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FEATURE
GRILLZ JEWELZと考えるアイデアの解放の仕方。
MONTHLY NISHIMOTO IS THE MOUTH vol.03

GRILLZ JEWELZと考えるアイデアの解放の仕方。

〈NISHIMOTO IS THE MOUTH〉の主宰者であり、預言者でもある西本克利による連載企画。今回、彼が対談相手に指名したのは、グリルやオーダーメイドジュエリー、ヒップホップジュエリーの制作および販売をおこなう「GRILLZ JEWELZ」のオーナー・秋山哲哉氏。ショップがある御徒町を訪れ、グリルをオーダーしてきました。

PROFILE

西本克利

1979年生まれ、埼玉県出身。2020年に某ドメスティックブランドを退社。その後、カルトクラブ「NISHIMOTO IS THE MOUTH」を立ち上げ、主にグッズを製作し販売している。
Instagram:@k_nisimoto_

PROFILE

秋山哲哉

ジュエリー会社で経験を積んだのちに独立。自身のルーツであるHIP HOPカルチャーをジュエリーを通して体現すべく「GRILLZ JEWELZ」を立ち上げ、グリルやオーダーメイドジュエリー、ヒップホップジュエリーの制作および販売をスタート。国内外問わず、これまでにさまざまなアーティストのグリルやジュエリーを制作してきた。
Instagram:@grillzjewelz_is_right

すごく物腰が柔らかくて面喰らっちゃった。

ー 西本さんはここでいくつかグリルをつくられたことがあるそうですね。

西本:グリルといえばここしかないので。はじめて来たときはすごく緊張したんですよ、敷居がとても高そうだったから。はじめてタトゥーを彫るのと同じくらい緊張してましたね。

秋山:西本さんが来られたのは、もうずいぶん前ですよね?

西本:コロナ前だったので、2017年とかですね。最初はひとつの歯にはめる小さなグリルをつくったんです。その後にマウスピースタイプのゴールドをつくって、ブラック、ブルーと続けてつくりにきました。今日はブラックをつけてきました。これつけてクラブとかへ行くと、めっちゃ怖がられるんですよ(苦笑)。

秋山:(笑)。

西本:だけど、秋山さんのグリルは本当に評判がよくて。インスタでアップすると、海外の人たちからのリアクションがたくさんあるんです。「俺もつくりたい」とか「お店を紹介してくれ」って。

秋山:西本さんがつけていると、やっぱりインパクトあってやばいですよ。もちろんいい意味で。

西本:さっき敷居が高いって言いましたけど、実際に来てみると秋山さんはものすごく物腰が柔らかくて面喰らっちゃったんです。めちゃくちゃ優しくて。

ー 今回の取材のためにお店に電話したときも、すごく丁寧にお話をしてくれました。

秋山:ぼくも西本さんが来たときは最初ビックリしましたよ。だけどその気持ちを表に出したら失礼だから、平静を装いましたけど…(笑)。

西本:それはそうですよね、ビビりますよね(笑)。

指輪やネックレスの延長でグリルをつくってみようと思った。

ー 「GRILLZ JEWELZ」はいつからスタートしたんですか?

秋山:最初は通販だけで2年半やっていたんです、自宅兼工房みたいな感じで。そこから徐々に「実物が見たい」というお問い合わせをいただくようになって、ここにお店を構えてから16年くらい経っているので、もう18年以上前ですね。

ー 通販でもグリルはできるんですか?

秋山:歯型をお客さま自身でつくっていただいて、それを送っていただければできますね。

ー そもそも秋山さんがグリルに興味を持ったのはどうしてなんですか。

秋山:一番最初はラッパーの人たちがつけていて、自分もつけたいと思ったからなんです。むかしの『the source magazine』なんかを見ていると、後ろのほうのページにジュエリーショップの広告があったりして。そこにグリルも掲載されていたんですよ。その当時ぼくは宝飾の職人みたいなことをやっていたので、自分でつくってみようかなと思ってやってみたんです。

西本:自作でつくられたんですね。

秋山:そうなんです。でも、写真の見よう見まねでつくったので、果たしでこれが正解なのかというのがわからなくて。それなら本物を見ないと、ということで、実際にアメリカから通販をして買ってみたんですよ。それでいろいろ形状とかを確認することができて、そこから独自でつくるようになったという感じです。

西本:国内でグリルをつくっているお店って他にもあるんですか?

秋山:いまはすこしだけあると思いますね。だけど、当時はまったくでした。グリルっていっても、どんなものなのかも知られていなかったと思います。

ー グリルはどのようにして、いまのジュエリーのような形状になっていったんですか?

秋山:それには諸説あるんですが、黒人の貧しい人たちが歯並びが悪くて、そのコンプレックスを克服するために金歯を入れていたというのを聞いたことがあります。そこからどんどんカルチャーとして広がっていったと。ラッパーたちがつけだしたのが、およそ30年ほど前からで、それ以来ずっと彼らの定番品として定着しているんです。時代によってスタイルに移り変わりはあっても、みんなグリルはつけている。だから廃れないというか。

ー ネックレスや指輪と同じように、アクセサリーの一部としてつけているということですよね。

秋山:そうですね。その感覚です。

ー 西本さんはどうしてつけようと思ったんですか?

西本:タトゥーと似たような感覚があって、歯の色を変えてみたいなっていう発想からですね。それでグリルといえば、やっぱり「GRILLZ JEWELZ」だなと。KOHHくんとかラッパーたちもみんなここに来ているじゃないですか。ぼくはファッションもずっと白いスエットのセットアップしか着ていないから、変化をつけるとしたらメガネ、スニーカー、そして歯しかないんです。それでオーダーしてみたら、かっこよくてまたつくりたくなって。最近つけている人、増えましたよね?

秋山:増えましたね。女性もワンポイントでつけるようになっていたりとか。

ー 秋山さんはもともと宝飾の職人をやっていたとお話されていましたが、HIP HOPの影響でその道に行かれたんですか?

秋山:もともと食品系の会社でサラリーマンをやっていたんです。だけど、仕事がつまらなくて辞めて、ジュエリーが好きだったので工房に入らせてもらって、そこでいろいろ勉強させてもらいましたね。

西本:どうしてジュエリーだったんですか?

秋山:喜平のチェーンが好きで、それをつくりたいっていうだけだったんですよ。それから指輪とかネックレスとかをつくっているのが楽しくなってきて。その延長でグリルをつくってみようと思ったんです。

ー ずっとHIP HOPを聞いてこられたんですか?

秋山:そうですね。他のジャンルを聴いてないんで、もうわからないんです。日本のポップスとか、まったくの無知で。カラオケとか行っても、なんの曲なのかさっぱりっていう…。まぁそもそもそういう場所にはあまり行かないんですけど(笑)。HIP HOPはもちろん大好きなんですけど、もうそれしか聴けないっていう感覚なんです。それでぼくがつくっているのも、そうしたカルチャーに特化したジュエリーなので、他のことがわからないからこそ、ピュアに続けてこられたというのはありますね。

ー 錚々たる日本のラッパーたちが来店されていますよね。

秋山:最初に来てくれたのはYOU THE ROCK★さんなんですけど、それからKAMINARI-KAZOKU.のメンバーの方々がいらっしゃって。みんなそうした繋がりでいらっしゃいますね。それまではみなさん、ブルックリンとかに行ってつくっていたようなんですけど、日本でつくれるということをYOU THE ROCK★さんが広めてくれたというのがいちばん大きいですね。

日本人は変わったやつというか、おたくっぽいところがある

ー グリルをつくる上で心がけていることはありますか?

秋山:グリル単体で見たときと、その人がつけたときでやっぱり見え方が変わるんですよ。だから、口に入ったときにどう見えるかっていうのは大事にしていますね。指輪とかだとある程度イメージつきますけど、お客さんの口に入ったときにどうなるかを想像するんです。

ー オーダーの際のコミュニケーションが重要になりそうですね。

秋山:お客さんがどういうイメージでグリルを見せたり、自分を飾りたいかっていうのは大事です。それですごくかっこよくなったときは、指輪やネックレスをつくったときよりもうれしさが全然ちがいますね。それはお店側としての勝手な気持ちなんですけど、そうゆうよろこびがグリルにはありますね。

ー それこそ経験がものをいうというか。

秋山:そう思います。国内でむかしからグリルをつくっているのはぼくぐらいなので、数をこなしてきたという自負はあります。

西本:ぼくがいつもタトゥーを入れてもらっている彫り師のYASさんにも、ある程度のイメージだけを伝えるんです。すると、実際の仕上がりがすごくいい。秋山さんにも同じように、ある程度のイメージだけを伝えてほとんどお任せ状態なんです。それで完成まで数ヶ月待って、ワクワクしながら取りに行って、実際にグリルをつけてみるとめちゃくちゃテンションが上がる。それって、まさにタトゥを入れた後と同じ感覚なんです。

ー 待っている間に気持ちがどんどん熟成されていくんですね。やっぱり、つけると別人になれる感覚があるんですか?

西本:変身している感覚はありますね。超ヤバいって言われたりするんですよ。すると、こっちもテンションが上がる。ぼくのこと知らない人には「ラッパーですか?」って聞かれるんですけど、「普通の人です」って答えてます(笑)。

秋山:(笑)。

西本:ぼくは変なグリルをつくりたくて。それこそ今日つけている黒とかもいいなって。

秋山:西本さん、似合ってますよ。

西本:ありがとうございます。オカモトレイジくんとかも変わったやつつくってますよね。

秋山:そうですね。日本人は変わったやつというか、おたくっぽいところがあるんだと思います。それを海外の人たちが見て、おもしろがってくれるというか。やっぱりどうしてもグリルといえば、ゴールドやダイヤがついたギラギラしたイメージがあるので。

オカモトレイジさんのオーダーは、正直最初戸惑ったんですよ。錆びたような加工をしてほしいって言われて。「それ、本当にいいのかな?」っていう葛藤がぼくの中にはあったんです。いま話したようにグリルというのは煌びやかなアクセサリーだから、オカモトさんのオーダーはその真逆の発想だったんですよ。

ー 錆びたように加工できる技術があるんですか?

秋山:特殊な加工ができる業者さんがいるので、つくれるはつくれるんです。しかしながら、それをやったとしても、仕上がりがイケているかどうかはわからなかったので…。

でも、そうやって見たことないものをつくって、それがイケていたときに、新しい流れが生まれるんですよ。実際つけているところを見たら、すごくかっこよかったですね。それをつけたいというオカモトさんがすごいし、西本さんもキャラクターがすごく立っている人だから、もっとおもしろいものをつくりたいという気持ちがあります。

西本:超うれしいです。そんなこと言ってもらえるなんて。

秋山:グリルって、意図的にデザインを考えても、あまりいいアイデアが浮かばないんですよ。それよりも、グリルやジュエリー以外のことを考えたり見たりしているときにインスピレーションが生まれますね。

ー 具体的にいうと、どんなときにアイデアが浮かぶんですか?

秋山:このまえA$AP Rockyからオーダーが来たときは、花を入れました。それは単純に植物や花を見ていて、これをそのまま入れたらどうなるんだろう? というアイデアからなんです。

西本:それは秋山さんの提案ですか?

秋山:ぼくの提案ですね。サンプルをつくって、こんなのどう? って見せたら、気に入ってくれたようで。

西本:すごいですね。海外のアーティストも秋山さんのことチェックしてますよね。それこそドレイクとかも。

秋山:はい、ちょっとやりとりをさせてもらいましたね。

ー そうした海外のアーティストとのやりとりは、やっぱりうれしいものですか?

秋山:う~ん…、うれしいものもありますけど、結構病んじゃったりもしますね。ぼくはメンタルがそこまで強くないので。これでいいのかな? ってすごく迷っちゃうんですよ。うれしいんですけど、プレッシャーも感じやすいというか。でも、それが楽しいんですけどね。

西本:この歳になると、ドキドキすることって減りますよね。だから、そういう緊張感っていいなと思うんです。ぼくも今日、秋山さんとの対談ということで緊張して電車乗ってましたよ(笑)。

秋山:そうですよね。40代越えると、ドキドキするプレッシャーってあまりないですから。

西本:作り手としてドキドキすることって必要なことだと思うんです。だから、ぼくも自分のTシャツをドレイクが着てくれたときは超うれしかったです。

秋山:〈NISHIMOTO IS THE MOUTH〉は西本さんがもう前面に出てるじゃないですか。他のブランドと全然ちがいますよね。そのプレッシャーってすごいなと思うんですけど。

西本:もちろん、ネガティブなメッセージとかを送って来る人もいるんですけど、いまはもう割り切ってやってますね。

秋山:それくらいしないとやっていけないってことですよね。

西本:反応がなにもないよりはマシですよ。ぼくはグリルをつくるとき、やっぱり秋山さんのセンスを最大限発揮してほしいと思うし、だからこそ少し無茶なオーダーをしたいなと思っていて。秋山さんにとってはプレッシャーかもしれないけど、それを乗り越えて生まれたグリルが見たいんです。ぼくはまだ複雑なオーダーとかしたことないですけど、ちょっとづつチャレンジしたいなと思っていて。そうゆうやりとりを経て、人を好きになることが多いですね。

当たり前の景色が普段とは違って見える瞬間がある。その違和感が大事。

ー ということで、今日はグリルをオーダーしに来られたんですよね?

西本:そうなんです。「赤いきつね」と「緑のたぬき」ってあるじゃないですか。あれを見て、赤と緑でつくりたいなと思って。

秋山:そのコンビってことですか?

西本:いえ、赤と緑を一個づつつくって、それを組み合わせてもいいかなと。これは家にあったダンゴムシなんですけど、こういうメタリックな質感にしたくて。

秋山:このダンゴムシ、若干オレンジっぽい色してますけど、この通りにします?

西本:もっと赤い方がいいですね。緑はこの釣りのルアーを参考にしてほしいです。秋山さん、この色ってつくったことありますか?

秋山:赤はもっと真っ赤なやつで、グリーンももっとエメラルドグリーンに近い色でしたね。

西本:メタリックな感じでお願いしたいです。

秋山:了解です。出来上がったらご連絡します。

赤と緑のメタリックなグリルをオーダーした西本さん。秋山さん曰く「いまは順番待ちで2~3ヶ月お待ちいただきます」とのこと。なので、この日はこれにて取材終了。完成後に再度「GRILLZ JEWELZ」を訪ねます。

ー グリルが完成したとのことで、再び「GRILLZ JEWELZ」にやってきました。

秋山:こんな感じで仕上がりました。

西本:かっこいいですね。やばいです!

秋山:赤は口の中血だらけみたいになってますね(笑)。

西本:いやぁ、かっこいいです。アガります。

西本:グリーンもメタリックの質感がめちゃくちゃいい感じに出てますね。

ー こうしたメタリックな質感は塗装するんですか?

秋山:シルバーでベースをつくって、その上から塗装しています。前にもお伝えした通り、本来グリルというのはギラギラとしたものだったので、こうやってカラーがついたものをつくったのはぼくが最初だと思っています。

ー どうしてそうしたグリルをつくろうと思ったんですか?

秋山:西本さんをはじめ、ぼくが持っていない感覚をお持ちの方々のアイデアですね。ぼくの感覚はギラギラしていてbling-blingな感じなんですけど、新しい発想をいただけると楽しいですね。

西本:秋山さん、「グリルやアクセサリーのことを考えていないときにアイデアが湧く」って仰ってましたけど、ぼくもこれをつくりたいと思ったのは、スーパーでカップ麺を見たからなんです。そういうアイデアってやっぱりふと降りてくるんですよね。街中を歩いていても、いつもの当たり前の景色が普段とは違うように見える瞬間がある。そのときに感じたいい意味での違和感ってすごく大事だと思うんですよ。

ー そこからどうイマジネーションを膨らませて、アイデアを形にするかということですね。

西本:そうですね。道を歩いているおばちゃんが持っているバッグでも、それを良いと思えば、その色を拾ってグリルにしたりとかもありえますし。そうやって人と違う感性で勝負したいです。「この人と同じやつにしてください」とか、そういうのはイヤですね。

秋山:西本さんの感性はすごいと思いますよ。赤と緑をつくって、それが自分に合いそうだなって思える感覚がぼくにはないので。だから、人とは違うなにかを持ってらっしゃるんだろうなって。実際にこの赤と緑も似合ってますし。

西本:秋山さんにそんなこと言ってもらえて超うれしいです。本当にありがとうございます。

ー 秋山さんはこれからチャレンジしたいこととかありますか?

秋山:ぼく以外の人を育てたいなっていうところですね。いまは手伝ってもらっている子がいて、その子がつくれるようになってくれればっていう。次の世代、若い感覚を持った人たちにも教えられることは教えたいんですよ。ぼくはいま46歳で、感覚がだんだん凝り固まってきてしまうのが怖くて。そういうのを共有できたらいいなと思うし、若い子が自分の感覚でつくるグリルも見てみたいですし。

西本:いまコロナでマスクするじゃないですか、だから外さないとグリルが見えないし、早く終わってほしいですよね。

秋山:本当にそうですね。

西本:今日も電車に乗っていたらジロジロこっちを見てくる人がいたので、グリルも見せたかったですね。こういうキャラでやっているので、自分にとってグリルは必需品なんです。だからまたネタを考えてつくりにきます。

秋山:ぜひぜひ、いらしてください。

INFORMATION

NISHIMOTO IS THE MOUTH

nishimotoisthemouth.com

GRILLZ JEWELZ

http://grillzjewelz.jp/

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