「近年もののミリタリーなどを着る機会が多かったので、より対極的なアイテムに目が行きがち」

SAKS FITFH AVENUE CHINA JACKET、GIESSWEIN TYROLEAN KNIT、FOOTLOOSE MOCCASIN MAKERS MOCCASIN BOOTS
栗原: 3つめはフォークロアやエスニックなアイテムたち。〈ギースヴァイン〉(オーストリア皇室御用達の名門)のチロリアンニット、〈サックスフィフスアベニュー〉(アメリカの高級百貨店チェーン)のチャイナジャケット、〈フットルースモカシンメイカーズ〉(コロラド州のハンドメイドブーツブランド)のモカシンブーツの3点です。最近はこういった異国情緒のあるローテクアイテムを、近年もののミリタリーやアウトドアアパレルなどハイテクなものにミックスして使っています。
阿部: 今日もチャイナジャケット着ているけど、それはどこの?
栗原: これは〈シャンハイタン〉ですね。
阿部: へえ。アメリカで買ったの?
栗原: はい。メゾンブランドとかを扱う古着屋で見つけました。まあ、この辺りは特にヴィンテージという括りではないですが、最近のマイブーム的な意味合いとして。
今野: このニットはかなり素材が高級だと思うな。縮絨加工されているのかも。
栗原: 香港のブランドでチャイナ服をメインにつくっているブランドですね。昔から、全身古着、全身新品ではなく、何かしらミックスしているのですが、ここ数年は近年もののミリタリーなどを着る機会が多かったので、より対極的なアイテムに目が行きがちなのかもしれません。それとこの〈サックスフィフスアベニュー〉や〈ニーマンマーカス〉等の高級デパートものはアイテムを問わず最近気になっています。

阿部: まあ、アメリカを代表する高級店のひとつだし、もの自体も絶対にいいものだろうしね。それにあの〈サックスフィフスアベニュー〉がチャイナジャケットをつくってるって事実がもう面白い。
栗原: そうですね。基本的にコンサバな富裕層をターゲットにしていたからか、ヘタにやり過ぎない感じがちょうどよいというか。

藤原: このモカシンもいいですね。栗くんのスタイルに混ぜやすそう。
栗原: ソールが厚めのヴィブラムなのも履きやすそうで。〈ミネトンカ〉だとちょっとソールが薄かったり、〈JLクームス〉(ネイティブアメリカン発祥の古参ブランド)とかだと無骨過ぎるきらいもあるから。


今野: (ブーツに同梱されたカタログを見ながら)このトグルの数とかをセミオーダーする仕組みなんだろうね。アメリカっぽいな。
栗原: この辺りのキャラクター強めのアイテムをハイテクで抑えている感じですかね。全身そのテイストだとコスプレみたいになってしまうので。
阿部: そうとも言えるね。
「正直なところ最近のTシャツブームには辟易している感じもある」

‘90s AMERICAN GRAFFITI T-SHIRT
栗原: 4つめは前回の買い付けで見つけた星座モチーフT。〈アメリカングラフィティ〉というマイナーブランドのものですが、〈ヘインズ〉の50/50ボディを使用していて。1992年のコピーライトが入っているのでその頃に作られたものですね。
今野: これは珍しいね。全星座見つけたの?
栗原: 一応デッドストックで全種類出てきました。とはいってもモチーフがモチーフなだけに基本的には自分の星座しか着られないとは思いますが(笑)
阿部: 確かに全く関係ないモチーフ着てたらヘンなヤツだよね。
栗原: 星座ものといったら阿部さんの専売特許でもあるバンダナが有名ですが。
阿部: そうだね。

栗原: Tシャツはいままで中古でも過去に見たことないと思います。背面にはその星座の対象月日と特徴みたいなことが記されていて 。
藤原: 特徴って?
栗原: たとえば射手座だったら「Jovial=陽気な」とか。ようはその星座ならではの性格というか。
藤原: そういうことか。

栗原: フラッシャーを見た感じだとTシャツ以外にもスウェットやタンクトップも同プリントであったみたいですね。
今野: よく全種類見つけられたね。
栗原: じつはコロナウイルスの影響もあると思うんですよ。
阿部: どういうこと?

栗原: コロナの流行以降、閉店せざるを得ないショップや廃業する会社も増えていて。そういうところにストックされていた言わばかつての売れ残りが一気に市場に出回り始めたと。他にも個人事業主や一般の人が倉庫を借りて商品、私物を保管していたりもするのですが、家賃が払えなくなった場合、ストレージオークションといって倉庫ごと差し押さえられてオークションにかけられるんです。で、それらがフリマなどで売りに出されたり。最近1980~90年代頃のものが多く市場に出回り始めた背景には、このコロナ渦もかなり影響していると思うんですよ。
阿部: なるほどね。
栗原: 正直なところ最近のTシャツブームには辟易している感じもあって。売り物としてはもちろんありがたいですが、個人的にはもうそろそろいいかなと…。
今野: お腹いっぱいになりつつなところはあるよ、確かに…。
栗原: ブームが加熱し過ぎて、自分が普通に着たいと思うTシャツさえ着づらいというか…。
藤原: それはあるかもですね。
栗原: アメリカではここ数年の間に投資目的でTシャツを集めるディーラーも増えているみたいですし、去年50ドルだったものが今年600ドルになっていたりもするので。旧い服の楽しみ方って、価格だけではない気がするんですけどね…。