紙飛行機で宇宙旅行。 --ものについて。時々酒と、下ネタと。--
Ray and LoveRock
「写真を撮る人」
Ray and LoveRock(れい あんど らぶろっく)写真を撮る人、ファッションエ ディターでもある人。フツウの人ではありますが、生きることはどちらかという と下手です。文章もロックンロールしていければ良いなぁ。「ものや写真、少し はカルチャーのことなんかを書いていきたいですが、お酒のこと、下ネタも好き なんで、お付き合いください」
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木島隆幸さんのこと、エレガントと存在感のこと。
2012.06.25
木島さんのことを書きたいと思うのだけれど、木島さんは木島さんで、木島さん以外の何者でもない。以上終わり。
そんな感じで木島さんは木島さん色が強いのだけれど、ふと気づくと周りにさりげなく同化している。それが木島さんなんだと言えば、木島さんなんだけれど。
木島さんはフルネームだと木島隆幸さんとおっしゃる。年齢はぼくと同じで、まあそこそこ良いお歳である。
何をしているか? といえば、帽子のデザイナー。それも素晴らしい、としか言いようのないデザインをする。
ぼくは、ずいぶんと前から木島さんのことを知っていたのだけれど(おそらく15年とか)、今までお目にかかる機会に恵まれなかった。それ自体は仕方のなかったことだし、普通に残念だったと思うしかないのだけれど、一緒にご飯を食べたり、中古カメラ屋さんに一緒に行ったりするようになってからの濃さというか、空気を共有する感じというか、まあ、いろんな意味でこの上ない人な訳である。
木島さんを紹介してくださったのも、前回このコラムで勝手ながら書かせていただいた年下のアニキことTakahiro Miyashitaである。感謝。
さて、ぼくは木島さんを知っていたと書いたけれど、紹介していただくまで挨拶をしたこともなければ、実物に会ったこともない。すれ違ったことくらいはあるのかもしれないけれど。
だけれど、ぼくは木島さんを知っている。それもよく知っている。
電信柱の影から覗いていたりして尾行しているわけでもないし、ストーカーをしていたり、探偵を雇って木島さんのことを調べあげたり、夜な夜な仕事場の前で出待ちするような、追っかけをしていたり、ファンクラブに入っているわけでもない。だけれど、ぼくは木島さんを知っている。
まあ、伸ばし伸ばしな文章になって申し訳ないのだけれど、ご本人は知らなくても、10年数年くらい前から木島さんの作る帽子は何度も買っていたのであるから、よく知っているのである。――そしてまた、それは木島さんを知ることでもある。
今シーズンもふたつ買った。ストローハット(ですよね?木島さん。間違っていたらごめんなさい)と、スナフキンの帽子みたいなちょっとツバの広いやや山高帽な感じのものである。
木島さんの帽子は、かぶっていても、かぶっていることを忘れてしまうくらいしっくりくる。別段、軽いとか、特殊な作りをしているとか、そんなことはないのだけれど、ストンと落ちるような感じでかぶれる。
だけれど、いろんな服との相性も良くて、どんなスタイルでも合う。スーツにも合うし、ボロボロにジーンズでボロボロの古着のTシャツなんて組み合わせにも合う。もちろん、帽子の型にもよるのだけれど、ぼくが持っているタイプはだいたい、そんな極端なカジュアルから、フォーマルにまで合うと思っている。
帽子そのものはすこぶる付きのエレガント。どこが?と訊かれると困ってしまうのだけれど、醸し出すもののなかから、きちんとしたエレガントが感じられるから不思議なんですね。だからといって、決しておとなしいわけではなく、うちから溢れる強さを持っている。
しなやかで優雅なんだよなぁ、とはよく思うこと。
お店の陳列も、どこかヨーロッパ的で、ゆとりとか余裕といったものが感じられて、見るものを疲れさせない。忙しくない雰囲気がある。これはとても大事なことで、帽子というアイテムをきちんと見て欲しいという意思の現れなんだと思う。
洋服は試着室に入って着替えることがあるけれど、帽子は手にとってかぶるだけ。人の心理としても、「わざわざ着替えたのだから」ということで細かくシルエットをチェックしたり、後ろ姿を見ようとしたり、脇ぐりやおしりの入り方、肩の位置や、袖の位置、はたまた腰の位置やその深さ......、とまあ、チェックし出したらきりがないほどチェックするわけである。
本当は帽子も同じで、かぶったときの深さとか、ツバとのバランス、山の高さ、サイドの締まり具合、おでこの位置......、ちゃんと木島さんに伺ったわけではないのでこれが正しいのかどうかはわからないけれど(あとで訂正するかもしれません)、まあ、想像に固くないところでもこのくらいはちゃんと見たいものである。
そう考えると、木島さんのお店作りは理に適っている。じっくりと見る時間と場所があるということは買う側にとってもありがたいことだ。
実際に木島さんの帽子をかぶっているとこうしたエスプリがやはりにじみ出ていると思う。
先ほど、かぶっていることを忘れてしまうけれど、きちんとした存在感がある、と書いた。それは木島さんの佇まい似ている。
出だしの文章、それが木島さんであり、木島さんの帽子の存在感なのである。