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尾崎雄飛デザイナー/ディレクター/バイヤーなど多角的にニホンの良い物/事/文化を世界へ/未来へ繋げていくことを目指して活動中

我が輩はニホン人である。

尾崎雄飛
デザイナー/ディレクター/バイヤーなど
多角的にニホンの良い物/事/文化を世界へ/未来へ繋げていくことを目指して活動中

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『FilMelange フィルメランジェ』

2011.07.20

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我が輩はニホン人である。

 親愛なるフイナム編集部の方から機会をいただき実現したこのブログでは、ニホン人である僕の正しくつましい生活のか細い巻物を書き綴っていくときに欠かす事のできない、素晴らしいコトガラたちを紹介、推薦、評論していくことを趣旨としようと思う。
断っておくけれど、僕はこの場で所謂「営業ブログ」をしたいわけではないので、偏狭で一方的な評論があるかもしれないが、そこは温かいご理解をいただきたい。
それと、7月1日現在時点で僕はフィルメランジェを運営する会社から独立していて、フリーランスとしてブランド・フィルメランジェのディレクションとデザインをしていることを補足しておく。
独立をした理由は、フィルメランジェを含めて多角的に「ニホンのよい物やよい文化を発展させる」ということを目指して、更に様々な動きに参加していきたいという考えからだ。

 さて、そんな僕の初めての個人ブログにおける記念すべき第一回に紹介したいのは、、、

『FilMelange フィルメランジェ』


ozaki-fil.jpg

<いちばん最初のTシャツたちと営業資料。なつかしい。>

営業じゃねえか!という声が聞こえてきそうだが、かなり迷った末の選択であるので、ご容赦を。この第一回では敢えて少し変わった視点からフィルメランジェを考察し、このブログ趣旨の分かり易い例としたい。

 フィルメランジェというのは日本のファッションブランドであり、この妙なフランス読みの名前は「フィル=糸」と「メランジェ=混色の」を結合させた言葉で、混ざった色の糸(即ち杢グレー)という意味だ。
無垢を愛し、無機を善しとし、ぴったりと皺を伸ばしたベッドシーツについた一寸の小ジミさえも許されないような日本のキチッとした洋服づくりの常識にアンチテーゼとして、ゆるく「混ざった」物作りをしてみている。

 僕の洋服屋人生のうちの半分は、実はセレクトショップのバイイングをしていて、僕は元々は作り手ではなく、買う側の人間であった。
何シーズンも国内外の作り手の方々の作品を見ていると、いろんな性格の人がいろんな考えで作品を作っているということが見えてくる。千差万別十人十色、それぞれに込める思いも色々だ。
そして、買い手にも趣味趣向や物に対する思いがもちろんある。言ってしまえばファッションは、すべて主観の擦り合わせなのだ。そんな中で、バイヤーとしての僕は自分の趣向が海外製品のある部分について非常に魅力を感じ、その部分を日本の自分のお客様に提案したいと考える様になった。
それは、ある種の「いいかげんさ」である。
どういうわけか、一部の海外製品には日本語で巧いこと言った「いいかげんさが、良い加減」という言葉を当てはめるにもちょっと申し訳ないぐらいにいいかげんな製品が存在する。
例えばあるニットメーカーに、白いコットン・ニットに緑色でテニスラケットの絵をインターシャで編み込んでくれとオーダーしたとする。
ところが後日、届いたサンプルには青緑色で犬の絵が編み込まれていたりするのだ。
しかし、その犬は当初オーダーしたテニスラケットよりも生き生きとして、その青緑色は日本人のカラーリングセンスからはおよそ抽出し得ない大変に魅力的な青緑色であったりした。そのたび僕の心は小躍りをし、しばしばその間違った作品を喜んでオーダーしたものだった。

 長い前フリになったが、どうやら僕の目には、予測不可能な偶然の産物が魅力的に映り、予定通りキッチリ間違いなく箱に収められてくるような物よりもずいぶんと輝いて見えるようだ。
そして自分以外の人の感覚のエッセンスがほんの少し加わって、想定外のキレイな色が生まれたりするのは更にいい。

 その点でこの『フィルメランジェ』は僕のバイヤーとしての視点から見て、すばらしく魅力的だ。物作りへのいいかげんさが見て取れる。
箱に入ったTシャツは店頭で何なのか分からないし、色展開もこんなの着れるか?というような変わった色が多いし、どのボディ色に対しても同じ色の歯抜けみたいなファスナーがついているし、そもそも洗い後のサイズに個体差があるとはいいかげんだ。また、気づかれない事が多いが、サンプルを見てオーダーしても、量産時によかれと思ってか勝手な仕様変更がなされていることもある。さぞかしいいかげんなデザイナーなのだろう。
しかしながら、フィルメランジェの魅力の核となる部分はディレクターが誰、デザイナーがどう、ということとはおよそ関係無く、原料を育んだ大地、摘み取った人、選んで運んだ人、加工した人、古い機械を維持している人、ミシンを踏める人、その人たちにある。
それらの所謂川上の方々がこれ以上無くすばらしい品質を保証してくれているのだから、少しばかりいいかげんなデザイナーでも問題無いだろう。
そして、この「品質」という核があるかどうかということも、僕の選択眼においては大変に重要なファクターとなる。

僕の考えるニホン人的「いい物、事」とは、しっかりとした品質に裏打ちされた自由な発想の物、いい塩梅の物、である。そして、そういう物事とは長くつきあっていくときにとても心地がいいのだ。それをぜひ読者の方々にも知っていただきたい。

しっかりとした自由な発想がいい塩梅のフイナム編集部様に機会をいただいたこのブログでは、上述のように定義される素晴らしいコトガラを、国内外、物、事、人に限らず紹介、推薦、評論していきたいと思う。

長くおつきあいいただけると幸いです。よろしくおねがいします。

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