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写真家山谷佑介の次の一手は、横須賀の歴史、風土、息づかいをあくまで私的なフィルターにてとらえた作品です。

次に何をしでかすかわからない、いい意味で。というのが写真家・山谷佑介の印象です。フイナムではその足跡をことあるごとに追いかけてきましたが、前回取材させていただいたときにこんなことを言っていました。

写真家山谷佑介を巡る 旅、写真集、書店、その他いろいろ。

山谷:(前略)最近俺、家買ったんですよ。
野村:まじで!
山谷:はい。横須賀に買っちゃいました。今まで自分がやってたことを拡張していって、もっと自分の都合で動いていきたいなと。で、それはどこに住んでもできるのかなって。
野村:へー、じゃぁこれから横須賀に住むの?
山谷:はい。来年の3月くらいから。
野村:あ、随分先じゃない。
山谷:そうですね。中古物件なんで自分たちでリフォームしようと思ってます。図面を描ける友人がいたので、一緒にああだこうだいいながらやってます。で、俺は大工の見習いみたいな感じでやろうかなって。

というわけで、次はその“横須賀の家”を舞台にした作品でした。

「ここまで写真にハマるとは思わなかった」とは山谷の弁ですが、いつだって自分のなかに沸き起こる衝動を静かに、ときに激しく形にしていく山谷は実に真っ当な作家なのだと思います。

横須賀の築82年の三棟平屋の古民家を自宅件アトリエに改築するプロジェクトは家族、友人・知人を巻き込みながら、自身もその作業に一から加わり、土やコンクリートといったモノに直接的な形で触れ、横須賀の土地や建物が持つ歴史やそこに暮らしていた人々の痕跡を掘り起こしたりする過程に、自身が考えてきた写真表現との類似性を見出していったとのこと。

そして、生まれたのが土壁の立体作品、そして作業中に撮影された写真作品で、それをまとめたのが新作展「KAIKOO」です。

「竣工から80年の間に繰り返されたリフォームで埋もれてきた歴史が顕にされ、特筆すべき歴史的価値のない、ありふれた昔のものたちに今一度光が当たる。受け継がれてきた歴史や伝統とは程遠い、どこにでもあるそれぞれの家の話だ」

掘り出される土や伐採した植物、自らの手で加工されていく木やコンクリートなど、住居づくりがもたらしたフィジカルな感覚、感触は山谷に新たな創作意欲をもたらしたようです。

開催はあと一週間強です。気になる方はこの週末にでもぜひ。

INFORMATION

山谷佑介「KAIKOO」

会期:2021年10月16日(土)〜11月13日(土)
会場:Yuka Tsuruno Gallery
住所:東京都品川区東品川1-33-10-3F
電話:03-5781-2525
時間:火〜土 11:00〜18:00
※11月4〜7日 「Art Week Tokyo」開催中は 10:00〜18:00
休廊日:月・日・祝

山谷佑介
1985年新潟県生まれ。立正大学文学部哲学科卒業後、外苑スタジオに勤務。その後、移住した長崎で出会った東松照明や無名の写真家との交流を通して写真を学ぶ。近年の展示に「VOCA展 2021」(上野の森美術館、2021年)、「BEYOND 2020」(KunstENhuis、アムステルダム/amana Gallery、東京/Galerie Nicolas Deman、パリ、2017年)、「Into the Light」(BOOKMARC、2017年)、「Lianzhou Foto 2016」(連州、中国、2016年)、「KYOTOGRAPHIE」(無名舎、京都、2015年)、「Yusuke Yamatani: Recent Works」 (アリソン・ブラッドリー・プロジェクツ、ニューヨーク、2015年)など。写真集・モノグラフに『ground』『RAMA LAMA DING DONG』『Doors』(ギャラリー山谷)、『Into the Light』(T&M Projects)など。

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