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FEATURE
西本克利連載。ロスアプソン?・山辺圭司と語る音楽、アート、パーティについて。
MONTHLY NISHIMOTO IS THE MOUTH vol.06

西本克利連載。ロスアプソン?・山辺圭司と語る音楽、アート、パーティについて。

〈NISHIMOTO IS THE MOUTH〉を主宰する西本克利による連載企画。今回は西本さん自身が音楽面ではもちろん、その姿勢についても大きな影響を受けたという高円寺のレコードショップ「Los Apson?(ロスアプソン?)」の店主・山辺圭司さんがゲスト。もうすぐで30周年という節目を迎えるショップを切り盛りする山辺さんのお話には、シンプルだけど重みを感じる言葉がたくさんありました。お店の話、音楽の話、パーティの話、アートの話、山辺さん自身の個人的な話などなど、さまざまな話題に西本さんが切り込みます。

PROFILE

西本克利 / NISHIMOTO IS THE MOUTH

1979年生まれ、埼玉県出身。2020年に某ドメスティックブランドを退社。その後、カルトクラブ「NISHIMOTO IS THE MOUTH」を立ち上げ、主にグッズを製作し販売している。

PROFILE

山辺圭司 / Los Apson?

1967年生まれ、青森県出身。80年代後半より六本木WAVEのバイヤーを務め、94年に自身のショップ「ロスアプソン?」を西新宿にて開店。レコードの枠に捉われず世界各地から集められた雑貨類や、アーティストのTシャツおよびアート作品の展示などもおこなう。その後、場所を幡ヶ谷移動し、現在は高円寺にショップを構える。また、音楽レーベル「時空」や「Sexy Recordings」、雑誌『SPECIALOOSE』等の監修を手掛けるほか、「AMEL(R)A」名義でDJとしてもリリースをおこなうなど多岐にわたって活動をしている。

「これがパーティなんだなぁ」って勉強になった。

ー 今回は西本さんが尊敬してやまない山辺さんがゲストということで。

西本:以前、山辺さんがカセットテープでDJをされるということで幡ヶ谷の「Forestlimit」に行ったんですよ。そのときにお声がけさせてもらって。断られると思ってたんですけど、快く引き受けてくださって。

山辺:そうだったんだ(笑)。

西本:「ロスアプソン?」って、なんだか敷居が高いイメージがぼくの中にあって。とくに西新宿にお店があったときは、もっと入りづらかったですよ。

ー 1994年にオープンされたときは西新宿にお店があって、その後に幡ヶ谷、高円寺と移転されたんですよね。

山辺:西新宿はもう立地がね…(笑)。

西本:たぶんぼくがまだ20歳くらいだったと思うんですけど、お店の扉を開けたら山辺さんがタバコを吸いながら店番をしていて。気まずいなと思って、そのまま扉を閉めた記憶がありますね(笑)。

山辺:あそこはビル自体がすごかったから…。

西本:「ALLMAN RECORD」とかもあって、あそこもちょっと怖くて入りづらかったですね。

山辺:西新宿の独特の空気感があったよね。

西本:いま何年目ですか? 94年にオープンってことはもうすぐ30周年じゃないですか。

山辺:もうすぐだね。20周年のときは恵比寿のリキッドルームでパーティをして、RUBBER O CEMENTとか、DJ NOBUくんにでてもらったんだけど。25周年のときはパーティをやらなくて、30周年はどうしようかね。できてる状況になってたらいいけど、まだどうなるかわからないもんね。

ー 西本さんは当時どんなレコードを買ってたんですか?

西本:アブラハムクロスとか、バッドヘッド・サングラスとか、エレクトヒューマンゲルなどハードコアのレコードをよく買ってました。あとはテクノにも手を出しつつ。この前DJのKABUTOさんにお会いしたんですけど、ロスアプ限定でMIX CDをリリースされてましたよね? それを持ってるってお話したら、「山辺さんが気に入ってくれた」って仰ってて。

山辺:へぇ~、あれも持ってるんだね。結構むかしだよね? 西本くんむかしは全然タトゥー入ってなかったもんね。

西本:所々に入れている感じで、いまよりも全然痩せていましたね。20歳前後は結構荒れてる時代でした(苦笑)。

山辺:なにしてたの?

西本:ヒモですね(笑)。当時付き合っていた彼女が日吉に住んでいて、ぼくは西川口に住んでたんですけど、そこを行き来しつつロスアプにも通っていて。それでその後に幡ヶ谷にお店が移転したんですよ。

山辺:幡ヶ谷の頃はよくお店にきてくれてたよね。

西本:ぼくも西川口から初台に引っ越して、チャリンコでよく行ってたんですよ。すごいアットホームな雰囲気が幡ヶ谷時代はあって。

山辺:入り口に段差があってさ、お客さんがみんな「靴脱ぐんですか?」って聞くもんだから、移転後1週間くらいしてから土禁に変えたんだよね。それでその日から閉店後に宴会をするようになって(笑)。

西本:宴会のイメージありますね(笑)。

山辺:それで「Los Apson? TV」をスタートして。最初はDOMMUNEでやってたんだけど。あとはヘアスタ(Hair Stylistics)とか、久下(恵生)さんとか、いろんな人のライブや展示もやったりしてさ。

西本:そうですよね。そうやって多岐に渡ってやっている感じがすごくいいなと思って。山辺さんのDJも、プレイ中すごく楽しそうで大好きなんですよ。

山辺:そうやりたいなって思ってるからね。

西本:それでバイブスをこっちももらえるというか。和物とかもかけるじゃないですか。去年山辺さんがDJされているときに、普段和物で踊ったりしないのにめちゃくちゃ楽しかったんですよ。すごくパーティ感があって、「これがパーティなんだなぁ」って勉強になりました。

山辺:いろんな要素があるといいよね。

西本:ファッション的なパーティにいくこともあるんですけど、山辺さんたちが体現しているのが真のパーティだなって思うんです。ちょっと前に高円寺の「grass roots」に行ったときも、DJ KURIさんのパーティだったんですけど、夜から昼の13時くらいまでやってて。なにが起こるかわからない感じがしたんです。それが最高だなって。

山辺さんはお酒もパーティも好きで、見習うところがすごくあるんですよ。マイペースに自分のやりたいことをやられていて、あんまりガツガツしていないところもすごく好きなんです。パーティで会うとフレンドリーなんだけど、ロスアプで会うときはちょっと緊張感があって。その温度差もなんだかぼくにとっては心地いいんですよ。不思議なんですけど。

山辺:お店はできるだけお店っぽくありたいと思っているからね。

西本:お店のデコレーションもすごいじゃないですか。西新宿や幡ヶ谷時代もすごかったですけど、高円寺にきてからさらにパワーアップしてますよね。

山辺:一階でやってみたいっていうのがずっとあったんだよね。

西本:実際にやってみて、変わったことってありますか?

山辺:入り口に横長の窓があるじゃん? あそこから「なに屋さんなんだろう?」ってのぞく人がいたりして。人ってやっぱり見たくなるんだなって思ったよ(笑)。

西本:なに屋かわからないですもんね(笑)。

山辺:入り口に小物とか並んでるからさ、雑貨屋かと思って入ったりすると、奥にはたくさんレコードがあったりしてね。いまはCDが弱くて、グッズ類は若い子が買ってくれたりするんだよね。ステッカーとかさ。

ー CDが売れないというのはすごく時代を感じますね。レコードは需要あるんですか?

山辺:いまはレコードのほうが強いですね、あとはカセットテープとか。最近、「ブルース・スプリングスティーンありますか?」とか「マドンナ置いてますか?」って聞かれたりして。

西本:へぇ~! 意外ですね。

山辺:いまってそういう感じなんだぁって思っちゃったり。だからそういうのも仕入れるようにしているんだよね。いわゆるロックの名盤とかは他のお店で買ってもらえばいいと思ってたんだけど、いまはそうも言ってられない状況になっているから。ある意味うちのお店がそうゆう音楽の入り口になってもいいんじゃないかっていう考え方に変わってきてて。だからニッチなレコードのなかにそういう名盤を混ぜておくようにしてるんだよね。

西本:どこか1周している感じなんですね。

山辺:そうだね。アーカイブの大切さってやっぱりあると思うから。古いジャズとかブルースとかも仕入れたり。なかなか売れないんだけど、ブルースの根本的なすごさとかもあったりするから。ちっちゃいお店なんだけど、いろんな要素を盛り込んでるんだよね。

西本:山辺さんのDJスタイルもそうですよね。和物をかけるときがあれば、レイブ系の音楽もかけるし、そのごった感がすごく好きで。

山辺:なんでも楽しんじゃえ! っていうね(笑)。そこは貪欲におもしろいものを追求したいなって思ってて。

西本:それを学びたいですね。不思議なお店ですよ、本当に。いつきても買うものがあるし。他にないレコード屋ですよ。

INFORMATION

NISHIMOTO IS THE MOUTH

nishimotoisthemouth.com

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