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COLUMN

Curry Flight

文・写真:カレー細胞

ラーメンと並ぶ日本のソウルフード・カレー。こと近年は、めくるめくスパイスの芳醇な香りにトバされ、蠱惑の味わいに心を奪われる“中毒者”が後を絶たない。そして食べると同時に、語りたくもなるのもまたカレーの不思議な魅力だ。この深淵なるカレーの世界を探るために、圧倒的な知識と実食経験を誇るカレー細胞さんに、そのガイド役をお願いした。カレーは読み物です。
 
カレーを巡る、知的好奇心の旅。
今日もカレーで飛ぼう。知らないどこかへ。

第3便 カレーに合うお酒【ビール編】

カレー細胞です。
 「カレーとお酒は合わない」。そんな話を昔から聞きます。

しかし、結論から言えばカレーとお酒はめっちゃ合います。それどころか、お酒と合わせることでスパイス料理はさらなる可能性を拡げてくれるのです。
 今、キています。スパイス呑み。

 

「カレーとお酒は合わない」という話はどこから?

 

そもそも、「カレーとお酒は合わない」という意見はどこから来るのでしょう?
 推測になりますが、これはやはり国民食カレーライスのイメージによるものと思われます。
 小学校の給食で、牛乳とともに食べたカレーライスの記憶。それがお酒と繋がらないという感覚はわかる気がします。
 朝食用の食パンをお酒に合わせるといってもピンとこないような感覚。

けれど考えてみれば、レバーパテをバゲットに乗せワインといただくように、パンがお酒と合わないわけではない。それと同様に、〆のカレーを出すバーも昔からあった。
 要は食べ方、捉え方、食べる量と味のチューニングで、お酒に合わすも合わさないも自由だといえるでしょう。

 

真夜中、飲みの〆にいただくカレーも最高です。写真は大分「大島屋」。

それともう一つ。
 「カレーの本場はインド、インドは宗教的にお酒を飲まないひとが多い。だから本来的にインド料理はお酒に合わないのだ。」と主張する方々も。そういう方に私は言いたい。
 「インドの多様性を舐めちゃいけませんぜ」と。

どこの国にも酒飲みはいる。自国の料理を酒に合うようチューニングするのです。実際、ムスリム由来のタンドリー料理ほどビールやワインに合う料理はありませんから。

 

お酒との相性抜群のタンドリーチキン。写真は検見川「シタール」。

そこで数回に分け不定期で、カレー界屈指の酒量を誇る(誇れるものなのか?)私の個人的主観から、カレーに合うお酒をガンガン紹介していきたいと思います。(お酒飲めない方ごめんなさい)
 今回は手始めにビールから。

近年のクラフトビールの盛り上がりで、カレーとビールをマッチングする楽しみが拡がってきましたよ。

 

最近はスパイスを用いたビールも増えてきました。写真は「山椒エール」。

 

カレー×IPA。

IPAはその名もインディアンペールエールの略。
 英国の植民地だったインドまで船で輸送する際傷まないよう、防腐剤の役割となるホップを大量に入れたビールです。
 苦みと香りが強いのが特徴で、それに負けない香りと味を持つスパイス料理との相性は抜群。

イチ押しIPAは「バラストポイント スカルピンIPA」、強烈な味わいで、ビンダルーなど個性が強いカレーとよく合います。

 

「バラストポイント スカルピンIPA」スカルピンとは魚のカジカ。ラベルもカッコイイ。

 

カレー×白ビール。

 

IPAの対極となるのが白ビール。
 苦みを抑え、華やかな香りをもつホワイトエールやヴァイツェンはランチカレーにだって最適。

イチ押しは「水曜日のネコ」。コリアンダーシードとオレンジピールが用いられており、カレーの香りにさらなる立体感が加わります。

 

ヤッホーブルーイングの「水曜日のネコ」はカレーのために生まれたようなビール。

 

もう一つのイチ押しは「常陸野ネストビール WHITE ALE」。こちらも爽やかなスパイス感がたまりません。
 これら白ビールは、野菜カレーや海鮮カレーと合わせれば素材の味を引き立て、ドライキーマと合わせればスパイスの香りを口内に広げる役割を果たしてくれます。

 

カレー×黒ビール。

 

黒ビールといえばギネスが有名ですが、カレーに合う黒ビールもあるんです。

それがスリランカの黒ビール「ライオンスタウト」。
 あのマイケル・ジャクソン氏が絶賛するビールです。
 あ、後ろ向きに歩くMJじゃなく、ビール評論家のMJですけど…。
 製造しているLion Breweryはなんと、アジア最古のビール醸造所!
 ギネスのように滑らかな泡だちですが、ギネスを遥かに凌駕する濃厚な味わい。コクと辛さ、甘みが押し寄せる、とてつもなく美味い黒ビールなんです。

 

スリランカの名作黒ビール「ライオンスタウト」。

 

この迫力を受け止めるのはやはりガツンとスパイスが効いた料理。スリランカカレーだけでなく、スパイス使いがハードなカレーなら何でも合います。
 黒までいかないダークビールなら、ラオスの「ビアラオダーク」がおススメ。
 コクと甘みと清涼感が、ナンプラーや豆鼓など発酵系食材を用いたクセ強めのカレーにもよく合います。

 

ラオスのダークビール「ビアラオダーク」。キンキンに冷やしていただきましょう。

 

ガーナで製造されているノンアルのギネス「Malta Guinness」。熱帯のスパイス料理に合わせて。

 

カレー×アジアンビール。

 

それ以外にも、スパイス料理を常食している国のビールがスパイスに合わないわけはありません。

ネパールなら「ネパールアイス」「リアルゴールド」「エベレスト」など、インドなら「マハラジャ」「キングフィッシャー」「ボス」など、シンガポールなら「タイガー」、タイなら「シンハ」「チャーン」、ベトナムなら「333」「サイゴン」「ダイヴィエット」などなど。

 

インドの「キングフィッシャーストロング」はアルコール度数7.5%!

 

甘さがあり、スッキリした味のビールが多いですが、それはやはり暑い国でスパイスとあわせていただくことを想定したもの。  
 近年、どんどん暑くなる日本ですから、これらアジアンビールを美味しく感じることが増えてくるはずです。

 

まだまだあります、
カレーの名相棒。

 

ビールの味わいは、カレーと同じく多種多様。
 これ以外にもさまざまなカレーとビールの相性がありますが、キリがないのでこの辺で。

最後に、カレーとビールのマッチングを愉しめるお店をいくつか紹介しましょう。

『アンドビール』(東京・高円寺)

 

スパイスカレーとお酒に合う一品料理が楽しめるこのお店、なんと店内にブリュワリーがあり、カレーに合う面白いクラフトビールをいただくことができます。
 銭湯とコラボしたという限定の檜ビール、美味しかったなぁ。

『CARVAAN(カールヴァーン)』(埼玉・飯能)

 

河岸に聳える古城のような巨大レストラン。
 実はここ、飯能に本社を持ち、食品輸入などを行う株式会社FAR EASTによる、自家醸造クラフトビールと珍しい中東料理が楽しめるお店なのです。
 店内には巨大な醸造所、それだけじゃなく、なんと自社農園でホップの栽培から行っているというから驚き。いただける料理も「ゾロアスター教徒のカレー」など、非日常感満載。
 常軌を逸した凄いお店です。

『beet eat』(東京・喜多見)

 

唯一無二、女性ハンターによるジビエカレーが人気のお店ですが、魅力はそれだけではありません。実は海鮮系が圧倒的に美味いのに加え、上でも紹介した常陸野ネストビールが生でいただける数少ない場所でもあるのです。食材へのこだわりがお酒へのこだわりにも繋がっているのですね。

『Spice BAR 猫六』(東京・曳舟)

 

アジア各国のスパイス料理を独創的な手法でアレンジ、クラフトビールとあわせていただく独特のスタイルが人気のお店。どんなクラフトビールをカレーと合せるか、ワクワクなのです。

  

カレーとお酒は、食の楽しみを予想外に拡張してくれる相棒。
 中でもビールは、みんなで楽しく盛り上がるカレー会には欠かせない存在なんです。
 みなさんもちょっと意識して、カレーとビールのマッチングを楽しんでみてくださいね。

 

カレーとビールでほろ酔い気分、次回はどんなFlightをしてみましょうか。

PROFILE

松 宏彰(カレー細胞)
カレーキュレーター/映像クリエイター

あらゆるカレーと変な生き物の追求。生まれついてのスパイスレーダーで日本全国・海外あわせ3000軒以上のカレー屋を渡り歩く。雑誌・TVのカレー特集協力も多数。Japanese Curry Awards選考委員。

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