家庭で野菜を腐らせないための方法。
ー 各地の畑を旅してきて、この10年でフードロスというものや取り巻く環境について何か変化はありますか?
鈴木: 農家さん側も世代が変わってきているんですが、世代が近いと話が合うんですよね。考えていることも同じだったり。もちろん人にもよりますが、年配の方にこういった話を理解してもらうのは難しいなと実感してます。自分の親にだって理解してもらえないだろうし、ましてや…。でも、世の中を変えていきたいと思う人は多いし、実際に農家さんの意識も変わってきている実感はあります。
ー お店では、お客さんとそういう話をするんですか?
鈴木: まずは、来てくれたお客さんと、純粋にコミュニケーションを取ることですよね。何を買うより、誰から買うかの方が重要じゃないですか。だから、まずは僕らのことを知ってもらうことが大事だなと。ここでは、気持ちよく過ごしてもらいたいと思いますしね。なかには、話しかけられたくないお客さんもいらっしゃるんでしょうけど、せっかくなので、声はかけちゃいますね(笑)。コンビニの接客のように無言で対応するのもいやですし。あと「それ何味ですか?」とアイスを食べながら、お客さん同士で話してくれたりするのを見るとうれしいですね。この「ミコトヤ ハウス」という名前も、家のように気軽に立ち寄って欲しいからということで付けました。
ー 野菜売り場もそうですが、お店の方から産地や生産背景のストーリーをじかに聞けた方が、買う方も納得できますよね。
鈴木: 外食のフードロスも大きいけど、家庭のロスもいっぱいあるんです。例えば、腐らせて捨ててしまうとか。でも、その野菜のストーリーを聞くと大事に食べてくれるようになるんです。皮を使えると聞いて、最後まで使ってくれたりとか。うちで買ってくれた野菜は、おそらくほとんどロスされていないと思いますね。
ー 確かに。
鈴木: でも、そういったストーリーなどを説明するとはいえ、その前にまずはコミュニケーションをとってからですよね。フランクな関係じゃない人に「農家さんはね…」と懇々と語られてもダメですから。僕も、農家に行ってもビジネスの話はあまりせずに、奥さんとの馴れ初めとか、趣味の話とかを聞いてばっかりです。農家の方々の人柄を知りたいんですよね。逆に、僕らのことを知ってもらうことも大事で、色々な話をします。ついつい商売のことは二の次になってしまうので、ビジネス上で大事なことを聞き忘れた! と後で気づくこともあるんですけどね(笑)。