1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
この連載もいつの間にか18シーズン目に突入し、新たなショップでお届け。1巡目のラストを飾る第140回目は、代々木上原の「ドゥージョー(dojoe)」が2度目の登場。今回はスタッフの小川さんに、どんなニュー・ヴィンテージを紹介いただけるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
小川颯太 / dojoe スタッフ
Vol.140_音ネタ”Tシャツ
ー本連載は“トゥルー・ヴィンテージのように記録や記憶に残っていくようなグッドレギュラーをいまの内に探す”のがテーマ。以前、オーナーの中野さんにご登場いただき「ドゥージョー」にとってのニュー・ヴィンテージとは? ということで、「“新たな発見”と“再発見”という2つがベースにあって、その上で他者からの共感を得られるモノ。それがニュー・ヴィンテージだと思う」とお聞きし、「アイテムをセレクトする際にも“初見で目に止まるということを意識しつつ、ある程度は探さないと見つからないモノ”というのを意識している」とも伺いました。
その辺は基本的に変わっていません。その上で今回は、Tシャツでいきたいと思います。ざっくり言いますと“音ネタ”なんですが、バンドTやヒップホップTのようなアーティストもの以外で音をネタにしたものをいくつか集めてみました。まずはこのジャンルが気になり出したキッカケでもある〈シュア(SHURE)〉から。
シュアのTシャツ 7,700円(ドゥージョー)
ー音響メーカーだと〈ボーズ(BOSE)〉や〈テクニクス(Technics)〉なんかは、古着市場でもちょいちょい見かけます。
その辺は定番なので、ちょっとズラしたところでこちら。最初は〈シュア〉が音響メーカーと知らず見た目で手に取ったんですが、1925年にアメリカで設立された老舗で、プロ用マイク「SM58」などが世界中で有名で、コンサート会場や放送局から一般の音楽ファンまで幅広く使われているとのこと。Tシャツではロゴが胸に入ったデザインが有名ですが、ソファを中心に配置し、その周りをテキストが囲む珍しい1枚、
ーびっしり並んだテキストをよく見ると、これアーティスト名なんですね。
多分、同社のマイクを愛用しているカスタマーなんじゃないですかね。アーティスト名がソファを囲むことで、“ソファに腰掛けて音に包まれる”みたいなイメージなのかもしれませんね。ボディは〈フルーツオブザルーム(FRUIT OF THE LOOM)〉ですが、そんなに古い感じはなく、2000年代初頭~2010年代くらいだと思われます。〈ステューシー(STUSSY)〉なんて言われたら納得してしまうくらいクールですよね。音響系に限らず、アメリカの企業モノのマーチャンダイズのTシャツって、すごく格好いいビジュアルが多いので、ついつい探してしまいます。
ー続くこちらは…うん? ブルース・リー?
ブルース・リーのTシャツ 9,900円(ドゥージョー)
不滅のクンフー・マスターにして伝説的アクション俳優としても知られるブルース・リーが、DJをやっているフォトグラフィックをあしらったシュールな1枚。調べたところ、実際にDJをやっていたわけではなく、ビースティ・ボーイズをはじめとしたヒップホップ・アーティストにもサンプリングされていたので、そのイメージを落とし込んだものじゃないかなと。
ーちなみに、彼はダンスの才能もあり、香港のダンスコンテストで優勝したこともあったり、兄がバンドをやっていたりと音楽にも造詣が深かったと言われているとか。これとは違うグラフィックですが、同じように半裸のブルース・リーがヘッドホンを装着してDJをしている姿をプリントした Tシャツは、映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で、トニー・スタークが着用して話題に。
へぇ~。一応、ブルース・リー財団と思わしきオフィシャルのタグがついています。年代的には00年代初期くらいかなと。モノトーンのフォトプリントの大きさ・位置といい、なんとなく00年代~10年代くらいのニューヨークあたりのストリートブランドみもあったりしつつ。
ー〈サー(SSUR)〉とかやりそうですね。しかしサイズがまたデカイ!
写真では分からないと思いますが、身幅がバカ広。ウータン・クランのようなクンフー好きのヒップホップファンが元のオーナーだったのかも。なんて想像するのも楽しいですよね。で、3枚目はこちらです。
ドラムバムのTシャツ 7,700円(ドゥージョー)
ー“got drums?”とプリントされていますが、これまでの2枚に比べてもシンプル。
コピーライトに記されているDRUM BUMというのは、1999年にアメリカで設立された、ドラマーやパーカッショニスト向けのグッズ・音楽雑貨を専門に扱う老舗オンラインショップのこと。そこのマーチャンダイズで、サイトを覗くと、キーボードプレイヤー向けの“got keys?”なんてデザインもあります。
ー何かの慣用句とかですか?
“got milk?”っていうのは、1993年にアメリカで始まった牛乳の広告キャンペーンのキャッチコピーで、これをデザインしたTシャツもありますし、フレーズをパロディした“got~”シリーズは定番ネタとして、ちょいちょい見つかります。シンプルかつアメリカっぽいので、面白いかなって。
ーなるほど。4枚目はこれからの時期にも活躍するロンTですね。
ロッカ ウェアのロンT 8,800円(ドゥージョー)
ブランドは〈ロッカ ウェア(ROCA WEAR)〉。ジェイ・ジーとデイモン・ダッシュ率いるレコード会社のオフィシャルクロージングラインとして1999年に設立され、00年代はB-BOY御用達としてストリートでもお馴染み。こちらは取り扱い説明書にあるようなシンプルなタッチで、ヘッドフォンのイラストがデザインされています。立体的なグラフィックがパッと見、刺繍のように思えますが、それよりも高級感のあるシリコンプリント。
ー以前「ドゥージョー」で「ドレギュラーTシャツ展」が開催された際のインタビューで、シリコンプリントはかなりの数を生産しなければいけないので、かなりハードルが高いという話も出ました。
実際、生地も非常にしっかりしていますし、首裏にロゴ入りの汗止めテープを配していたりと無駄にお金がかかった仕様ですからね。レコード会社が運営しているだけあって音ネタにも力が入っています。
ー普通の音ネタからちょっとズラしつつ、かつ背景にストーリーを想像する余地があるのが、とても良かったです。
バンドTもヒップホップTも“知らないで着るのがはばかられる”アイテムの代表格となっていますが、この辺であれば、他人から熱や愛を測られにくいので、そのハードルも下がるんじゃないかなと。しかも“音ネタ”と主語を大きくすることで周囲にも自分自身にも言い訳ができるっていうのがポイントで(笑)。ファッションだから「あくまでグラフィックが良いから選ぶ」でもイイと思いますし、プライス的にも買いやすいと思うので気張らず楽しんでいただけますと幸いです。
小川颯太 / dojoe スタッフ
アメリカで買い付けられてきたインポート&ユーズドアイテムのセンスの良さと先見性から、業界内にもファン多数の古着屋「dojoe」 に、大学卒業後の23歳で入店し、現在はスタッフとして勤務。趣味はサウナ。
インスタグラム:@dojoe_tokyo

