ゴールデンウィークの東京。各所でイベントが行われる中、多様なランナーたちが一堂に会した「Tokyo : Speed : Race」。アシックスジャパン株式会社と一般財団法人東京マラソン財団が主催するこのランニングイベントでは、さまざまなレースが企画され、DJが音楽を鳴らし、沿道からはランナーたちを鼓舞する歓声が飛び交います。
本気でタイムを狙うランナーはもちろん、仲間とタスキをつなぐリレーチーム、U-15、ファミリー、さらにはファッションやウェルネスの文脈から参加するひとたちまで、さまざま目的を持ったひとたちが外苑前のいちょう並木に集いました。
“速さ”だけじゃないレースを目指して。
金津悠大
2006年にアシックスに入社。現在は国内事業を担うアシックスジャパンのスポーツマーケティング部に所属し、選手や競技団体のサポート、契約業務のほか、マラソン大会やランニングイベントの企画・運営にも携わる。現在は「Tokyo : Speed : Race」をはじめ、ランニングカルチャーの裾野を広げる取り組みを行っている。
「アシックスには『Sound Mind, Sound Body』というブランド・スローガンがあります。スポーツを通じて、身体だけではなく心もポジティブになっていく。そして、それによって日々の生活が豊かになっていく、という考え方です。このイベントも、そういった価値を体現していただく場として開催しています」
そう語るのは、今回のイベントの主催者であるアシックスジャパンの金津悠大さん。そうした想いの根底には「ランニングカルチャーをもっと盛り上げたい」という気持ちがあるのだとか。
「ランニングを継続することで、運動そのものも続いていきますし、結果として心身がポジティブになっていく。走ることは豊かな日常への入り口になると感じています。ただ、それを言葉だけで伝えるのはなかなか難しい。だからこそ、こうしたイベントを通して、子どもから大人まで自然に身体を動かしてもらうことで、その感覚を体験として伝えていきたいと思っています」
©ASICS
その考え方は、イベントの設計にも表れています。今年は新たに「U-15」レースを新設。タイムやレベルだけではなく、より幅広いひとたちが“挑戦する場”として参加できるイベントへとアップデートされていました。
「『Tokyo : Speed : Race 』の魅力のひとつは、年齢や性別、ランニングのタイムやレベルに関係なく参加できるところだと思っています。障がいのある方も含めて、さまざまな方に参加していただけるイベントにしたいと考えています。去年もファミリー向けのカテゴリーやハーフリレーはありましたが、今回は中学生や高校生にも、“スポーツを通してチャレンジする場”を作りたいと考えました」
また、イベントタイトルに掲げられた“Speed”という言葉にも、単なる競技性だけではない意味が込められています。
「『Tokyo : Speed : Race』という名前ではありますが、“速さ”だけを意味しているわけではなくて、それぞれの挑戦がある大会だと思っています。レースって、普段ひとりで走っているだけでは味わえない“非日常”があると思うんです。たとえばスタート10秒前の緊張感とか、そういう感覚ってなかなか日常では経験できない。レース形式にすることで、真剣さやひたむきさ、その先にある達成感みたいなものを感じてもらえたらいいなと思っていますし、それぞれのチャレンジを応援していきたいと思っています」
©ASICS
そして金津さんは、今後さらにイベントを拡張していきたいと話します。
「今後もさらにユニークな企画を増やしていきたいと思っています。レースという観点では、市民ランナーの“頂上決戦”のような企画を入れてみても面白いと思っていますし、いろいろなカテゴリーやイベントを加えながら発展させていきたいですね。まだまだこの大会自体、これから成長していくイベントだと思っています。参加人数もそうですし、大会規模も含めて、もっと多くの方に参加していただけるイベントへ育てていきたいです」
レースだけじゃない、「Tokyo : Speed : Race」。
今回のイベントで行われていたのはレースだけでなく、会場内にはさまざまな体験ブースも並んでいました。
ランナーたちへの歓声が飛び交う会場の一角で、来場者たちが真剣な表情で手を動かしていたのは、岡山放送による“手話実況”の体験ブース。聞こえるひとも、聞こえないひとも、一緒にスポーツ観戦を楽しめる新しい文化を目指し、ろう実況者として活動するデフアスリートが、来場者に手話実況の方法をレクチャーしていました。
モデルとして活動する一方、ランニングインフルエンサーとしても走ることの魅力を発信している星南さんも、そのブースに足を止めたひとりです。
「もともと手話を習いたいと思っていて、今年ちょうど手話教室にもエントリーしていたくらい、興味があったんです。昨年は記念すべき100周年となるデフリンピックも東京で行われていて、”コミュニケーションのツール”として広がっていくといいなと思います!」
さらに星南さんは、義足体験のブースにも参加。陸上競技はもちろん、サッカーやバスケットボール、日常使用も想定した義足まで、さまざまな義足が展示されていました。アスリートたちが使用する義足は、身体に合わせて一人ひとりオーダーメイドで制作されているといいます。ブースでは体験用の義足を装着して、実際に歩いてみることができました。
「義手を装着しているパラアスリートの友人はいますが、義足を装着されているランナーの方との関わりはなく、こうして実際に体験することで学ぶことが多くありますね!」
また、〈アシックス〉の試し履きブースでは「SUPERBLAST 3」を試着。昨年の東京マラソンでは「SUPERBLAST 2」を履いていたという星南さんは、「さらに軽さと反発感を感じた」と話します。
「それぞれのスピード感とか、求めているものに合わせてシューズを選べたり、実際に体験できるのがすごくいいなと思いました」
お祭りのようなワイワイとした空気感。
さて、気になるのは肝心のレースでしょう。今回は「ファミリーラン」のほか、「U-15 レース」、「ハーフマラソンリレー」、「5kmレース」を実施。タイムを狙うランナーはもちろん、仲間とタスキをつなぐチームや、イベントを楽しみながら参加するひとたちまで、それぞれのスタイルでレースを楽しんでいました。
まず話を聞いたのは、「ハーフマラソンリレー」に参加していたランナーたち。コミュニティ単位で参加するチームも多く、会場には、個人レースとはまた違った熱気と一体感が生まれていました。
ファッションランニングアドバイザーとして活躍する「ビームス」の牧野英明さんは、社内のランニングチームとして「ハーフマラソンリレー」に参加。最近では、社内でも若い世代のランナーが増えているといいます。
「『ビームス』のランナーって、少し前まではぼくらくらいの世代が中心だったんですけど、最近は入社2年目くらいの若い子たちで、学生時代に陸上やっていた子も増えてきているんです。走ることをすごくポジティブにとらえて、こういうイベントにも積極的に参加してくれるようになりました」
「実際に走ってみて思ったのは、ひと昔前のリレーマラソンとは雰囲気が全然違うところ。ファッショナブルなチームも多かったですし、ワイワイした空気感がすごくよかった。お祭りみたいな熱気がありましたね」
「アシックスって、すごく真面目なイメージがあったんですけど、最近はこういうオープンなイベントを積極的にやっている印象があって。もっとストイックなイベントを想像していたんですけど、実際はすごく自由な空気があった。そこも、このイベントを楽しめた理由のひとつですね」
ランニングはもちろん、瞑想やヨガなど、“整える”ことをテーマに活動するウェルネスコミュニティ「THE WEEKEND WELLNESS CLUB(TWWC)」として参加していた野山隼さんも、「ハーフマラソンリレー」に参加。
「みんなスタートからかなりスピードを出していくので、600mくらいで一気に身体が動かなくなってくる感覚があって。かなりきつかったですね。でも、4~5歳くらいの子どもから大人まで、本当にさまざまなひとたちがいて、それぞれのペースでこのイベントを楽しんでいるのが印象的でした」
「今回のイベントって、何かを競うというより、みんなでひとつのことをやる感覚がすごくいい。タスキをつなぐ経験って大人になるとなかなかないですし、走るだけじゃなくて、そういう一体感みたいなものを感じられるところが、このイベントの魅力だと思います。また次回も参加したいですね」
それぞれのペース、それぞれの挑戦。
一方、5kmレースでは、よりシリアスな空気も漂っていました。スタートと同時にランナーたちが一斉に駆け出し、それぞれのペースでゴールを目指します。
会場内の体験ブースを巡っていた星南さんは、5kmレースにも参加。膝に不安を抱えながらの出走だったといいます。
「本当は無理せず走ろうと思っていたんですけど、会場の雰囲気というか、みんなの“本気度”がすごくて。気づいたら頑張っちゃっていました(笑)。結果は23分台で、人生でいちばん速く走ったかもしれないですね」
「〈アシックス〉って、日本発のブランドでありながら、グローバルなイメージがもともとありましたが、今日参加してみて、改めてさまざまなランナーの方が参加されていて、年代や性別、文化が自然に混ざり合っているイベントだなと感じました。すごくインクルーシブなイベントだったなぁと感じましたし、ブランドへの理解がより深まりました」
「あと、〈アシックス〉ってランニングウェアの色使いが、個人的にも好みのやわらかいカラーが多いし、デザインもすごく可愛い。そういうところも魅力的だなって思います」
元プロラグビー選手のたいせいさんも、5kmレースに参加。普段は10km~15kmほどの距離をゆったり走ることが多いそうですが、「5kmをフルで走るのは想像以上にきつかった」と振り返ります。
「最初ちょっと飛ばしすぎました(笑)。周りのランナーもみんな速くて、“俺についてこい!”くらいの気持ちで入ったんですけど、後半かなりきつかったですね。でも、ギリギリ20分50秒台くらいで走れたので安心しました」
「今日は『SONICBLAST』を履いて走りました。このシューズはジョギングからレースまで使えるところがいい。あと、〈アシックス〉のウェアはすごく機能的で、ユーザー目線でいろいろと考えられているところが気に入っています」
「今回のイベントに参加してみて思ったのは、“速いひとだけ”のイベントじゃないってことですね。リレー種目もありますし、普段そこまで走っていないひとでも自然に参加できる空気がある。そのハードルの低さが魅力だし、こうしたイベントをきっかけに、いろんなレースへ挑戦していくひとも増えていく気がします」
レースが終わったあとも、会場には多くのランナーたちが残っていました。タスキをつないだチーム同士で写真を撮るひとたちがいれば、芝生に座りながら次のレースについて語り合うひともいる。
“Speed”や“Race”という言葉が冠になりながらも、そこにはひとつのカルチャーイベントのような空気が流れていました。走ることを通してひととひとがつながる。そんなランニングの魅力を、改めて感じる1日となりました。
次回の「Tokyo : Speed : Race」は、どんな景色を見せてくれるのでしょうか。いまから来年が楽しみです。
Photo_Tada
Text_Tsuji

