやくその価値に紆余曲折があって気付いたということなんだと思います。
ー なるほど。ちなみに本場のインド人が、ここのビリヤニを食べたことはあるんですか?
彼らが本国で食べてるのはまたちょっと違うものだし、先ほど言った習慣としてのおいしさもあるので複雑ではありますが、リベラルな人たちは、すごいおいしいって言ってくれますし、保守的な人たちは、おいしいけど食べたいのはこれじゃないって(笑)。とはいえ、なんだかんだ、過去イチうまいとはけっこう言わせてますよ(笑)。