時計としての美しさを優先して効果的にレイアウトを考えた。
長場さん自身も山には思い入れがあり、登山やハイキングを通して非日常を味わっているのだとか。
「このご時世で海外もいけないですから、山へ行ったり、近場のキャンプ場でキャンプしたりしながらリフレッシュする機会が増えました。今回のアートワークも、そこで見てきた景色が脳裏にあって、描きたいなと思ったんです。あっ、でも楽器を持っているクマは、童謡の『森のくまさん』からインスピレーションを得て描いたんですけどね(笑)」
具体的にどんな景色やエピソードがあるのか、長場さんに聞いてみると、こんな話をしてくれました。

「前に箱根に行ったときに、イノシシの親子に遭遇したんですよ。まだ小さな子どものイノシシと親イノシシがいて、すごく警戒した様子で興奮していたので、『これはマズい』と思って一目散に逃げた思い出があります。ぼく自身も子どもと一緒にいて、ベビーカーを押しながら急な坂道を駆け上ったんです。だからイノシシの親子を描きました(笑)。バックパックは自分のお気に入りのものを絵にしています」


「それと、バックライトを点けると鹿の絵が浮かびあがるんですが、それは登山をしているときに鹿と遭遇したときの思い出ですね。頂上の近くだったこともあって、なんだかめちゃくちゃ神秘的に感じたんです。それと映画の『スタンド・バイ・ミー』でも主人公が出会うじゃないですか、あのシーンも頭に残っていたので描きましたね」


そうして描かれたかわいらしいアートワークの数々。長場さんは「DWE-5610」の実寸大のダミーをプリントアウトして、それを実際に腕に巻きながら配置を細かくチェックしていたそうです。
「何度もシュミレーションしましたよ。パソコン上だけでは絶対にわからないことがあるので、実際に腕に巻いたときにどう見えるかっていうところにもこだわりたかったんです。はじめは総柄っぽい感じで木も描いていたんですけど、実際に腕につけてみると、モチーフが伝わりづらくなってしまうこともわかったので、時計としての美しさを優先して効果的にレイアウトを変えていったんです」
そんな長場さんのこだわりによって生まれたパーツ。今回はグリーン、ホワイト、スケルトンの3色からセレクトが可能。この色も長場さんが選んだのだそうです。

「“山”というテーマだったので最初にグリーンを選んだんです。落ち着いたグリーンがいいなと思ってすこし深めの色を選択しました。ホワイトは自分の絵がいちばん映える色なのでセレクトして、それに合わせる色として、あまりゴチャゴチャしないようにスケルトンにしました。この3色なら、自由に組み合わせても変にならないと思いますよ」