デザインチームを公表しないアノニマスなブランドでありながら、着実にその存在感を高めている〈シティー カントリー シティー(City Country City)〉。そんなブランドの実態を探るべく、設立当初から親交の深いクリエイターたちへのインタビューを行う連載企画。謎のブランドの気になる中身を、あらゆる角度から迫っていきます。
記念すべき10回目は、「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ(BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS)」のメンズブランドディレクター・藤橋享平さんが登場。毎シーズンの取り扱いに加え、別注企画も行なうなど、強い繋がりを持つ彼の目に、〈シティー カントリー シティー〉はどのように映っているのか。大手セレクトショップのディレクターとして抱く、ブランドのイメージ像について語ってもらいます。
音をしっかりとファッションを通じて表現している。
ー藤橋さんがはじめて〈シティー カントリー シティー(以下、CCC)〉をご覧になられたのはいつ頃のことですか?
藤橋:ブランドのインスタグラムが立ち上がった頃から知っていました。デザインチームとは当時から交流があって、ファッションはもちろんですけど、音楽をはじめとしたカルチャーに精通したひとたちというのは知っていたんです。実際にモノを見させてもらうと、そうした自分たちの好きなものがしっかりと落とし込まれていた。人物とアイテムがリンクしていたというか、すごく説得力を感じましたね。
ーその後、「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」でもお取り扱いを決められるわけですが、迷わず決めたという感じですか?
藤橋:そうですね。その説得力みたいなものを強く感じていたし、ブランドネームもすごくいいじゃないですか。それで自然と買いつけるようになりました。スムーズに、迷いもなく。
ー〈CCC〉が抱いているポップさ、キャッチーさみたいなものと、「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」の相性はよさそうです。
藤橋:いいと思いますね。なのでインラインのアイテムもバイイングする一方で、毎シーズン別注のお取り組みもさせてもらっています。
ー別注とはいえ、イチからデザインを起こして、しっかりとコラボレーションされていますよね。
藤橋:とあるアーティストを軸に、オマージュする形でグラフィックに落とし込んでもらっています。そのアーティストは「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」のイメージにも合うし、〈CCC〉の方々もフェイバレットに挙げているんです。
ーそうした音的なアプローチは〈CCC〉ならではです。
藤橋:そう思いますね。ただ、音だけじゃなくてそれをしっかりとファッションを通じて表現しているところが〈CCC〉の魅力だと思います。彼らは音楽畑のひとたちではなくて、あくまでファッションに軸足を置いている。だからこそ、着たときにしっかりと高揚感が生まれるアイテムになっている。そこが他のブランドにはない部分なんじゃないかと思いますね。
ー手に取りやすさ、みたいなものがあると。
藤橋:そうですね。音楽のアイテムって、ファンの方が知っていて着る場合と、なにも知らずにただかっこいいから着ているケースがあるじゃないですか。〈CCC〉のクリエイションには、前提としてしっかりとファッションがあるから、かっこいいとか、かわいいっていう理由で手に取りやすい。ストリートを熟知したひとたちがつくっているからこそ、それが成立するんだと思います。
コンセプトを大事に守りつつ、それを進化させて欲しい。
ー実際にお客さんの反応はいかがですか?
藤橋:おかげさまで、いつも反応がいいんです。いつも完売しますね。
ーその要因はなんだと思いますか?
藤橋:お客さまが売り場に入ったときに、ストレートな見え方で〈CCC〉のアイテムが目に付く。しかもそれが高揚するアイテムであるというところに理由があるんだと思います。さらにいえばそれが別注だったりしたら、買いたくなる理由にもなるじゃないですか。キャッチーで他にはないグラフィックだし、ブランドの背景も気になるものがありますよね。知らなかったお客さまも、それで気になって調べて、ファンになる。
ーデザインチームを公表しない、ミステリアスな部分も功を奏しているわけですね。
藤橋:公表したらしたでビジネスに繋がるチャンスもあると思うんです。だけど、いろんな思いがあってそれをしなかった。結果的にそれがよかったのかもしれないですけど、デザインチームが前に出ていたらどうなっていたんだろう? って思う部分もありますね(笑)。
ー買い付けをおこなう中で、さまざまなブランドのアイテムを見ると思うんですが、モノに限らず、デザインしている“ヒト”を見てバイイングすることもあるんですか?
藤橋:すごく大事なことですね。“ヒト”と“モノ”って同じくらいのテンションでぼくは見ています。「このひとだから、こうゆうコレクションになっているのか」って納得できたほうがやっぱりいいですよね。どっちかが浮いていたりとか、整合性がないと、結局長く続かなかったり、広がりが生まれなかったりして、将来性が見えづらいんです。
ーそういう意味で〈CCC〉は整合性が取れていると冒頭で語っていましたが、“ヒト”が前にでていないから、“モノ”で勝負するしかなくなりますよね。
藤橋:誰がやっているか分からないけどついつい買っちゃう服って、それだけ強さがあるということだし、息が長いんですよ。人物が表に出てインフルエンサーとしても引きがあるっていうのは、いまの時代に求められることなのかもしれないけれど、そのひとのフィルターを通してアイテムを眺めることになるから、価値が変動しやすい。〈CCC〉に関しては、そうした影響を受けづらいですよね。そのぶん瞬発的な発信力みたいなものは弱まるかもしれないけど、ブランドを真正面から見てもらえるメリットがある。それってすごくポジティブなことだなって思います。
ー今後、〈CCC〉に期待することはありますか?
藤橋:当初からあるコンセプトを大事に守りつつ、それを進化させていって欲しいと思います。ずっと東京のど真ん中でやってきているひとたちなので、その文脈の中で求められることにしっかり応えながら、ぼくたちをよろこばせてくれたらうれしいですね。自分たちが信じることを曲げずに貫いて欲しいです。
藤橋享平
2002年に入社し、販売スタッフを経て、2010年より商品部に異動。2018年よりビューティー&ユース ユナイテッドアローズのメンズブランドディレクターに就任。
Photo_Kazunobu Yamada
Text_Yuichiro Tsuji
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