定期的に動向を追いかけている写真家、名越啓介が今度は一風変わった写真展を開催します。
タイトルは「THAMP」。これはインドのケーララ州の言葉で、サーカスを意味します。
本作は2012年に撮影されたものなのですが、これまでの展示と異なるのは、10年以上に渡って名越の写真をプリントしている“ラボ”とタッグを組んで開催される展示だということです。
以下は名越の言葉です。
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今回の写真展はインドサーカスを追いかけていた時の写真。
インドサーカスはひとりの力で踏み込む事が非常に難しく、サーカス団のなかに入り込んでも、見つかるとボスに追い出される連続の日々。
今までにない。撮影ができないという不発の連続であったが、諦めずインド中を彷徨いつづけた。
最終目的とは違う写真のあがりとなったが、 無意識に撮影した写真こそ本質に迫れる「自分にしかない、視点」をみつける事ができた。
この時代、お金やコーディネーターがいれば、スムーズにいつでも誰でも目的地に辿り着ける。しかし最終目的地にたどり着くまでの過程にこそ、作家性がにじみ出るのだと確信した撮影だった。
⻄村さんのラボに通い初めて15年くらい?はたったか、 自分の初期作から最新作まで現像してもらい、プリントをしてもらってきた。
ラボという人達の作業を見ていると、一日に何万枚もの写真をみて作業をしているし、作家の誰も知らない写真を良くみて、誰よりも様々な写真家のアザーカットまでよく知っている。 そんなラボは写真家たちにとって最後の砦である。
そんな⻄村さんに15年間助けられてきました。
デザイナーや、編集者の目線にはない、ラボの人が毎日休む暇なく1枚1枚写真と対峙してきた目線での今回のセレクトは、写真の新たな視点に引き込んでくれるに違いない。
そして写真への情熱を感じるばかりだ。
写真家 名越啓介
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一部の作品はすでに発表されているわけですが、本展では初めて公開される作品が多数あり、全てエディションは1点とのこと。
なにを重要視するのか、何を伝えたいのか。見る人、選び人によって、写真展は大きく変わります。
写真のプロであるラボが、その目で選びとることで新たな風を吹き込んだインドサーカスのシリーズ。
最後に「Prism Lab.KICHIJOJI」の代表、⻄村康さんの言葉をご紹介したいと思います。
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名越さんとは2009年頃、ある写真家の紹介で出会いました。作業上、名越さんの作品はその頃から、それ以前のものもフィルム現像やデータ作成する工程の中で殆どを見せて頂いておりました。
個人的な感想ですが、インドで撮影されていたサーカスの写真は名越さんの写真作品の中でも、独特な美しさを持っていると思っています。
一部の作品はすでに発表されていましたが、改めて写真展という形でこの写真をみてみたい、これが動機でした。
名越さんはマイノリティーと呼ばれる人や時に辺境とよばれる場所に出向き、時間や回数を重ね、対象となる人や場所をフラットに、出来るだけありのままを写真に定着されています。
2012年、以前から興味をもったサーカスを撮影すべく南インドへ。数々の難しい局面を打開し作品にしてきた名越さんですが、この撮影は困難を極めたそうです。
気持ちを変えるために訪れた海。浜辺に広がった景色は止まっていたフィルムのカウンターを動かしました。
評価や価値、立場が目まぐるしく変わってしまう今だからこそ、名越さんが映し出す写真は何かを与えてくれる気がしてなりません。この写真展では名越さんの作品を、視線の記録として定着させる試みをさせて頂きました。 ご高覧頂けましたら幸いです。
株式会社 Sun-Prism 代表 ⻄村康
名越啓介写真展「THAMP」
会期:2022年11月30日(水)〜12月25日(日)
会場:Prism Lab.KICHIJOJI
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-28-3 ジャルダン吉祥寺113
電話:050-1113-4416
営業:12:00〜19:00 月、火曜日定休
公式ホームページ