過去から未来へバトンを渡す、現在の重要性。

CHINOさんとShigekixさんとFlashさんに、CRAZY-Aさんも加わり一枚。当時の衣装で参加してもらいました。各年代のB-BOYのファッションは、ラッパーやDJのスタイルとリンク。CHINOさんとFlashさんはRun-D.M.C.を彷彿とさせるセットアップが印象的です。’90年代になるとオーバーサイズの着こなしが見受けられ、時代の変遷を感じます。
―話を映像作品に戻します。動きや音楽以外に、ダンサーのファッションも変化していますよね。
KURO THE ROCK: 全体的な傾向ですけど、80年代はおしゃれで、90年代の後半になるともちろんおしゃれな人も沢山いましたが、動きやすさ重視のファッションの人も多かったですね。2010年以降になると、おしゃれな若い子たちがもっと増えてきて、この格好で踊るからかっこいいっていう、ファッション込みのスタイルが増えましたね。
Shigekix: もちろんひとによって違いますけど、時代の特徴はありますよね。ぼくもKUROさんと同じ意見で、ファッションも自己表現だから重要だと考えています。オリンピックでも、ほかの競技だとユニフォームが決まっているじゃないですか。でも、ブレイキンは、ある程度の制約があるものの自由でした。なにを着れば自分の踊りが映えるのか、それはどの時代においても大事なことだと思います。


KURO THE ROCK: 昔から意識しているのは、どこでバトルを仕掛けられるか分からないから、いつでも踊れる格好をしていて、それをいまも引きずっているんです(笑)。街で急にバトルを仕掛けられるなんて、20数年やってきて一度もないけど(笑)。『ビート・ストリート』(’84年)では、駅の地下とかで急にバトルが始まるんですよ。もしかすると、あるかもしれないって思っちゃって。
Shigekix: いつでも踊れるって言ったら、ぼくはスニーカーを大事にしています。スニーカーが嫌いなB-BOYはいないんじゃないかって思うくらい、みんな愛情が深いんです。こんなにボロボロになった、次のバトルはこれを履こう、踊る直前に靴紐を締め直す。踊らない時間も含めて、スニーカーに対する想いは強いです。


―最後に、過去から現在に繋がってきた映像作品の制作を経て、これからのシーンにどう貢献していきたいですか?
KURO THE ROCK: ぼくにできることがあれば、と思いますね。
Shigekix: ありますよ、たくさん。
KURO THE ROCK: ぼくを頼ってくれる後輩もいるので、イベントに呼んでもらったからには全力を尽くしたいと思っています。ぼくが運営している「ENTER THE STAGE」っていうダンスの情報サイトで、少しでもシーンをサポートできればいいですね。なにかしらの形でブレイキンに力添えできたらと思っています。
Shigekix: 「ENTER THE STAGE」はみんなチェックしていますからね。
KURO THE ROCK: おかげさまでたくさんのひとに見ていただいて、ありがたいです。

Shigekix: この数年で、世間にとってブレイキンがより身近な存在になったと思います。プレイヤーの立場からしても、時代が変わっている瞬間に立ち会っている感覚があるんです。でも、それは映像から分かるように、これまでの歴史があってこそ。この現在をどう未来に繋げるか、それがぼくたち現役世代に託されていると感じています。今後は競技としての成長より、ブレイキンのカルチャーやコミュニティの魅力を発信していきたいです。
KURO THE ROCK: そうだね。歴史を綴った映像作品ですけど、日本のブレイキンのすべてを語り尽くしているわけじゃありません。観ていただいて興味を持ったら、それを探ってもらいたいですね。そういう想いを込めているので、この映像だけで完結させずに、そこから深くのめり込むためのきっかけであってほしいです。
Shigekix: どこにもぶつけられないエネルギーを発散できるのが、ブレイキンを含めたストリートカルチャーの本質。時代とともに変化している部分もありますが、カルチャーとしてのブレイキンの魅力はどの時代も変わりません。それをみなさんに伝えていけるような活動をしていきたいです。