デザイナーを公表しないアノニマスなブランドでありながら、着実にその存在感を高めている〈シティー カントリー シティー(City Country City)〉。そんなブランドの実態を探るべく、設立当初から親交の深いクリエイターたちへのインタビューを行う連載企画をスタート。謎のブランドの気になる中身を、あらゆる角度から迫っていきます。
記念すべき第1回目に登場するのはヴィンテージバイヤーの栗原道彦さん。奥渋谷にある自身のショップ「ミスタークリーン」では、このブランドの取り扱いをしており、その意外性が気になるところ。その関係性についてはもちろん、古着と〈シティー カントリー シティー〉の相性についても栗原さんに語ってもらいました。
ミステリアスな部分も含めて、むかしの原宿っぽい香りが漂っている。
ー「ミスタークリーン」で〈シティー カントリー シティー〉の取り扱いをはじめた経緯を教えてください。
栗原:ぼくは古着屋をやってますけど、新品の服もよく着るんです。だから自分が着たいものも常に探しているんですけど、 年の半分くらいはアメリカに行っているので、タイミングが合わずでなかなか国内の展示会にも行けなくて。そんなときに、もともと〈シティー カントリー シティー〉の人たちとは知り合いで、「『ミスタークリーン』でどう?」っていうお話をもらったんですよ。
それで見に行ったのがきっかけです。その人たちがこれまでにつくってきたものを知っているし、〈シティー カントリー シティー〉に関しても原宿界隈にいた彼らのバックグラウンドがしっかりとアイテムに表れていて、シンプルにいいなと思ったんですよ。
ー古着以外のアイテムを着るというのはむかしからなんですか?
栗原:若い頃はあまり着てなかったですね。「ロストヒルズ」が原宿にオープンしたのが2000年で、当時から“ブランドの人たち”のことは認識していたし、道端とかですれ違ったりもしていたと思うんですけど、とくに交流があったわけではなくて。
彼らが在籍していたのはすごく人気のブランドだったし、もちろんそのアイテムの魅力も知っていたんですけど、当時のぼくは経済的な理由だったりで古着しか手をだせなかったんですよ。その後、友人の古着屋さんの周年パーティで接点が生まれて、そこから交流が生まれるようになるんです。
ーいつごろから古着以外の服を着るようになったんですか?
栗原:20代の半ば頃かな? 古着もひと通り着てきたし、その頃には同年代の友人たちが自分のブランドをはじめたりとかしていたので、彼らがつくる服を着るようになりましたね。やっぱり古着にはない魅力があるんです。古着であるものは古着でいいやって思っちゃうので。
ーそうしてさまざまなブランドの服を着るようになったわけですね。栗原さんの中で、〈シティ カントリー シティ〉の服は、どんなところに魅力を感じますか?
栗原:古着に合わせやすいというのがいちばんですね。なんだかんだでぼくのファッションのベースには古着があるので、そこに合わせやすい。自分が好きな人たちがつくっているし、単純にモノとして魅力があるし、いま自分が着たい服のムードとリンクするというのが大きな理由です。個人的にいま90~2000年代に着ていたものが再びブームになっているので、そうした服と合わせやすいんですよ。
ーじゃあ、よく着ているんですね。
栗原:結構着てますよ。むかしの固定概念で「こういう服にはこれを合わせないといけない」みたいなステレオタイプな考え方も正直ないですし、逆に気にしなくなっているというのもあって、本当に普段から着てますね。
あと、新品で買っているブランドの服って、シーズンが終わると着なくなってしまうものも少なからずあるんです。それはそのときのトレンドとかをしっかり反映させているからだし、そういったアイテムも魅力的であることには変わらないんですけど。〈シティ カントリー シティ〉に関しては、いい意味でシーズンみたいなものを感じないというか、長く着られるアイテムだと思うんですよ。
ーエイジレスな魅力があると。
栗原:ぼくが古着を売っているのも、やっぱり価値が残るものが好きっていうのがあるので。いいものはいいもので変わらないというか。
ーいまでこそ古着と新品の垣根というものがなくなって、セレクトショップで古着を扱ったり、古着屋で新品のアイテムを扱うお店も増えてきましたが、「ミスタークリーン」の場合はそうした古着との親和性を感じてお取り扱いを決めたんですか?
栗原:そこはあまり深く考えてなかったですね。声をかけてもらって、実際に商品を見させてもらって、いいなと思ったから仕入れたという感じで。そういう縁みたいなものを大事にしてますね。
ー実際にお客さんの反応はどうですか?
栗原:いまでもちょいちょい言われるんですけど、結構みなさんぼくがやっているブランドだと勘違いするんですよ(笑)。
ー(笑)。「Mr.Clean」の“C”なんじゃないかと。
栗原:それもかなり言われましたね(笑)。
ーでも、ある意味では違和感がないということですよね。
栗原:よくよく考えたらそういうことなんでしょうね。誰がやっているか言えないのがもどかしい部分ではありますけど…。ただ、そうしたミステリアスな部分も含めて、むかしの原宿っぽい香りがどこかから漂っていて。「TRATTORIA LA VERDE」とのコラボもそうですけど、そういう匂わせ方みたいなのが上手だなと。いい意味でデザイナーズブランドっぽくないですし。
価格帯も、いま古着のTシャツの値段が高騰してて、むかしは3~4,000円だったのが、いまは平均でも7~8,000円くらいしているんですよ。だから新品のTシャツと値段が大して変わらない。普段古着を買っている人も手を出しやすいんだと思います。
栗原:あとはやっぱり、古着屋でしか服を買わない人もいると思うんですよ。そうした方々に対して古着以外の提案ができるというのがおもしろいですよね。セレクトショップなどで古着を売るということが当たり前になってきて、そこで古着との接点が生まれるのと同じように、古着屋で新品の服を売ることでお客さんの選択肢が広がればいいなと。
「ミスタークリーン」で扱っているというのが、ある程度ブランドに対する安心感につながっていればいいなと思います。
ー勝算というか、響くという自信はあったんですか?
栗原:正直それは未知数だったんですけど、シンプルにおもしろそうだと思ったんですよ。うちは古着しか扱ってなくて、なにかを特化して打ち出しているお店でもないので。もちろん接客はするんですけど、語弊を恐れずに言えば、放っておいても売りやすい商品なのかと思いますね。最初に古着かと思って手に取るお客さんも少なくないんですよ。
ー今後、〈シティー カントリー シティー〉に期待することはありますか?
栗原:一昨年かな? ぼくがデッドストックのスウェットを提供して、そこにシルクで〈シティー カントリー シティー〉のロゴをプリントするっていうことをしたんですけど。そういうのをまたやりたいですね。材料ありきなのでなかなか難しいかもなんですけど。またものづくりのお手伝いができたらいいですね。
ーウェブで販売したところ、ほんの数秒で完売したらしいですね。全部1点ものだし、サイズも色もプリントの位置も変えて。
栗原:そういうのも原宿感ですよね。響く人には響くっていう。またそういうことをしたいですね。
栗原道彦 / ヴィンテージバイヤー
1977年生まれ。1995年から2010年まで原宿にあった古着屋にてバイイングを担当し、2011年に独立。古着の卸売りや、ECサイトを立ち上げ、2018年に実店舗「Mr. Clean Yokohama」をオープン。2020年より渋谷区富ヶ谷にお店を移転し、店名を「Mr. Clean」に変更。ヴィンテージシーンのみに留まらず、ファッションシーン全体から支持を集めるヴィンテージバイヤー。
Instagram:@michihikokurihara
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住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-35-4 セトルMS代々木公園1F
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