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YUTAKA GOTO’S INTERVIEW
まずはじめに、ブランド生誕10周年おめでとうございます。改めて振り返るとどんな10年でしたか?
後藤本当にあっという間で、感覚的にいえばがむしゃらに駆け抜けた10年でした。その中で思い出せるのは、ブランドを始めた2~3年はお金や認知度、生産環境の安定など色々なことに苦労していたなということ。本当に苦しかったですね。当時は洋服を売るためのプロモーションを意識的に取り組んでいこうとなっていたんですが、僕らとしてはどんなにプロモーションで成功しても洋服としてのクオリティが高くないとダメだというスタンスを頑なに守っていたんです。
そうした思いもあって、ブランドを立ち上げてすぐに自社工場を構えたのですか?
後藤はい。そうした潮流にあって、洋服作りにこだわるブランドを育てていくにはまずそうした環境を整えることからだと思っていました。周りにはうちと同じように若いブランドでありながら自社工場を構えているところは少なくて、だからこそ始めの10年は真摯に洋服作りに向き合える10年にしたいと思っていたんですよね。
真摯に洋服作りと向き合った10年。となるとブランドがこれから向かう”次の10年”にはどんな展望を持っていますか?
後藤この10年で〈レミレリーフ〉ってどんなブランドなのかという認知は随分広まってきたと思うんですよね。だからこそこれからの10年は今まで意欲的に取り組んでこなかったプロモーションに力を入れていきたいなって思うんですよね。
なるほど。それがその”次の10年”に向けてのイントロダクションとして、今回のアニバーサリーを記念したスペシャルルックに繋がっていくわけですね。
後藤そうですね。僕は洋服を作るのは好きで得意でもあるんですが、スタイリングを組んで見せるっていうことは苦手だったんです。だから毎回カタログやルックでお願いする時には、そのスタイリストさんを100パーセント信頼し、すべて委ねていたんです。それで今年ブランドが10周年を迎えて、これまでに僕らと関わりを持ってくれた人たちや今気になる人たちを巻き込みながらなにか作れたらいいなと思って今回のスペシャルルックが実現しました。それと個性の異なるスタイリストさんが同じシーズンのアイテムをテーマにスタイリングを組んだらどうなるんだろうという純粋な興味があったんですよね。
そこからまた新しいアイデアやインスピレーションも生まれそうですよね。意外だったのは、〈レミレリーフ〉はカタログの時にもテーマやお題などはなく、担当するスタイリストの自由にスタイリングを組んでもらっているんですね。
後藤だってそうじゃなきゃ僕が組んだほうが良いわけじゃないですか。ガチガチにテーマや制約のあるスタイリングならスタイリスト様にお願いする必要もないですから。人それぞれに異なる価値観を持っているからこそ、その表現の違いを知りたいんですよね。それはユーザーの視点を見てみても明らかですよ。僕の作る服を若い子達は、全然違うイメージやコーディネイトで着こなしていますしね。それで良いと思うんです。
なんだか後藤さんの懐の深さが垣間見えた気がします。
後藤 もちろん信頼あってのことでもあるんですけど、やっぱりお願いする以上は結果的に相乗効果として成立していないと意味がないという思いもありますしね。荒木さんは付き合いも長く、サーフやアメカジなどの〈レミレリーフ〉らしさが一番出ていた気がするし、逆に猪塚さんは若い世代のモデルに着せこむことでブランドの新しい可能性を見出してくれました。片貝さんのようにアジアを連想させる斜め後ろの方向から捉えたような世界観や、新さんの絵の強い俳優と一騎打ちのような見せ方も面白かったです。なにより今回始めてお仕事をご一緒した服部さんは、そのシーズンのすべての型を使用するという仰天の発想にはつい膝を打ちましたね。ざっと振り返りましたが、やはり改めて今回のスペシャルルックは本当にそれぞれの良さや個性が滲み出ていて、手前味噌ですが大成功だと満足しています。
今後もどんどんそうした新しい取り組みやコンテンツが増えていきそうですね。
後藤そうですね。そうありたいですよね。それにはやっぱり洋服っていうプロダクトにこだわりすぎず、例えばアニメーションを作ってみたり、コンテンツ満載なWEBサイトを構築したり、どんどん試していきたいですね。それこそ今はアパレルブランドによる発信できる媒体・メディアというのを作ってみたいんですよね。まだまだ想像の範囲内で、これからどうするかというのは先の話ですけど。それでもこれまでの10年と同じことをしていても何も変わりませんからね。
直営店などの展開は考えたりしていないのですか?
後藤最近ニューヨークへ行って色々お店を見てきたんですが、お店でモノを売るっていうこと自体も少しづつ変わってきているんですよね。もう既に実践しているお店も多いですが、あくまでお店はコンセプトショップで世界観を伝える場所。実売はすべてオンライン。そうした形態のお店が増えているんですよね。買い物っていう行動を考えた時にもそっちの方がスマートですよね。なのでお店というよりもコンセプトショップが欲しいですかね。いわゆる所ジョージさんのやってる世田谷ベースのような場所が一番理想的ですね(笑)。
どれも”次の10年”に向けたイメージとしてワクワクしますね。改めてこれからの10年が楽しみですね。
後藤これからの〈レミレリーフ〉がお届けしていく洋服は当然、様々なコンテンツに注目してみてください。
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