FEATURE
写真が飽和した時代に、濵本奏が問うカメラの可能性。
MONTHLY JOURNAL JUN. 2026 Vol.01

写真が飽和した時代に、濵本奏が問うカメラの可能性。

ぼくらが利便性を追求するなかで、煽りを受けたのはカメラです。撮影という行為がスマホひとつで事足りる時代に、その存在意義を問い直してみたくなりました。そこでまず声を掛けたのは濵本奏さん。今年「木村伊兵衛写真賞」を受賞した若き写真家です。今後の人生、写真一本で行くと腹を括ったばかりという彼女の手には〈富士フイルム(FUJIFILM)〉のカメラがありました。

  • Photo & Video_Hana Shimizu
  • Text_Shinri Kobayashi
  • Edit_Ryo Muramatsu

目を超える高精細デジタルカメラをどう使うか。

—— カメラについて詳しく教えてください。フィルムとデジタルはどう使い分けていますか?

濵本: 作品ではフィルム、仕事ではデジタルを使うこともあります。フィルムの方は、高校生で出会った頃の「撮影できた感動や感触」そのままにずっと楽しんでいます。露出計を使わないので、現像されるまでどんな写真が撮れているのか分からないこともワクワクしますし。でも仕事だと流石にそれはお腹が痛くなっちゃうので(笑)、デジタルカメラを使って、クライアントにその場で写真を見せることもあります。

愛機のフィルムカメラ、〈ニコン(Nikon)〉の「FM3A」はマニュアルフォーカスの中級機。写真集『midday ghost』では、セカンドハンドショップで見つけた、壊れた〈富士フイルム〉の「チェキ」を使うなど、カメラの偶然性を楽しんでいる。

—— 濵本さんが好きなフィルムはありますか?

濵本: 〈富士フイルム〉の「FUJICOLOR 100」や、いまはなかなか手に入らない「フジカラー SUPER PREMIUM 400」がすごく好きです。かつては安い業務用フィルムがあり、よく使っていたのですが、それに比べるといまは価格が10倍近くに高騰してしまって。最近になって「400」が復活したものの、どうやら国内製造ではなくアメリカ製になったようで、少し色味が変わってしまったんです。

—— そのフィルムのよさや、好きなところは具体的にどういう部分ですか?

濵本: 比べると〈コダック(Kodak)〉のフィルムはどちらかというと「黄色っぽく転ぶ」とよく言われます。一方、〈富士フイルム〉は黒が黒としてちゃんと締まって写る感覚です。色味が転ぶとしても青っぽい方向に転ぶのがすごく好きで、それがどこか日本の風景にとてもなじんでいるように感じます。

—— 濵本さんは以前も〈富士フイルム〉のデジタルカメラを使われていたそうですね。濵本さんにとって〈富士フイルム〉とはどういうカメラメーカーですか?

濵本: 高校3年生のときにはじめて個展をやることになり、その展示風景をデジタルできれいに記録しておきたくて、バイト代ではじめて「Xシリーズ」のミラーレス一眼を買いました。当時は周りにデジカメについて相談できる友達もいなくて、自分ですべて決めなければいけなかったのですが、選んだ決め手が「フィルムカメラに近い操作感とボディのデザイン」でした。〈富士フイルム〉のカメラは中身が最新のデジタルであっても、ダイヤルでマニュアル操作ができたり、ボタンの形や配置がアナログのフィルムカメラと共通していたりして、手触りとしてすごくなじみやすかった。

そして何より、〈富士フイルム〉が持つ「色」が一番好きです。デジタルカメラはメーカーによって肌の色の出方が全く違いますが、〈富士フイルム〉のカメラは黄色に変に転ぶことがなく、人間の肌がそのまま、青みがかった透明感を持ってきれいに写る。変に脚色されていないその色味がとても気に入っています。

—— 今日は実際に〈富士フイルム〉の最新のデジタル中判カメラ「GFX100 II」を使って撮影してもらいましたが、いかがでしたか?

濵本: 描写が緻密で、もはや「人間の目を超えている」光景が写ると圧倒されました。あえてピントの合う範囲をものすごく狭くして、髪の毛をパッと写してみたのですが、髪の毛一本にだけカチッとピントが合って、それ以外がふわっときれいにボケていく。

今日はロケ地が浜辺でよかったです。水滴や波紋の一つひとつ、そして砂浜のさまざまなテクスチャーのすべてを、このカメラが逃さずに捉えている感覚がモニター越しにも伝わってきました。

Photo_Kanade Hamamoto

Photo_Kanade Hamamoto

Photo_Kanade Hamamoto

Photo_Kanade Hamamoto

この4枚は濵本さんが「FUJIFILM GFX100 II」で撮影した写真。おそらくこれまで何回も見てきたであろう夕暮れを、はじめて見るかのように写真の美しさに彼女が感嘆していたのが印象的だった。

—— フィルムの独特な揺らぎや不完全さが濵本さんの本来の作風のベースにあると思うのですが、これほどまでの「超高解像度」を誇るデジタルカメラを手にしたとき、今後どんなものを撮ってみたいですか?

濵本: このカメラで、ポートレートを撮ってみたいとすごく思いました。メーカーのリファレンス作品を見ると、やはり滝や山といった雄大なランドスケープ写真が多いのですが、私はあえてこのカメラでおばあちゃんとかを撮ってみたい(笑)。刻まれたしわの質感など、すごく味のあるユニークなポートレートが撮れるんじゃないかと思っています。

大自然のような情報量が最初から多い場所でそのすべてを留めるのも面白いのですが、あえて背景に情報がない室内のスタジオなどで、しっかりとつくり込んでひとを撮ってみたいです。人間の瞳への光の入り方、まつ毛の1本、肌の細かい表情のシワまでをこのカメラで極限まで描写したら、どうなるんだろうという興味があります。

CAMERA

FUJIFILM GFX100 II

約1億200万画素の大型ラージフォーマットセンサーを搭載したミラーレスカメラ。最新の「X-Processor 5」により、AI被写体認識AFや最大8.0コマ/秒の高速連写を実現した。さらに、最大8段の強力なボディ内手ブレ補正や8K/30p動画撮影にも対応し、静止画・動画ともに圧倒的な描写力を誇るフラッグシップ機。高精細な中判カメラだが、ボディ単体で約867gと機動力も高い。

INFORMATION

FUJIFILM GFX100 II

オフィシャルページ

富士フイルムデジタルカメラサポートセンター

電話:0570-04-1060
受付時間:10:00~17:00(日曜、祝日を除く)

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