PROFILE

関西を代表するセレクトショップ「ロフトマン」に入社して10年目。30歳という節目を迎えるのと同時に、今年10月にオープンする「ロフトマン 東京」の店長に就任。年間でおよそ300本を観賞するほどの映画フリーク。
東京への出店を機に原点回帰でヘビーデューティな服を届けたい。
ー 東京店のオープンが決まったと聞きました。この新店舗を含めた「ロフトマン」として、この秋冬に注目しているスタイルについてお聞かせください。
今季はレイヤリングを重視したファッションを提案しています。昨年はコロナ初年度ということもあってか、重ね着というよりもニットやパーカを羽織って終わりというスタイルが街で目立ちました。何か物足りなさを感じていたのが理由なんですが、“アメカジ” というキーワードを掲げて、少しくらい鈍臭くても90年代らしさを感じる着こなしをお客さんに楽しんでほしくて。そのなかに〈フィルソン〉や〈パタゴニア〉といった、いわゆる定番と言われるようなインポートモノを差し込んでもらうと、ウチらしさが出るのかなと感じています。洗練されていないからこそのよさ。街着には十分過ぎるほどのオーバースペックが男性には魅力的に映るものだと思っています。
ー この秋冬のラインナップもそんな重ね着に馴染んでくれるアイテムが多いんですか?
そうですね。コロナ禍で着心地のいいアイテムが多くなった一方で、無機質なデザインのものも増えましたよね。そのトレンドを自分たちは一旦置いといて、原点回帰でヘビーデューティなものに着目しています。なかでも〈ササフラス〉のファティーグパンツはその好例。ヴィンテージを焼き直した懐古主義的なプロダクトではなく、ちゃんとそのブランドなりのアレンジが効いたものに惹かれますね。「ロフトマン」の顧客さんは目の肥えた方が多くいらっしゃいます。レギュラー古着でもいいんですけど、生地や縫製だけでなく生産背景にもこだわったアイテムを今後も紹介していきたいですね。


SASSAFRAS “OVERGROWN FATIGUE PANTS” 植物用のスコップやハサミも入れられるポケットは、街では手ぶらで行動できるほどの収納力を発揮。クラシックな軍パンを基調としつつも、同ブランドのコンセプト “ガーデニング” に基づいてモディファイしている。¥28,600


Patagonia “SYNCH ANORAK” 〈パタゴニア〉の人気シリーズ “スナップT” の新型。ジッパープルにだけロゴを施したヴィンテージで見られるディテールが印象的。二重構造のポケットも何かと便利。¥19,800
ー シーズンの立ち上がりでよく売れているものを教えてください。
京都のショップだと〈ダイワ ピア39〉や〈ブラームス〉、それと完売してしまったんですが、〈サイ〉に別注したパンツですかね。ただ〈パラブーツ〉に別注した “ランス” を筆頭に、10月から本格的に各ブランドから新作が入荷して、11月頃に秋冬の全ラインナップが揃うんです。東京店は京都の「ロフトマンコープ 京都」「ロフトマンコープ オハナ」「ロフトマン 1981」「ロフトマン B.D.」といった各店舗で取り扱いのあるブランドを揃えるので、見応えのあるラインナップを楽しんでいただけると思っています。
ー 別注アイテムはいろいろなブランドと取り組んでいるんですか?
〈テンベア〉にオーダーしたナイロンの巾着を取り付けたトートバッグの他に、裏地にオリーブの色を使うことで所有者だけがニヤッとできる〈フィルメランジェ〉のスエット、あとは光沢感のある最高級レザーを用いた〈ホワイトハウスコックス〉のウォレットですね。ワークシューズの茶靴をドレッシーな印象に昇華した〈パラブーツ〉の別注のように、どれも既製品にはないバイヤーの想いが込められています。今後も東京店にはスペシャルな別注アイテムが続々と到着します。


FilMelange “LFM-MILES(LEFT) & LFM-MAX(RIGHT)” プルオーバー型に変更し、オリーブの裏毛を配した「ロフトマン」の別注スエット。〈フィルメランジェ〉らしいリラックス感のある、程よくゆったりとしたシルエット。¥28,600(トップス)、¥26,400(パンツ)


Whitehouse Cox 〈ホワイトハウスコックス〉に別注したウォレットは、某メゾンと同じ上質なレザーを用いたうえ、コインポケットを外付けにアレンジしたデザインもポイント。なかを開くとカードが整然と収まるように収納スペースを配置。¥33,000

Paraboot “REIMS” こちらは〈パラブーツ〉に別注したローファー「ランス」。堅牢性が高くて品のあるドレスラインのシボ革を落とし込んだ他、ソールをさり気なく薄めのものに変更。茶靴の男らしさを残しながらドレッシーな表情にした意欲作。¥71,500
ー セレクトショップがひしめき合う東京に出店する狙いは? なぜコロナ禍のいまなんでしょうか?
実はコロナに関係なく、すでに10年前くらいから東京出店の構想があったんです。代々木上原という場所にお店を構えるのは、「ロフトマン」の一号店があった今出川(京都の下町情緒あふれるエリア)の雰囲気に似ていたから。それと過去に同じ代々木上原にあるセレクトショップ「バーニッシュ」で定期的にポップアップを開催していたのですが、都心から近いのにスローな時間が流れる空気感にも惚れ込んだんです。目指すべき姿は “街の洋服屋”。お客さんと一緒に話しながら、掛け捨てじゃない良品を手に取ってもらいたいですね。
ー 京都の店舗とはまた違った雰囲気で買い物が楽しめそうですね。
今出川にあった一号店のように地域密着型のショップなので、お客さんとじっくり話せるのが一番のよさだと思っています。まずはお店を好きになってもらい、その次にスタッフを好きになってもらって、最後には「このひとが紹介するなら間違いないよね」って言ってもらえることが理想です。例えば、〈パタゴニア〉のフリースジャケット一つ取ってみても、「この生地は自宅で気軽に洗えますよ」「このサイズ感がフィットしますよ」「次はこんなのが入荷するので、このジャケットと合わせるとお似合いだと思います」と、お節介を焼くほどに接客するほうが印象に残ると考えていて。ネットでの買い物では得られない経験を体感してもらうのが我々の使命だと思っています。そして将来的には京都のスタッフが東京店の箱を使ったポップアップも企画中です。ベースとなる京都の空気感にも触れてもらい、「ロフトマン」全店の魅力をより多くのひとに知ってもらう場所にもなると思います。

今年10月オープン予定の「ロフトマン 東京」の店長に就任する上松さん。取材は彼がバイヤーを務める「ロフトマンコープ 京都」で行った。