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FES.! FES.!! FES.!!! Vol.02ぼくらの行きたい3つのフェス
MONTHLY JOURNAL MAY 2023

FES.! FES.!! FES.!!! Vol.02
ぼくらの行きたい3つのフェス

vol1で紹介した通り、フェスは音楽だけでなく、少し遠出してその土地や空間も含めて楽しむのが醍醐味。vol2では、そんな風に楽しめる、ぼくらの行きたい3つのフェスを紹介します。フェスと聞いて多くの人がイメージする「FUJI ROCK FESTIVAL」、昨年新たに福島で産声を上げた「LIVE AZUMA」、インディペンデントなスタイルで注目の「岩壁音楽祭」。個性がバラバラな3つのフェスは、どんな思いを込めて、そのスタイルができたのでしょうか。

  • Photo_Uchutaishi☆Star(FUJI ROCK FESTIVAL)、Tetsuya Yamakawa, Ito Kaoru, Riei Nakagawara(LIVE AZUMA)、Daikichi Kawazumi, Ryusei Kashiwakura, Ryuki Takano(GAMPEKI MUSIC FESTIVAL)
  • Edit_Yusuke SuzukiShuhei WakiyamaSoma Takeda

FES.02:岩壁音楽祭 若者のインディペンデントな音を、山形の採石場から。

フイナムの注目ポイント

①岩壁が生む未体験の音の鳴り。
②テーマはオープンソースなフェス。
③20代を中心とした運営チーム。

山形駅から車を1時間走らせると突如現れる、高さ50mの岩壁に囲まれた採石場跡。高畠町にある「瓜割石庭公園」というあまり聞きなれないこの場所が、2019年5月にスタートした「岩壁音楽祭」の開催地です。発起人は、東京と山形に住んでいた当時25歳の2人組。国内外のフェスに足繁く通っていた大のフェス好きが、「この岩壁でフェスを開きたい!」という衝動に背中を押され、フェスの運営が未経験ながらも開催を決意。そんな前代未聞の挑戦に賛同した、東京と山形に住む同世代の知人たちも含め運営チームを発足し、フェスのプロや東北最大の美大「東北芸術工科大学」の学生たちの手助けもありながら、「岩壁音楽祭」をつくり上げました。

これまで開催された2019年と2022年、KID FRESINOやkZm、maco maretsにKotsu(CYK)、小林うてなとermhoiによるユニットThe Sacred Murmursなどなど、新たな音楽を追求するアーティストたちが出演。運営メンバーのほとんどが20代だからこそ、その年代に支持されるラインナップになっているところも、年齢層が幅広い大型フェスと一線を画すポイントです。23歳以下は半額で入場できる、U-23チケットという取り組みも納得できます。

岩壁に囲まれたライブステージと直方体の洞窟をそのまま活用したDJフロアは、音が岩に反響し地面を振動させることで、採石場でしか実現できない音の鳴りを体験できます。さらに、リラクゼーションに特化したCHILL AREAでは、シーシャやタイ式マッサージも用意されるなど、音楽以外のコンテンツもなんともユニーク。

どこをとっても唯一無二な「岩壁音楽祭」には、東京をはじめとした県外から多くの若者が来場するといいます。決して都会とは言えないこの場所に、なぜ足を運びたくなるのか? それはロケーションやラインナップ、さらには山形の秘境へと出かけるという旅路も含めて、ここでしか味わえない体験があるから。

そんな「岩壁音楽祭」の次なる開催は2025年。しかも、それをもって完結するようなので、岩壁と若者たちが生み出すエネルギーを堪能できるラストチャンス、現場に足を運ばない手はありません。

ー「岩壁音楽祭」をスタートしたきっかけやコンセプトを教えてください。

スタートした2019年頃は、フェスがどんどんメジャーになってきたのと同時に高齢化していることに、20代としてある種の物足りなさを感じていました。「若い世代のフェスをつくり、そうしたムーブメントを広げていきたい」と考えていたときに、会場の “石切り場” に出会い、衝動的に動き出しました。

とは言っても、フェスを開催したことのない素人集団だったので、フェスのプロたちに助けてもらって何とか開催することができました。その経験から、自分たちが得た知見を積極的に公開していく “オープンソースなフェス” のコンセプトが固まりました。

ークラブやライブハウスと違い、フェスならではの面白さや醍醐味はたくさんあると思います。その中で「岩壁音楽祭」の特徴を知りたいです。

むしろ「クラブのよさ」みたいなものをフェスに持ち込みたいと思っていて。いろいろなひとと交流できて、会場に一体感があります。運営やアーティストとの距離感がすごく近いし、地元のおじいちゃんおばあちゃんも歩き回って音を感じています。

ーこれまで開催してきた中で、特に記憶に残っている出来事はありますか?

会場の入口で地元のおじいちゃんが芋煮(山形のソウルフード)を配ってくれて、地域のひとと都会の若者が交流していたのが印象的でした。そのおじいちゃんは、ラストに KID FRESINOのパフォーマンスをみて泣いていました。

ー開催するにあたって大変なこと、毎回苦労するポイントはなんでしょうか?

周りをとにかく田んぼに囲まれた採石場が開催地なので、電源などのインフラからつくらないといけない。ゼロからすべてつくるのは楽しいですが、やっぱり大変です。洞窟を抜けた先にライブステージをつくるのですが、そこは車が通れないから、ステージ資材をみんなで洞窟の先に運び込んだりと、何かと手作業になりがちです。

ーオープンソースなフェスとして、収支をはじめとしたさまざまな情報を公開されていますが、それはなぜでしょうか?

「自分たちの場所がないなら、自分たちでつくる」というモチベーションでやっているので、「岩壁音楽祭」を参考にして他にも色んなフェスやイベント、チャレンジが増えてほしいです。情報を公開したことで、「自分もフェスをつくりたい」「一緒にやりたい」という仲間がとても増えました。こうした仲間がいなかったら続けられてないと思います。

ー「岩壁音楽祭」のフェスでのおすすめの楽しみ方・遊び方を教えてください。

スタッフとの交流。「岩壁音楽祭」はゲストとホストの境界があいまいなのがいいところです。手伝ってくれる学生たちもシフトをかなり少なくして、残りの時間はみんな踊ってます。なので、そういうひとたちと一緒に踊ったり話したりするのが一番「岩壁音楽祭」らしい楽しみ方かなと思います。アーティストとの距離感も、ライブ時に限らずとても近いのでみんな話しててクラブみたいだなと思います。

ー最後に岩壁音楽祭に遊びにくる方へのメッセージをお願いいたします。

みんなと話したいです。「岩壁音楽祭」はオープンソースなフェスとして、できる限り内情を公開してます。フェス当日でも、普段でも、DMでもメールでもなんでもください。

岩壁音楽祭
次回の開催は2025年を予定。
場所:瓜割石庭公園
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