02 BGM

キューバサンド ¥800
アパレルブランドでも、オリジナルの世界観を崩さぬように、セカンドラインをつくることはよく見かける。カフェ「BGM(ビージーエム)」とミシュラン一つ星のフランス料理店「Ode(オード)」の関係もまさにそう。話を伺ったのは、すべての味を決める生井祐介シェフ。
「『Ode』はおいしく独創的な料理を東京から世界に発信しようとしてきました。そんな時にコロナという大きなインパクトが起こりましたが、当時は食の未来を考える時代の転換期にちょうどさしかかっていた時期だったかと思います。ぼくらも、フードロスをしない、生ごみを出さない、顔の見える生産者の食材を使うとか、色々とベクトルはある中でやれることを選択しようという思いでした」

カヌレ ¥400
「BGM」のメニューの一部は、「Ode」で出てしまう食材の端材を使ったものがある。一番人気のカヌレもそう。口に運んでみると、この日のカヌレはなんとなく柑橘系の香りがした。
「果物や野菜の端材を乾燥パウダーにして混ぜ込んでいます。生地ものは、フレーバーのあるパウダーを入れてもベースがしっかりしていれば、味はあまり変わらない。カヌレは人気なので、食べておいしいとなった後に実は、フードロス問題を知ってくれたらいいなと」

近日登場予定のトマトサンド
フランス料理の焼き菓子であるカヌレの他にも「Ode」の技は生きている。
「たとえば、キューバサンド。挟んであるローストポークはマリネしていますが、火入れやマリネのやり方などはレストランの技術を活かしています。開発中のトマトサンドは、スタッフからの提案メニューです。クルックフィールズという農場から毎日届く新鮮なモッツァレラチーズとトマト、フレッシュなバジルが入っています」
こうしたアイデアは、スタッフたちから提案してくるものも多いという。フードロスへの挑戦は、働くスタッフのスキルアップにもプラスに働いているそうだ。
「端材をどううまく利用していこうかと考えながら、手を動かしているとアイデアが出てきます。どう有効活用するかというスキルが磨かれていくんです。無駄なく使い切って、どうしても出てしまう部分については、コンポストに回します」

ドリップコーヒーはオリジナルブレンド、エチオピア、ルワンダ、エルサルバドルから、ホットとアイスが選べる。各¥600〜¥700
「コーヒーのブレンドは自分たちで行います。うちのコーヒーは、BGMという店名の通り、オーディオを前にしてちゃんと聴こうとする音楽ではなく、そういえばこういう音楽が流れていたなくらいの存在でいいんです。だから、コーヒーの味も毎日飲んでも飽きない、広く共感を得ら得るものとして、酸を強くしすぎないし、極度に深煎りにしないようにしています」


実はカルチャー好きだという生井さんのカルチャーやデザインにまつわる蔵書が店内にはさりげなく置かれている。それは、ものとしてのおいしさの先にフードロス問題を控えめに啓蒙するかのようなその手法もまさに「BGM」らしい。
