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ファーストダウンが繋ぐ時代と人。Vol.1 Ovall
Back to the 80’s.

ファーストダウンが繋ぐ時代と人。
Vol.1 Ovall

1983年にニューヨークで誕生した〈ファーストダウン〉。80年代のアメリカにおいて、音楽やストリートカルチャーの隆盛を支え、マイケル・ジャクソンやノトーリアス B.I.G.といったアイコンたちの胸には〈ファーストダウン〉の山型ロゴが散見されました。いまでは80年代リバイバルとして、その時代のファッションと音楽は、若い世代から注目を集めています。では、80年代の魅力とはなんだったのか。さまざまな角度から、その時代を深掘りする4回連載。Vol.1では、ジャズ、ソウル、R&B、ヒップホップなど、ブラックミュージックを軸にグルーヴ感あふれるサウンドを鳴らすOvallの3人が、80’sミュージックについて語ります。

PROFILE

Ovall

Shingo Suzuki、mabanua 、関口シンゴによるトリオバンド。メンバー全員がソロアーティスト/ミュージシャン/プロデューサーとしても活動するマルチプレイヤー集団。個々が多忙を極めたことで2013年にバンド活動を休止。その後4年の歳月を経て、2017年に再始動。
ovall.net

80’sの音楽は、すごく楽しんで表現されている。

ー 〈ファーストダウン〉は1983年にアメリカで生まれたブランドですが、80年代のアメリカと聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?

mabanua: 村上春樹の小説は『1Q84』(1984)だっけ?

関口: うん、そうだね。

mabanua:Ovallではドラムを担当。個人ではプロデューサー、トラックメイカー、シンガーと活動は多岐にわたる。

mabanua: フライング・ロータスのデビューアルバムは確か『1983』だった気がする。何かにつけて80年代に生まれたものが多い印象があるんですよ。ぼくは1984年、セッキー(関口)は1982年生まれなんですけど、どこかノスタルジックなものを感じますね。当時の人たちはそう思っていなかっただろうけど、ヒップホップにしてもキラキラしている中にくすみや淡さみたいなものがあるというか。温かさと尖ったイメージが共存しているのが80年代かな。

Suzuki: 映像でいえば『E.T.』の世界観みたいに、ちょっとスポーティな服にキャップを被って、ウォッシュの掛かったデニムを履いているみたいな。当時と現代ではそれがいまっぽいんだけど、90年代ではなぜかダサく感じるんですよ。

Shingo Suzuki:Ovallのリーダー。プロデューサー兼ベーシスト。個人では矢野顕子、七尾旅人、PUNPEEなど、さまざまなアーティストの作品に参加している。

Suzuki: 色合い的にも、ピンクがかっこよかったのにエンジになったりして、90年代にかけてカラーがマットになっていく印象がありますね。音楽でいうと、たとえばプリンスの『Purple Rain』やシンディ・ローパーの「Time After Time」のドラムに見られるゲートリバーブが掛かったスネアの音色から、90年代には70年代をリバイバルした生臭いドラムに変わっていって。ディアンジェロの『BROWN SUGAR』とかは90年代半ばにリリースされたアルバムですし、ちょっとずつ渋い音になっていくイメージがありますね。

mabanua: 90年代は服の色が茶色、白、黒が多くなってくる気がする。音楽でもトライブ(ア・トライブ・コールド・クエスト)とかは明らかにそうで。90’sのヒップホップってそんな色合いなんですよ。落ち着いたトーンもまたかっこいいなという感じなんですよね。

関口: ぼくはマイケル・ジャクソンですかね。映像的に80年代はキラキラしたイメージがあります。80年代生まれの人は音楽的な80’sを後から掘り下げていって、「ああ、これが80’sなのか」と気付いていくじゃないですか。いま振り返ってみると、親が家で流していたサウンドってリバーブ感の懐かしさがあったり、ギターひとつをとってもキラキラしたアルペジオが絶対に入っているんですよ。一方で90年代は中学生くらいで音楽を意識し始めた頃なので、わりと自分の基本となっている好きな音色がありますね。

関口シンゴ:Ovallではギターを担当。そのほかレコーディングからミックスまでをこなす。あいみょん、米津玄師、藤原さくらなどの作品にも参加。

関口: 80’sから落ち着いて全体が洗練されているんだけど、生っぽい感じに緩んでいくイメージというか。先日エディ・ヴァン・ヘイレンが亡くなったとき、彼がギターソロを弾いているマイケルの『Beat It』を調べたら、1982年生まれの曲だということを知って。ぼくが生まれたときにはライトハンド奏法があったんだなあと思いました(笑)。

ー たしかに80年代の音楽にはキラキラした印象がありますね。

mabanua: サントラの制作やプロデュースの仕事をしていると、「かっこよさもあって、キラキラした感じも欲しい」と求められたりするんですよ。そんなときに80’sのバイブスがすごく参考になるんですよね。

ー というと?

mabanua: キラキラしているだけだといまっぽいEDMになってしまうけど、あのアゲアゲな感じがかっこいいかというと違う。それをR&B、ソウル寄りにすると、「かっこいいんだけどキラキラはしてない」という反応があるんですよ。その間でバランスをとろうとすると、だいたい80’sのアーティストの曲が出てくるんです。それがマイケルやシンディ・ローパーだったりして。たとえば、アーの「Take On Me」なんかはイントロがダサかっこいい感じだけど、意外とサビの最後がジーンとくるメロディの流れになっていて、そういうバランスがいいんですよね。80’sって当時のミュージックビデオを観ても、音楽をすごく楽しんで表現している感じが伝わってくるんですよ。CDが売れなくなってきた、サブスクをどうやって伸ばしていこう、みたいなことを考えてなさそうじゃないですか(笑)。

関口: そうだね。曲が完成して、「これ、ヤバくね?」みたいな感じがある(笑)。

mabanua: 「イントロ、いつまでやってるの?」っていう曲もあるよね。サビを1回しかやらない曲とかも。アートとしてのフォーマットがすごく寛容だった感じがする。レコーディング環境もやり直しが効かなくてテープで録っているから、ミュージシャンの演奏が上手いよね。

Suzuki: うん、異常に上手い。いまじゃ絶対にありえないよね。

mabanua: フュージョン世代とか言うんですけど、60歳くらいの人たちはとにかく上手いんですよ。いまのウチらの世代で上手いと思う人の次元を超えていて。それこそ、ベースソロでお客さんを全員盛り上げられるくらいに。

Suzuki: 声のピッチも異常なくらいに安定してるもんね。いまならデジタルでどんどん直せるけど、昔はできなかったし。

関口: またライブがレコーディングクオリティなんだよね。いまの人たちが整えているものを、ライブで出せるというか。

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