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60組を超えるアーティストの「音」が、渋谷のストーリーを紡ぐ。「渋谷PARCO」3周年イベントレポート。

オープン3周年を迎えた「渋谷PARCO」が、11月18日(金)から12月4日(日)にわたり「SHIBUYA PARCO 3rd ANNIVERSARY」としてスペシャルイベントを開催しました。

リニューアルオープン時に「大人の文化祭」というべき空間を目の当たりにした衝撃を改めて思い起こす、連日連夜の音楽イベント。初日は「GEZAN」のフロントマン、マヒトゥ・ザ・ピーポーとアーティスト中山晃子によるキービジュアルとのコラボレーションで幕開け。約2週間のあいだ、各フロアでのDJイベントとアーティストによる思い思いのライブが、高揚感に溢れる渋谷という街のカルチャーを表現し、「渋谷PARCO」のストーリーを紡ぎました。

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十三月 × UNDERCOVER midnight meeting
深夜、音楽の”衝動と癒やし”に没頭。

渋谷PARCO、10F・ComMunE、23時。90年代渋谷・原宿カルチャーを象徴しながら今なお愛される「UNDERCOVER」のデザイナーにしてレジェンド、JUN TAKAHASHI氏によるDJプレイがスタートします。

「GEZAN」が主宰する音楽レーベル 「十三月」と「UNDERCOVER」がコラボレーションした “midnight meeting”の幕開けに、会場はどこか控え目なざわつきを帯び、密やかにゆっくりと熱を溜めます。本企画のDJには、東京のアンダーグラウンドなクラブカルチャーに基盤を置き「UNDERCOVER RECORDS」からサイバーインダストリアルな音源をリリースするDJ・プロデューサーのMars89、「the hatch」の首謀者である山田みどりと老舗セレクトショップ「CANNABIS」のHIMAWARIのタッグのB2B、イラストレーター・グラフィックデザイナー、そしてファッションブランド〈C.E〉のデザイナーであるSKATETHINGがラインナップ。

10分ほどのタイムスケジュールの押しに会場の期待が波打つなか、突如として堰を切ったのが「Speed Bycile Pipes」。「GEZAN」のドラマーである石原ロスカルが、自転車をドラムのように叩き、あらゆるパーツを打ち鳴らします。時にはギアを重くして車輪を回し、時にはスタジオのセットのパイプを叩き、すべてを楽器と変化させる超絶技巧に、音楽へのプリミティブな渇望そのものを覚えます。さらに客席後方から地に響くようなメロディが微かに聴こえ、徐々にステージに近付く音が重なり、「GEZAN」のギターであるイーグル・タカが民族楽器・バグパイプを吹きながら登場。

ステージ上に揃った2人が鳴らし合う衝動的な音と、内なる叫びのような発声、舞うような身体を前に、会場は音楽の根源的な祝福に包まれます。

本企画を締めくくったのは、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)と下津光史(踊ってばかりの国)による「しもぴぽ」。だれもに戸惑いがあったこの3年のあいだ、全感覚祭の開催や、限られた条件下での精力的なライブ、自由讃歌なるアルバムリリース…とリスナーに力を与えつづけた2人のライブを目当てに、深夜3時のComMunEにはひとが押し寄せました。

真っ赤に染まった空間のなかで1曲目に「待夢」、2曲目に「ジョン・ケイル」、そして「ピカリのヒビ」と交互にコーラスを入れます。染み渡る優しい歌声と、奥行きのある歌声の重なりが特別な浮遊感を生み出すも、ライブ中盤からはまさに浮遊するようにマヒトゥ・ザ・ピーポーが踊り出します。「ボーカルがもう1人いると踊ってられるんだね」「そうだね(笑)」と言葉を交わしながらライブはつづき、ラストには急いでつくったという、しかし最高のクリスマスソングを贈ってくれました。まだ帰りたくないというマヒトゥ・ザ・ピーポーを下津光史がなだめながらも終焉。音でも心を通わせる友達の佇まいに、じんわりと暖かい気持ちで会場を後にしました。

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FINAL PARTY GungPang 祭 & Special Live
ポジティブな躍進力を受け取ったファイナル パーティ。

最終日には、愛情のあふれるアーティスト・グッズを企画・制作する “GungPang” (ぐんぱん)の友人であり今やチームでもあるという2組”STUTS” と “ミツメ” のライブが開催されました。ライブを目当てに訪れるひとの年齢層は幅広く、母親に抱き上げられながら、ともにリズムに乗る子どもの姿も。STUTSの熱いプレイ、ミツメの感情を揺さぶるサウンド、さらに “GungPang” を交えた仲睦まじいMCを一夜で体験し、音楽とカルチャーが次の物語に紡がれていくことを予感させる、ポジティブなパワーを受け取る夜になりました。

STUTSのプレイとともに会場が縦に揺れます。目を奪われる華麗な指さばきと、身を委ねてしまうビートを堪能。STUTSは今年のパルコ館内の音楽も担当しています。「Presence feat. KID FRESINO」「夜を使いはたして」「Seasons Pass」などの人気楽曲を白熱のプレイで畳みかけながら、MCでは「1人でのライブパフォーマンスは久々ですっごく緊張していまして」と笑顔。熱いパフォーマンスと朗らかな語りとのギャップに、会場はハッピーなムードです。

最後の曲となった「One feat.tofubeats」の歌詞の一節、”正しさも分からないbasic”は、同時期にミツメと制作した「Basic feat. STUTS」のことを考えながら書いた言葉でもあるそう。次のミツメへのライブへの期待も一層高まります。

SHIBUYA PARCO 3rd ANNIVERSARYの大トリを飾るミツメを、満杯のComMunEが迎え入れました。「トニックラブ」「真夜中」「チョコレート」「VIDEO」…と会場は緩やかに揺れながら聴き入ります。

MCではギター・ボーカルの川辺素が「お祝いの時に暗い曲がつづいてしまいましたね」と言うものの、ミツメのエモーションナルな音に会場は没入。時に、感傷的な歌詞に対する長調のメロディーの運び、複雑ながら心地のいいビート、空間系エフェクトの気持ちいいディレイとミツメらしさを楽曲ごとに楽しみ、11月にリリースした「メビウス」も演奏されます。

最後には “GungPang” もともにステージに上がりご挨拶。物販での小銭のやりとりからはじまり苦楽をともにしながら、いま、多くのミュージシャンに愛されているストーリーに心がじんわりと温まります。アンコールでの演奏は躍動感の増した「Basic feat. STUTS」「なめらかな日々 feat. STUTS」。

「SHIBUYA PARCO 3rd ANNIVERSARY」は、新しい世代の音楽と、真摯な友だちから生まれるひとつ、ひとつの形を振り返るようにして幕を閉じました。

Photo_Ryosuke Hoshina
Text_Takako Nagai
Edit_Yuri Sudo

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