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古着サミット8 好事家たちの古着放談。
Houyhnhnm Vintage Summit.

古着サミット8 好事家たちの古着放談。

業界屈指のヴィンテージアディクトたちによる恒例の古着放談『古着サミット』もいよいよ第8弾。令和初にして2010年代最後を締めくくる今回も、今野智弘、栗原道彦、藤原裕、阿部孝史のレギュラーメンバー4名をお迎えし、いままさに彼らが惹かれるアイテムはもちろん、国内外での気になるプレミアバリューまで、現在進行系の古着の世界を、いつも以上にマニアックワード全開でお届けしちゃいます。

  • Photo_Toyoaki Masuda
  • Text_Takehiro Hakusui
  • Edit_Yosuke Ishii

第二講 栗原道彦

「ニルヴァーナ人気と90年代ブームで、年々、価格高騰傾向にある
ヴィンテージパジャマ。」

‘50s SLEEPING SHIRT

栗原:ぼくのひとつめはヴィンテージのパジャマシャツです。前から気にしていたカテゴリーではあるのですが、自分でも着たいと思う柄がようやく手に入って。

今野:確かに。一見するとパジャマっぽくないよね。

栗原:スリフトで旧めのシャツが出てきたと思って、よく見たらパジャマだったみたいな経験って、バイヤーあるあるだとは思うのですが(笑)

藤原:あるね(笑)

栗原:カート・コバーンのオフショットで有名な〈ニック&ノラ〉(ハリウッド映画や『Sex And The City』 などのテレビシリーズにも採用される高級スリープウェアブランド)のもの、特にカートが着ていたグリーンベースのカウボーイ柄フランネルセットアップ、しかも小さめのサイズとなると、最近は4~5万くらいで取引されていることもあって。

阿部:えっ、そんなにするの?

栗原:はい。でも、じつはあの生地自体は汎用品で他のブランドからも何社かリリースされているみたいです。〈ニック&ノラ〉もこの柄は’80年代から’00年代頃まで継続的に展開していたようですが、いま現在はディスコンになっていて。

阿部:ここ数年のニルヴァーナ人気、ホントにすごいよね。

栗原:特にアメリカは。ニルヴァーナ関係のものになると高くて手が出せないレベルになってて。

今野:’90年代ブームってのもあるんでしょうけど、年々加熱してますよね。

阿部:〈ニック&ノラ〉のは持ってないの?

栗原:まあ、ぼく自身はニルヴァーナファンではないので、あれを着る資格もないですし(笑)。かといって小紋みたいな定番な柄じゃないひねりのあるパジャマを探していて。今回持ってきたものは、フランネル素材なんですが、ポケットも下めについているし、’50sっぽい配色、柄でもあるので、シャツジャケット感覚で着られるんじゃないかと。

藤原:あと、ここ(前開きから見える部分のみ共布を縫い付けた内部の仕様)も旧いパジャマの特徴ですよね?

阿部:へえ、そうなんだ?

藤原:はい。

今野:特に深い意味はなく、おそらく販売する際の見栄え的な意匠だと思うのですが、特にこれくらいの年代に多い仕様ではありますよね。

阿部:なるほどね。

栗原:もう一枚はタグに〈カーメイト〉とあるので、おそらくホッドロッド系をイメージしてこの配色で作られたものだと思います。パジャマなのに不良っぽいっていう意外性が良くて。

今野:襟の形状からも、おそらく’50年代だろうね。

藤原:一時期ぼくも着ていたんですが、この大きなボタンのままだとパジャマと悟られてしまうので、わざわざ小さなボタンに付け替えていたんですが、ボタンホールを縫い忘れて、前開きがパカパカ開いてしまって(笑)

一同:(笑)

栗原:実際に自分が売る側でも、そんなに値をつけられるカテゴリーでもないですし、買う側でも決して値の張るものではないんですが、ちょうど良いものがなかなか出てこないカテゴリーではありますよね。


「モノによってはヴィンテージとして評価されつつある
’00年代のパタゴニアに注目。」

‘00s patagonia ESCAPE JACKET

栗原:2つめは〈パタゴニア〉から2000年にリリースされた「エスケープジャケット」です。当時のカタログにも掲載されているインラインモデルですが、’00年代の〈パタゴニア〉だと「MARS」(『古着サミット4』参照)以外、当時リアルタイムではほとんどチェックしてなくて。このモデルに限らず’00年代以降のものでも「エッセンシェルプルオーバー」とか、「リズムフーディ」みたいに、もはやヴィンテージとして扱われるものも少なからず出てきて。それに最近は新品に合わせるアウターはこれくらい野暮ったい感じもイイかなと。

阿部:当時は全然注目されていなかったよね。

今野:でも、いま見ると良い意味で〈パタゴニア〉っぽいですよね。

藤原:配色もあるんでしょうけど、どことなくミリタリーな趣きもあって。

栗原:確かにいま着ていたら「軍のヤツ?」とか訊かれそうな感じはするね。

阿部:このモデルはアメリカ製?

栗原:いや、コロンビアですね。パイルとかレギュレーターとかフリース系は’00年代に入ってからもアメリカ製のものがまだ残っていましたが、シェル系は’90年代でも既にアジア、中南米製のものがほとんどだったはずです。

阿部:それにしても、最近の〈パタゴニア〉人気すごいよね。特に「シンチラスナップT」とか。

栗原:「リバーショーツ」や「スプーンビルキャップ」辺りもめちゃくちゃ値上がりしていますよね。

藤原:ぼくの体感的にも若い世代だけじゃなく、幅広く人気が再燃していると思います。

今野:2、3年前に「レトロパイルカーディガン」や「クラシックレトロカーディガン」みたいに毛足の長いパイルフリースが流行って、その名残というか、発展形として〈パタゴニア〉への再評価が始まったように思うんだけど。

栗原:それはあるでしょうね。最近は日本やアジアだけでなく、アメリカの若い世代も「クラシックレトロカーディガン」辺りに、それこそニルヴァーナとかオルタナ系のバンドTシャツを合わせたストリートミックスみたいなコをちょくちょく見かけるようになりましたし。

今野:もう’00年代辺りでも約20年前だし、彼ら世代にとってはヴィンテージなんだろうね。

栗原:まあ、日本と違ってアメリカでは現行で手に入らないものは全てヴィンテージと表示していますけど、ぼくら世代がヴィンテージだと思う年代のものを表すスラングとして「True Vintage」って表記しているのを最近は見かるようになりましたね。2000年前後のものを「Y2K」と表記したり。

阿部:そうなんだね。

藤原:ものにもよりますけど、個人的には’70年代でもまだレギュラー古着の部類に入るんだけどな。

栗原:でも、さすがに赤耳はもうヴィンテージの部類でしょ?

藤原:うーん、やっぱり個人的にはまだそう思いたくはないかな。

栗原:硬派だねー(笑)


「一風変わったディテールが満載のエプロン付きオーバーオールが
気になる。」

OSH KOSH & CARHARTT OVERALL WITH APRON

栗原:3つめはエプロン付きのオーバーオール。最近痩せてから(笑)気になるようになって。

藤原:まあ、太ってるとバディ・リーみたいになっちゃうからね。

栗原:そうそう。今日は持って来なかったんですが、エプロン付きだけどエプロン部分が切られてるモデルを手に入れたのがきっかけで。パッと見は変形ポケットなのかと思ったんですが、よく見たらエプロンを切っただけだったと。

阿部:エプロン付きのモデルは全部前ポケットが変形なの?

栗原:ダブルニー仕様はほとんどのメーカーが採用してるようですが、前ポケットの形状はメーカーによって異なりますね。

今野:ハンマーループも両サイドついてるんだね。

栗原:そうなんですよ。エプロン以外のディテールも面白いものが多いので、私物では新旧はあまり問わず、基本的にエプロン付きを探しています。

阿部:こっちの白いのはどこの?

栗原:〈カーハート〉ですね。まあ、万人受けするカテゴリーではないですが、最近また探しているという声を少なからず訊きますね。

阿部:レディースでは局所的に流行ってる感じはあるけどね。

今野:ぼくもインナー使いじゃなく、オーバーオール単体で着る勇気はまだないかな。

藤原:そうですね。若干ハードル高いかも。

阿部:以前と比べて幾分かは値上がりしている?

栗原:ジーンズ同様、程度の良い個体は年々減少しているのでじわじわと上がっている印象です。エプロンの有無でもある程度値付けは変えています。

藤原:この〈オシュコシュ〉の2トーンポケットは、ディテールとしてもユニークですよね。

栗原:〈オシュコシュ〉って現在は子供服のブランドになってしまってることもあってかワークブランドの中でも評価が低い方だと思うんだけど、個人的には結構好きなブランドで。昔からディテールが大きく変遷しないんで面白みに欠けるのかもしれませんが、それはそれでイイのかなと。エンジニアジャケットなんかも好きですし。

阿部:そうね。’70年代辺りのそれほど旧くないカバーオールとかでもポケットの形状とかヴィンテージらしくてぼくも好きかな。良くも悪くも変わってないからね。

栗原:またオーバーオールを意識的に探してみると大抵はW42アップの大きいサイズか、逆にレディースぐらい小さいサイズばかりで、W36~38ぐらいの黄金サイズが意外とないもんなんですよね。

阿部:そうなんだ。


「ウエスタン調の野暮ったいものが、いままた新鮮なんです。」

‘70S-’90S Levi’s RARE MODEL

栗原:最後は王道の〈リーバイス〉の中でも、いわゆるヴィンテージとして括られていない’70~’90年代辺りの変わり種を数点持ってきました。このピケのジャケットは「ユーロリーバイス」のチュニジア製’98年もの、デニムのジャケットはアメリカ製’70s、カラーパンツも同じくアメリカ製の’80sデッドストックです。

阿部:「ユーロリーバイス」もアメリカ仕入れなの?

栗原:そうですね。ぼくの場合はアメリカ仕入れなのでヨーロッパのものってあまり触れる機会がないんですが、たまに中東を経由したものがアメリカに入ってくることがあって、それでもアメリカで見つかる「ユーロリーバイス」はジーンズがほとんどで。今回たまたまジャケットをまとめて買える機会があったので仕入れてみました。ブルーデニムに関しては個人的にはユーロ特有の色味はあまり好きではないんですが、こういった異素材やカラーものは逆にいまっぽくていいなと。

今野:ぼくもあの色味は苦手。

藤原:このピケの感じは全然イイですけどね。

今野:ヨーロッパのピケは表情が上品だよね。

栗原:これ着てると古着好きから「何ですか?」ってよく尋ねられますね。「ユーロリーバイス」でも他のジャケットだとやっぱり’90年代らしいダボっとした感じでそれはそれで良いんですが、このモデルに限っては意識的に’60sぽく仕上げてるんだと思うんですよ。

藤原:まあ、タグとかも完全に当時の「ホワイトリーバイス」を意識してますもんね。

栗原:このデニムジャケットもあまりないでしょ?

藤原:確かに。そうそう見ないね。

栗原:これもさっき話したように、ちょっと野暮ったい感じが気に入っていて。ウエスタンな趣きとか。

阿部:ウエスタンも薄っすら流行りだしてるよね。

今野:そうですね。最近ベルボトムとかブーツカットとかフレアパンツもちらほら見かけるようになりましたし。

阿部:ウチ(ビームス)でもブーツカットならぬ「シューカット」が、好調ですよ。

藤原:レディースやってる友人からも「ブーツカット売れ始めてるよ」って話は耳にしますが、ぼく自身まだ実感はないかな。

今野:ウエスタンブーツも見かけるようになりましたね。〈トニーラマ〉みたいな尖った感じじゃなく、ローパータイプの丸トゥがメインみたいですけど。

栗原:最後のパンツの品番は「40502」、ボタンフライなので、ようは「501」のカラーツイルタイプ。’82年のアメリカ製です。この頃の変わり種〈リーバイス〉って、例えば「ムービンオン」(’70~’80年代に展開され、ヒップポケットに独自のステッチワークを備えた化繊混フレアパンツ)や「アクションスラックス」(同じく’70~’80年代に展開されたポリエステル製スラックス)みたいに、ぼくら世代だと素材的になかなか穿きづらいものが多い中、これは普通に穿けるかなと。

藤原:これはブラックもあるよね、たぶん?

栗原:ありそうだよね。「505」のブラックなんかもここ数年でジワジワ値上がりしてるし、この辺はまだ安い分、さっきのパジャマ同様探す楽しみもあるし面白いんじゃないかと。まあ、そうそう出てくるものでもないんだけど。

藤原:「505」のブラックと違い、フロントボタンがシルバーっていうのも面白い。

今野:ブラックデニムも関東だと緯糸も黒、逆に関西だと緯糸は白の方が人気も高い、みたいな話もありますよね。

阿部:そうなの?

今野:はい。最終的にはどちらが覇権を握るのか、ぼくは傍から見てる感じなんですが。個人的には「白」派です。

阿部:へえ。地域によってまた全然違うんだね。

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