「〈ブルックス ブラザーズ〉は、ウイメンズももちろん展開されているんですけど、どちらかというとメンズの、歴史のあるジェントルマンな装いを語るときに必ず登場するブランドのひとつというイメージが強いですね。女性がジェンダーなものを身に纏う時代になってから尚更。今日着ているようなオックスフォード生地のボタンダウンシャツやテーラードジャケットは特に、元々の発祥であるメンズのアイテムの良いところを持ったうえでのウイメンズの形なので、信頼というか安心感のあるアイテムですよね。シャツはあえてメンズっぽく大きめのサイズを選んでいますが、襟が小さくてバランスが良いんですよね」
航空会社勤務のOLから一転、スタイリストとして活動し、いまでは雑誌媒体をはじめ、テレビやトークショーへの出演、ブランドのディレクションなど多岐に渡って活躍するスタイリストの亀恭子さんは〈ブルックス ブラザーズ〉のイメージをそう語ってくました。ベーシックさを大切にしながら、その時代毎のトレンドを上手く取り入れる亀さんのファッションスタイルは、〈ブルックス ブラザーズ〉というブランドとも相性抜群です。
「トラッドをベースに、少しモダンな要素を加えてコーディネイトしました。ボトムをコンパクトにまとめて、他のアイテムの色合わせも全部黒で統一して。少しツヤ感のあるシューズを合わせて、素材で変化をつけながら黒を丁寧にレイヤードしました。最初はインディゴのデニムを合わせて、カジュアルなトラッドにしようか迷ったんですけど、アウターのコーデュロイの色味を活かすなら、スッキリさせた方が良いかなって。最近、自分の着る服は以前よりもより削ぎ落としてシンプルになっている傾向があります。」
「今日のシャツもそうですけど、最近はゆったり目のものを選ぶことが多いかもしれないですね。それこそ旦那に買ってきたはずのニットを私が着ていたりとか。ただ、1、2年前だと下もゆるっとしたものを選んで、全体的にリラックス感のある格好でしたけど、最近はもうちょっとメリハリをつけて、綺麗に着こなす方が、時代の流れ的にも、自分の気分的にも回帰しています。トップスなのかボトムなのか、ちょっと緩くはするんですけど、合わせはスッキリさせたり、きっちりインしてベルトでマークするとか、着こなしとしてはメリハリを付けるのが気分です」
多忙な毎日であっても、子供、家族がいるからこそ、しっかりとしたメリハリの効いた毎日を過ごせるのだそう。自らの生活とスタイリストとしてのキャリアをしっかり両立させる亀さんにとって、定番というものはどういうものを指すのでしょうか。
「時代を経ても、時代と共に良い意味で変化もするもの。例えば定番の〈ブルックス ブラザーズ〉を5年前と同じものを着てるかって言うと違う。いまだったら選ぶサイズ感を大きめにして、時代の気分とかトレンドに合わせて着たりするじゃないですか。でも、5年前に着ていたものを、10年後にまた回帰して新鮮な気持ちで着れたりもしますよね。そうやって、アイテムとしてはいつの時代も手に取るものでも、着こなしとしては時代に合わせれるもの。デニムとかもそうですよね。スキニーが流行っているときもあれば、いまだったらインディゴのノンウォッシュが気分だったり。普遍的に愛されているアイテムというのが定番だと思うんですけど、その中でも、時代に合わせてちゃんと更新されているものが本当の意味でのベーシックかなと思うんです」
「いまの時代、多種多様にスタイリストがいて、ファッションアドバイザーといった肩書きの人もたくさんいる中で、この仕事を私としたいなって思ってくれる切っ掛けは、“私らしさ”=パーソナリティだと思うので、そこは失っちゃいけないなって思っています。けれど、さっきの定番と同じで、同じことをずっとやっていてもダメで、そのときのトレンドに沿って、少しずつなんですけど、更新をしていくことは大事だと思って仕事をしています。この人だからお願いしたいって思ってもらえるような、その人らしさと、その都度の柔軟性や更新力は秘めていたいなって、いつも思っています」
PROFILE
1978年生まれ、埼玉県出身。短大を卒業後に航空会社に就職。約3年ほどOLとして勤務した後に、スタイリストへ転身。ファッション誌『CanCam』からデビューして、その後多数女性誌で活動の場を広げる。ベーシックとトレンドを巧みにミックスしたスタイリングが同世代の女性から支持され、カリスマ的な人気を博す。現在はスタイリストのほか、トークショーやテレビ出演、ブランドプロデュースなど幅広いフィールドで活躍している。
Photo_Shin Hamada
Text_Maruro Yamashita
Edit_Yosuke Ishii