ひとつでも好きなモノを見つけて帰ってもらえたら嬉しい。

ー というワケで、みなさんの“推しT”でした。改めて説明を聞きながら見ると、どれも欲しくなっちゃいますね。また、今回もオリジナルTシャツがあるとか。どんなデザインですか?
中野:ある時、ぼくがTシャツを手刷りしていたらインク飛んじゃったことがあって。普通ならB級品にするんですが、そのインクの飛んだTシャツがすごく格好いいモノに見えたんですよね。で、2人に「このインク飛びをグラフィックデザインとして見せることが出来ないかな?」って相談したら「コピーライトをつけてみたらどうだろう?」って。それによってインク飛びがデザインとして成立するんじゃないかって。
Izmt:そうだね。
中野:そのアイデアを聞いて「すごい!」って思ったんですよ。で、フロントにインク飛びとコピーライトだけをデザインした試作品を作ってみたら「これってマルセル・デュシャンじゃん!」って。
畠中:便器にサインを入れて『泉』ってタイトルを付けることでアートに昇華させるっていうね。
中野:ぼくらが“ド”レギュラーTシャツをフォーカスしてきたのは“いままでと違った角度で物事を見てみよう”という思いがあり、そのテーマをまさに表現しているのがこれだって。そしてバックには……Izmtくんお願いします。
Izmt:デュシャンが『モナ・リザ』の安物のポストカードに、鉛筆で口髭と顎鬚を付け加えて『L.H.O.O.Q』という作品にしたっていうのがすごく有名で、それをモチーフとしました。
中野:しかも手描きではなくシルクスクリーンの版として成立させて。
畠中:それこそレディメイド的手法だね。
ー インクの飛び跳ねという偶然性をシルクスクリーンの版にすることで必然性を持たせ、かつシルクスクリーンは製作者によってブレが出るので偶然性もあると。
Izmt:モナ・リザの下には“マスクを脱いで笑顔を見せて”というメッセージが記されています。時期も時期だったのでこういう風にしてみたんですが、ちょっとやりすぎたかなとも思いつつ……まぁ、別に気にしないでもらってもいいかな。
一同:(笑)。
ー これは何枚ぐらい販売されるんですか?
中野:このデザインが上がってきた時にひっくり返るくらい嬉しかったんで、結構な枚数を作るつもりです。また当日は、ちょっとパターン違いも出したりしようかなって思っています。
Izmt:5,000枚くらい作るよね?
中野:なに言ってんの!? ダメよ、そういう冗談を信じちゃう人がいるから(笑)。ちなみにオンラインでも販売します。
ー 3回目の今回が、一応ファイナルになるそうですね。
中野:第1回目の頃に比べ、こうやってレギュラー古着を楽しむのが当たり前の時代になってきたので、ぼくらが「ヤバイよね」ってわざわざ言う必要もないのかなという話になって、一度締めようかなと。
Izmt:ぼくは表に出るのがそもそもそんなに好きじゃないということもあって、最初から「やりたくない」と言ってきたので、やっと終わるなって(笑)。
畠中:同じく(笑)。楽しみながらやってはいたけどね。
中野:このイベントを始めるにあたって、なぜ2人に声かけたかっていうと、一樹くんは「ウェーバー」でヴィンテージを絶えずチェックして向き合っているし、Izmtくんはインクやプリントの技術にも詳しく、グラフィック目線でモノが見ることが出来る。で、ぼくは普段プリントをやったりしているし、アメリカのリアルな空気感も分かる。そんな3人がそれぞれ別々の角度から見ることで、色々な提案が出来ると思ったからでした。
ー 三者三様の角度から見ることによってレギュラーTシャツという概念が立体的なものになり、レギュラー(=普通)に秘められたイレギュラー(=おもしろさ)を伝えるイベントになったんでしょうね。
中野:新しい視点を提供するといいますか、このイベントに訪れてくれた方々に、1つでも自分の好きなモノを見つけて帰ってもらえたら嬉しいです。
ー やっぱりレギュラー古着って自由でおもしろいですね。少し視点をずらすことで、これまで気付かなかった新たな価値を見出すことができる、そんなレギュラーTシャツにフォーカスしたイベント「ドレギュラーTシャツ展」が4月29日(金)と30日(土)の2日間、「ドゥージョー(dojoe)」にて開催されます。ここで紹介したTシャツはごくごく一部。この機会にぜひ50Gを持って足を運んでいただき、レギュラーTシャツの魅力を味わってみてください! では、またいつか。セイムマインド・セイム“ド”レギュラーで皆さんごきげんよう……さよなら。