No.04_Hajime Sakamoto
奥深い〈アークテリクス〉のアーカイブ。

PROFILE
原宿の老舗ヴィンテージショップ「BerBerJin」で古着の経験を積み、セレクトショップにも携わる。2020年にヴィンテージや古着、セレクトブランドを取り扱うウェブショップ「instantbootlegstore」を設立し、“素敵な小遣いの使い方”をテーマに運営する。
Instagram:@hajime0722
―今日着ているシェルは、いつのモデルですか?
坂本: 90年代の「カッパSP」ってモデルで、アイスクライミング用のシェルです。ストーンっていうカラーリングなんですけど、古着であまり出てこなくて。


―色や素材を切り替えていて、すごく凝ったつくりになっていますね。現行とのディテールの違いはありますか?
坂本: 年代の判別をするときに見分けるポイントになるのが、前立てが比翼になっているかどうか。これが2002年頃まで採用されていたディテールですね。あと、面ファスナーが丸型になっているのも昔のモデルならではです。
―これは海外から仕入れた古着ですか?
坂本: そうですね。5年くらい前、ぼくが独立するタイミングでいろんなバイヤーに協力してもらおうと連絡したなかのひとりに、アメリカのフリマで知り合ったロシア人がいて、彼から入手した1着です。かっこよくて、自分用にしちゃいました。
―古着市場で〈アークテリクス〉はどういった位置付けなんですか?
坂本: ほかのアウトドアブランドと比べると球数は少ないですね。ぱっと見のデザインは一緒でも、着丈やジップが違うだけでモデル名が変わるから、玄人向けなイメージです。

―その分、堀り甲斐もありそうですね。
坂本: 調べてみると、ワンシーズンしかリリースしていないカラーリングも多いんです。そればっかりにとらわれる必要はないけど、やっぱりぼくの場合は仕事柄、希少性も大事な要素。そもそも古着って、ほかのひとと被らないのも魅力のひとつなので。
―坂本さんは〈アークテリクス〉のどんなところに魅力を感じていますか?
坂本: 始祖鳥のロゴが表しているように、つねに進化し続けることを念頭に置いているブランドの姿勢が好きです。ゴアテックス社と生地を共同開発していたり、止水ファスナーを発案したり。自分たちでもテクノロジーを研究して、それをいまもずっと続けているところがいいですよね。

―最先端を更新し続けていると。
坂本: 〈アークテリクス〉を着るのは、F-1のマシンに乗っているような感覚ですよ。高性能なエンジンのことを全て理解しているわけじゃないけど、マシンのかっこよさは分かる、みたいなね。
―その機能美がファッション的視点にも繋がって、プロダクトとしての魅力を増しているのかもしれませんね。
坂本: この年にしかリリースされていなかったカラーリング、何年まで採用されていたディテール、誰かがあのとき着用していた、とか。そういう古着ならではのストーリーを知るとより魅力を感じられると思いますね。
―ちなみに坂本さんの〈アークテリクス〉の入口は?
坂本: ぼくの場合は、スケーターのハロルド・ハンターから入っているんですよ。「アルファ SV」のブルーを着て雑誌に出ていて、それがかっこよくて。

―そういうところから〈アークテリクス〉を好きになるのもいいですね。
坂本: 〈アークテリクス〉には、誰でも入りやすい入口があると思うんです。ミリタリーとかテックとか、色濃くはないけどカルチャーの文脈もある。もちろん現行もかっこいいですし。知れば知るほどおもしろいブランドです。