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焚き火道具について語るときに焚き火マイスターの語ること。
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焚き火道具について語るときに焚き火マイスターの語ること。

焚き火マイスターこと猪野正哉さんが、自身2冊目となる著書「焚き火と道具」を上梓。火を焚くというシンプルな行為において、道具の果たす役割とは? また、コロナ禍以降、キャンプブーム冷めやらないなか、焚き火カルチャーはいまどうなっているのか? 猪野さんとは旧知の仲であり焚き火好きでもあるライターの榎本一生が、焚き火を囲みつつ、焚き火道具にまつわるあれこれについて話を聞いてみました。

名脇役である道具が、主役の炎を引き立てる。

ー そして2022年3月、2冊目の著書「焚き火と道具」を上梓。今回「道具」をテーマにした理由は?

猪野:理由はシンプルで、道具をテーマにすれば書きやすそうかなと思ったから。ただ、1冊目を書き終えた段階で、自分のなかですべて出し切った感があって。いざ2冊目を書き始めようとパソコンに向かったものの、一向に原稿が進まない。あまりにも書けなくて、無意識に自分の髪をむしり続けてしまい、後頭部の髪の一部が不自然に抜け落ちてしまったほどです。

ー それは大変でしたね。

猪野:「焚き火と道具」では焚き火台のほか、火バサミ、着火剤、手袋など、ぼくが愛用している約60点の焚き火の道具を、自分の体験を交えながら紹介しています。ひとつひとつのエピソードを捻り出すのに非常に苦労しましたし、1冊目以上に執筆に時間と労力を要しました。

ー 「焚き火と道具」、読ませてもらいました。これはおすすめの道具を客観的に紹介するカタログ的な本というよりも、モノを通して主観や考え方を綴ったコラム集に近いですよね。猪野さんの焚き火に対するスタンスやモノ選びの哲学が垣間見えて、読み応えがありました。優れた機能の道具に混じって、お気に入りのビールやタバコがピックアップされているあたりも、猪野さんらしくてユルくていいなと。

猪野:そもそも自分はモノに対してこだわりが強いタイプではありません。大切なのは、モノより思い出。道具をテーマにした本を書いておきながらこんなことを言うのはなんですが(笑)。

焚き火はあくまでも炎が主役。道具は脇役に過ぎません。でも、名脇役がいることで、主役の存在感はさらに引き立つ。「焚き火と道具」で焦点を当てたのは、そんな名脇役たちです。

ー 世の中のキャンプ好きは道具へのこだわりが強い人が少なくありませんが、猪野さんの場合はちょっと違って、もっとシンプルに焚き火そのものを楽しもうとしているフシがあります。

猪野:焚き火って本来、シンプルで原始的な行為。それほど多くの道具を必要としないはずです。自分自身、道具に頼ることなく楽しんでいたつもりでした。でも、この本の執筆を通してあらためて気づいたのは、自分はこんなにもたくさんの道具を持っていたのかということ。そして、焚き火の道具って世の中にこんなにもたくさん存在するのか、ということです。

ー 著者である猪野さん自身にとっても気づきがあったわけですね。

猪野:自分は焚き火マイスターを名乗っていますが、本を書きながら気づいたことや学んだことがたくさんありました。

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