ストーリーがきちんとしているアイテムが好き。
「アーケストラ」を後にしたのち、再度クルマに乗り、次のお店を目指します。その道中、「カングー」に乗ってどんなことをしてみたいか、遠藤さんに聞いてみました。。




「『カングー』って車内スペースがとにかく広いし、快適なクルマですよね。それをもっと快適にするために、自分の部屋のように飾りたいです。車内インテリアにフックや、天井にはちょっとしたモノをしまえるポケットなどがあるじゃないですか。それを上手に活用して、移動する自分の部屋をつくるみたいな(笑)。それでロードトリップにでるのもおもしろいかもしれない。いろんなアイデアを実現できそうなクルマだと思いますね」

富ヶ谷からクルマを走らせてすぐ、「カングー」は目的地である世田谷代田にあるカフェ兼インテリアショップの「ハイムッシュ(Hi Monsieur)」に到着しました。
「このお店の店主である大石護さんはむかしからの知人で、もともとインテリアのリースショップで働かれていたんです。その頃からよくしてもらっていて、ぼくとおなじくインテリアスタイリストの仕事もされているんですけど、仕事の話というよりも世間話をしによくくるという感じです。ここに来るとホッとひと息つくというか、安心する場所なんですよ」



店主の大石さんがコーヒーを淹れているあいだ、遠藤さんは店内のアイテムを入念にチェック。ここでもリサーチ脳が働いています。
「アイテムを見るときは、デザイン、クオリティ、使い勝手などを総合的に見ますね。それで頭の中にどんどんインプットしていきます。ぼくはモダンなものから、ガーリーなスタイリングまで幅広くやっているので、先ほども話したように引き出しがとにかく大事なんですよ。だけど、仕事で使いたくなるのはやっぱり自分が好きなアイテムですね。そういうアイテムのほうが提案しがいがありますから」

遠藤さんの好みのアイテムとは、一体どんなアイテムなのか? それについて尋ねると、こんな回答が返ってきました。
「背景がきちんとしているモノですね。語れるというか、ストーリーがきちんとしているアイテムがぼくが好きです。『それなに?』って聞かれたときに、どこでどういう目的でつくられたのかを話したら、その人も気に入ってくれる可能性が上がると思うんですよ。ただカッコいいというよりも、ストーリーがあったほうが説得力があるし提案しやすい。そしてモノに対する愛着も増すんですよ」

コーヒーを飲みながらゆっくりとそう語ります。そうした好みは、遠藤さんの仕事のやりがいにも繋がっているのだとか。いまの話に加えてこんなことも教えてくれました。
「メディアでモノを紹介することがぼくの仕事の中核です。お店で借りてきたものを撮影して、掲載された写真を読者の方々が見てくれる。一度、ぼくがスタイリングを手掛けた雑誌を手にした読者の方がとあるお店を訪ねて、掲載商品を買っていってくれたそうなんです。それを聞いたときはうれしさで涙がでましたね。それって人の心を動かしたということじゃないですか。『BOOTS YORK』というぼくがつけている屋号も、人の物欲を刺激したくてつけたんです。仕事で達成感を感じるのは、まさにそのときで、読者の方がわざわざお店に足を運んでくれたときがいちばんうれしいですね」



ただカッコいいスタイリングをするだけではなく、きちんとその先のことを意識しながら仕事に取り組む遠藤さん。そうした仕事に対する姿勢が、多くのクライアントを惹きつけ、また読者をも魅了させているのでしょう。最後にインテリアスタイリストとしての自身の目標について、遠藤さんに聞いてみました。
「まだアイデアベースなので、実現するかどうかはわかりませんが、今度引越しをする予定で、その物件の地下にスペースがあるので、リース屋さんをオープンさせたいと思っています。スタイリストがやるリース屋さんっていちばんニーズがあると思うんです。なぜなら、スタイリストであるぼく自身が『こういうのがあったらいいな』というモノを置けばいいからです。そういう形でぼくにしかできないことを提案していきたいですね。それがいま目の前にある目標です。できる限り早く実現できるようにがんばります(笑)」
