前回、芸人の藤森慎吾さんをフィーチャーした〈リモワ(RIMOWA)〉の「THE NEW NORMAL」プロジェクト。トレードマークのメガネを外した彼の姿が目に焼き付いている方も多いのではないでしょうか。
ここで紹介するのはこのプロジェクトの第六弾。アーティストユニット「MES」が登場します。
ご存知ない方のために説明すると、「MES」は新井健さん(TAKERU)と谷川果菜絵さん(KANAE)が2015年に結成。東京を拠点に、仮設資材を使ったレーザーライティングをはじめ、ライブテーピングや彫刻のインスタレーションなど、従来のアートの枠組みにとらわれない活動を続けています。さらに、アートの領域だけでなく、クラブカルチャーにも接点を持ち、イベントの空間演出を手掛けることもあるとか。さまざまな表現方法で作品に触れるひとたちを驚かせています。
それではまず約1分半の映像をご覧ください。ユニット結成のきっかけや作品づくりのコンセプト、コロナ禍で変わる表現が2人の口から語られます。
このなかでTAKERUさんとKANAEさんが持っているのは、アルミニウム製スーツケース「リモワ オリジナル キャビン ムーン」。これは今年2月にリリースされた火星と水星のコレクションに続くもので、ボディに月面のクレーターをイメージしたグラフィックがあしらわれています。実はこれ、プリントではなく、陽極酸化処理などの加工技術を用いて顔料を刻印。ディテールにあしらわれた赤と白のラインは宇宙服をイメージしています。
このスーツケースの発売を記念した、「MES」のインスタレーションが「リモワ 表参道店」で行われています。2人は作品についてこう説明します。
「蓄光を吹きかけた、FRP(繊維強化プラスチック)の球体に、両サイドからレーザーを当てると瞬間的に蓄光が反応するようになっています。月面をイメージしたアニメーションを中心に映しつつ、〈リモワ〉のロゴや東京とケルン、地球と月の座標を表現しています。いつもは平面に投影することが多いですが、今回は月をイメージするため立体作品にしました」
東京をベースに活動している「MES」ですが、今年は地方で作品を発表する機会も増えたとか。作風もこれまで多かった平面作品に加え、立体作品も制作、必然的に手掛けるものの規模も大きくなったといいます。
「以前はイベント用につくることが多かったのですが、コロナ禍で時間ができた分、アート作品と向き合えるようになりました。原点回帰とも言えるし、新しい日常がはじまったとも言えます。いま私たちにはニューノーマルという言葉がしっくりきているのかもしれません」
複雑な時代のなかでもトライし、進化する「MES」の2人。これまでの経験を生かしつつ、新たな方向に舵を切ろうとしています。
Photo_Yuma Yamashita(Installation)