ファッション化する食の世界。

ーここからは食べながらお話ししましょう。近年、食のファッション化が進んでいると言われますが感じることはありますか?
清永:ぼくらの若い頃は飯を抜いて服を買う時代でした。昔は“衣食住”の時代だったけど、いまは順番としては、“食住衣”だから。
鳥羽:いまは安価なブランドでおしゃれして、いい飯を食うという時代になってきていますよね。
清永:昔はブランドを着ていることが強かったけど、いまは人気の飲食店に予約できることの方が強い。ぼくの感覚では、〈ソフ〉は食べログ3.6~7点くらい。〈シュプリーム〉は4点台(笑)。3.6~7点くらいが予約が取れそうで、ちょうどよくない?って話を鳥羽くんにしたんです。点数や星を獲っても、知り合いも断り続けなきゃいけないなんて、いやじゃない?
鳥羽:「Hotel’s」の空気感はがっついてないし、なんかいいなとは思ってますね。「Hotel’s」はいま(2022年11月時点)、食べログで3.74なんです。「sio」は3.93。「Hotel’s」はそういった使い勝手がいい店として考えているけど、みんなそこを目指せない。やっぱりミシュランを獲りたいし、食べログ4点オーバーの方がいいと思ってしまう。それを否定するわけではなくて、単純なスタンスの話ではあるけど、たとえるなら自分はそういうのは好きじゃないということ。
清永:3.6点くらいの方がスタッフもまわりも一番幸せになれると思います。たとえば彼女と飯を食べる時に、食べログの低いお店を候補として送りづらいよね。そう考えると点数づけのない時代の方がよかったなとも思う。

鳥羽:他人の物差しの世界で生きていくのはある種の思考停止だし、選ぶという作業をやめてしまうということ。売れてるから買うというのと、そのブランドが大好きで買うのとでは本質的に違いますよね。点の話になっちゃうと、カルチャーではなく、ファッションになってしまう。「Hotel’s」みたいにスペースを見つけてやってみると、結局は世の中にニーズがあって、その結果マーケティングがうまいよねみたいに言われたりして。
清永:鳥羽くんとはちょっとキャラ設定が違うけど(笑)、自分も昔は同じこと言われていたかもしれない。
鳥羽:(笑)。キヨさんもそうだけど、ぼくも俯瞰で見ています。すると、スペースが見えてきて、そこで何かをやろうとするとマーケティング目線になっちゃうんすよ。それをマーケティングというのか、次の文化をつくっていると見るのか。うまくスペースを見つけたから、結果マーケティングとして成功しているというのもあるから。
ーマーケティングとクリエイティブは、そもそも反発するものじゃないということですよね。