CLOSE
FEATURE | TIE UP
ディレクター吉川基希と共に編む、 BEAMSの解体新書。 第3章「BerBerJin 藤原裕と、古着的解釈でオリジナルを読み解く」
STRATEGY OF BEAMS

ディレクター吉川基希と共に編む、 BEAMSの解体新書。 第3章「BerBerJin 藤原裕と、古着的解釈でオリジナルを読み解く」

「URBAN ACTIVITY LABO」というシーズンテーマを設ける2022年秋冬の「ビームス(BEAMS)」。“都会的な活動をするための架空の研究所” から生まれたウェアの数々をどのように攻略していけばいいのか? メンズカジュアル部門のディレクターを務める吉川基希さんと一緒に、その方法を探ります。
今回は原宿にあるヴィンテージショップ「ベルベルジン」の藤原裕さんが登場。古着的解釈を経てデザインされるものもある「ビームス」のオリジナルアイテム。それらの服は、数々のヴィンテージウェアを見てきた藤原さんの目に、どのように映るのか? “古着”というキーワードを軸に語ってもらいました。

  • Photo_Ko Tsuchiya
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Yuri Sudo

古着の動向をしっかりとチェックしながらデザインされたアイテム。

ー11月の「ビームス」のアイテムはどんなラインナップになっているのでしょうか?

吉川:今季の「URBAN ACTIVITY LABO」というテーマに沿って、90年代初頭から半ばにかけてのアウトドアやミリタリーウェアをオマージュしたものがラインナップしています。70年代にはじまったアウトドアブランドが90年代に入ると、色使いや素材使いが進化していて、そうしたこと意識しながら現代的にブラッシュアップしたものづくりをしていますね。いまのアウトドアウェアはテクニカルで洗練された印象ですが、当時のクラシックでどことなく土臭いムードを表現していますね。

ーとはいえ古着のアイテムをそのまま再現せずに、アップデートをしているんですよね。

吉川:そうですね。ぼくらがいまやっているのは、ディテールや素材、シルエットなどに現代的解釈を加えてアレンジすることなんです。古着をベースにしながらも、「ここがこうなっていたら、いま着やすいな」という考えを盛り込んでいるというか。重たい素材を軽くしたり、サイズバランスを変えたりして、いまの時流にあったアップデートを施すことを大事にしていますね。

ーこちらのコートもまさに90年代のミリタリーウェアをオマージュしつつ、いまっぽいデザインにアップデートされていますね。

吉川:これはECWCS(EXTENDED COLD WEATHER CLOTHING SYSTEM)のジェネレーション1の初期型をベースにしたアイテムです。本来は腰くらいまでの着丈なんですが、どなたかがこういうロング丈のアイテムを着て雑誌のスナップに写っているのが記憶にあって。それを参考にして、「ビームス」でも着丈を長くしてアレンジしました。

藤原:ぼくも着丈のながいやつ、持ってますよ。今日持って来ればよかったな。

吉川:やっぱりオリジナルがあったんですね。

藤原:4~5年前にロングのやつを見つけましたね。ネームとかをきちんと調べてないんですけど、通常のECWCSとは裏地の素材がちょっと違っていたので、もしかしたらまた別のカテゴリーのアイテムなのかもしれません。おそらく90年代のものだと思うんですけど。そのときの気分でしたけど、着たらあまり似合わなかったですね(笑)。それでもおもしろいアイテムだったので、とりあえず購入したんですけど。

吉川:こちらはライナーも付属しています。当時のECWCSのライナーは茶色いボアが搭載されていたんですが、それだとちょっといなたすぎるので、キルトのライナーに変更して、これも1枚で着られるようにしていますね。なので、3WAYで着られます。

藤原:このライナーは他のアイテムに合わせてもいいわけですよね。

吉川:そうなんです。そうした汎用性も意識しながらデザインしました。

藤原:カモ柄はヴィンテージだとリップストップ生地ではないんですけど、実用性やファッション的観点で考えると、若い子なんかはとくにこうした格子状の生地をいいアレンジとして捉えてくれそうですね。ちょっとテクニカルな解釈もできますし、実際こっちのほうが現代のファッションとしてカッコいいじゃないですか。

吉川:そうですね。若い子たちにミリタリーぽいなと思ってもらえるようにこの生地にしたんです。この柄のデザインも、生地もいちからオリジナルでつくりました。

吉川:あとはところどころにアレンジも加えていて、古着では服の内側にマジックテープで開閉するポケットが付いているんですけど、それを表側につけて、繊細なファスナーで開け閉めできるようにしています。

藤原:中にニットとかを着ていたりすると、そこにマジックテープが引っかかって毛羽立ったりするので、こういうアレンジはうれしいですね。それがカシミヤのニットとかだったりすると、ショックが大きいので(笑)

吉川:それも実際に自分が着用して気づいたポイントなんですよ。値段も4万円台前半ですし、お得なんじゃないかと。

藤原:それは手頃ですね。「ビームス」だからこそできることですね。

ーつづいて、こちらのフリースアイテムはいかがでしょうか?

吉川:これはもう原型がわからないレベルでアレンジしたものです。ベースはミリタリーのM-65 フィールドジャケットですね。ショート丈にして、胸と腰にあったポケットも胸ポケットだけにしました。さらに素材はフリースに変更しています。それだけでだいぶ表情が変わって、ミリタリー臭も中和されているかなと。

藤原:ミリタリーのフリースって、毛足の短いものが多いですけど、これだけ毛足が長いと表情が出ていいですね。エルボーの2トーンは、〈パタゴニア〉の「リズムフーディ」みたいですね?

ー3年間しか生産されなかった希少モデルですね。

吉川:まさにそこからサンプリングしました(笑)

藤原:このナイロンの切り替えはやっぱりそうですよね。名品ですもんね。

ーこういう毛足の長いフリースアイテムは、古着市場でも人気なんですか?

藤原::若い子たちを中心に、2~3年くらい前に〈パタゴニア〉のフリースに火がついて、そこからどんどん玉数が減ってますね。デッドストックなんかは、もうまったく出てこないです。むかし人気だったのはXSだったんですけど、いまはその逆でXLからどんどんなくなっていて、XSが出てくるとレアものを発見した気持ちになるんですけど、店にだしてもあまり反応がないのが悲しいですね…(苦笑)

吉川:たしかに、当時はLやXLって誰が着るの? という感じでしたね。

藤原:だからいまの現象がぼくにとってはすごく新鮮なんですよ。

吉川:ぼくらのオリジナルアイテムも、サイズ感はかなり大きめにつくってますね。

藤原:〈リーバイス®〉のヴィンテージのGジャンなんかは、サイズが大きくなっても袖が極端に長くなることがないからバランスよく着られるんです。このアイテムもサイズ感はすごく大きいですけど、袖の収まりがよくて、きちんと考えてデザインされてますよね。

吉川:身幅も大きめで、肩も落としているけど、裄丈はちゃんと調整しているので、ピタッといいところで収まりますね。シャツなんかもオーバーサイズでつくっているんですけど、襟周りや裄丈に違和感がでないようにパターンを引いているんです。そうじゃないと、ただただデカい服を着ているだけになるので。しっかりとファッションとして成立させるためには、細かなところも丁寧にデザインすることが大事だなと考えていますね

ー次に紹介するのは、カーディガンですね。

吉川:ここ2~3年、モヘアのカーディガンがすごく人気で、「ビームス」でもバリエーション多めにたくさんのカーディガンをつくっています。こちらはそのうちのひとつで、起毛感のあるブークレ素材でデザインしたものです。こちらもサイズ感はオーバーサイズ気味ですが、裄丈は長すぎないように収まりよくつくっています。

藤原:古着でもモヘアのカーディガンがすごく人気ですね。数年前にぼくらのお店で出したときは、黒のモヘアで4万円弱くらいの値段でした。結構強気だなと思っていたんですが、いま思うと安いですね。とあるお店ではLサイズの黒いアイテムが数十万円で売れたという話を聞きました。ぼくからすると、それはちょっとやりすぎかなと思うんですけど…。最低でも9万円代が妥当だと思います。

吉川:カーディガンブームを察知して、ぼくらも一昨年くらいから徐々に型数を増やしているんですけど、やっぱり人気ですね。

ーそうした傾向はやっぱり古着市場の動きを見ているんですか?

吉川:そうですね。古着の動向や、あとはインフルエンサーやクリエイターの方々が着用しているのをよく見るようになったりとか。

藤原:最近は色物のニットが人気ですね。不景気のときは暗い色が売れると言われていますが、最近は水色や黄色、オレンジとか、発色のいい色のニットが売れています。いろんなブランドさんの服でもそうした色のアイテムが出てきているように思いますし、徐々に景気が回復傾向にあるのかな? と思ったりしてますね。

ーこちらのワークウェアは古着感が全面に出ていますね。

吉川:もうすごくボロボロのアイテムなんですけど、自分が持っている〈カーハート〉のアイテムを参考にして、肩幅や身幅、裄丈を調整しました。これは加工感に注目して欲しいんですけど、とにかく日本の工場の技術がすごいなと。それでストレートに古着感を表現しました。

藤原:このフェード感は本当に巧みですね。ちゃんと着古したようになっているというか。

吉川:そうなんです。こうやってなじみよくフェードさせるには職人技が必要ですよね。とはいえ、これも何回かサンプルをあげてもらいながら、工場とコミュニケーションをしっかり取ってつくってもらったんです。

藤原:〈カーハート〉はブラウンダックのフェードした雰囲気も好きなんですけど、やっぱりブラックのフェード感は格別ですね。10年以上かけて着て、そのあいだに洗ったり、乾燥機にかけたりしてようやくこういう状態になる。古着でも、黒い色が多く残っているものよりも、こうしたフェード感のあるアイテムに高い値段をつけたりします。そっちのほうがカッコいいですし、一点モノという意味では価値があるなと。

ー〈カーハート〉は古着で人気ですか?

藤原::すごく人気です。ジャケットだけじゃなくて、パンツも人気ですね。年代でいうと80~90年代のアイテムが注目されているんですけど、早いひとはロゴにハートマークがついた40~60年代のアイテムに目をつけてますね。

吉川:レギュラーの古着から入って、さらにその奥のヴィンテージに行き着く流れですね。

藤原:いまはレギュラーもむかしに比べてだいぶ値段が上がっているし、こういうアイテムをつくるのは若い子にとってはいいことだと思いますね。そこからまた古着に興味を持ってもらうという意味でも、入り口としてすごくいいアイテムだと思います。

ーワッペンや缶バッジをつけても良さそうですね。

吉川:そうですね。左胸にワンポイントで入れて、自分でカスタムするのも良さそうです。

藤原:いいですね。ぼく個人としては、襟がコーデュロイっていうところにもいい意味での土臭さを感じてグッときます。

吉川:シャツにもコーデュロイの襟をつけたりして、シーズンテーマに合わせたものづくりをしていますね。

ーこちらのキルティングジャケットは、〈トラディショナル ウェザーウェア〉の別注ですか?

吉川:そうですね。「ビームス」でカラーとサイズ感で別注しているもので、もう10年以上取り扱っているモデルです。いまキルティングのライナーがすごく人気で、そういう文脈から、このアイテムもまた一度復権させたいなということで、今月のキーアイテムとしてフィーチャーしました。やっぱり古着でもキルティングのライナーが注目されていて、女性がアウターとして着ているのをよく見かけますね。

藤原:古着をリメイクしたアイテムをよく見ますね。キルティングといえばカーキっていうイメージが強いですけど、ダークネイビーだとバシッと決まってかっこいいですね。カーキに慣れていると、こういう色目っていうのは新鮮に映りますし。すごくいいと思います。

INFORMATION
    

BEAMS 22AW COLLECTION

公式サイト
Instagram:@ beams_official
@beams_mens_casual

       

BEAMS NOVEMBER LOOK

詳細はこちらから

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事#BEAMS

もっと見る