第四講 阿部孝史
「初見だったベージュボディ × イエローライニングのブルックスレンジ。」

THE NORTH FACE BROOKS RANGE
阿部:ぼくのひとつめは〈ザ・ノース・フェイス〉が1977年に発表して’90年代まで継続展開されたダウンパーカ「ブルックスレンジ」のレアカラーです。一般的にはネイビーやブルーボディ+イエローライニングかイエロー単色が多いと思うし、ぼく自身ネイビーとイエローを持ってはいたんだけど、このベージュボディ × イエローライニングは初めて見て。
今野:こんな配色もあるんですね? どこで買ったんですか?
阿部:eBayだね。しかも言うほど高くもなくて。


栗原:使っている素材によってモデル名が違うんですよね、確か。
阿部:そうそう。リップストップナイロン仕様が「ノース・フェイス パーカ」で、65/35クロス仕様が「ブルックスレンジ」みたい。それに前者はフードが別売り、一方後者はデフォルトでフード付きだったみたいね。だからリップストップのタイプはフードなしを結構見かけるんだよね。
栗原:あと、比翼を留めるベルクロの形状にも丸と四角があって、そこにも何かしらの変遷があると訊きましたが。

阿部:確か後期モデルは四角で前期モデルが丸だったと思う。クリくんとか裕くんでもこの配色は初見なの?
藤原:いや、初めてですね。
栗原:同じく。でも、〈ザ・ノース・フェイス〉の他のモデルだったら、ベージュボディって一般的じゃないですか。なのになぜ、この「ブルックスレンジ」だけ、こんなに見かけないんでしょうね?
今野:タグとか見る限りでもサンプルではなさそうだし。
阿部:前に誰かから訊いたんだけど、この頃は、カタログ未掲載のカラーを店頭のみで販売したり、遠征隊仕様や従業員がオリジナルで作ったものもあったみたい。
今野:へえ。そうなんですね。

阿部:もちろんダウン自体好きなカテゴリーなんだけど、ずっと探し続けているのは「ブルックスレンジ」だけかも。〈エディバウアー〉の「カラコラム」(1953年にカラコラム山脈K2登頂を試みた登山隊に向けて開発されたダウンパーカ)とかも持ってはいたけど、結局手放しちゃったし。
藤原:そうですよね。ぼくの中でも「ブルックスレンジ」=阿部さんって印象ですもん。
「正規品にはない配色と仕様。
シティレインコートのサンプル品はレアかと。」

’94y patagonia CITY RAIN COAT SAMPLE
阿部:2つめは〈パタゴニア〉の「シティレインコート」(『古着サミット2』参照)。このモデルも長年好きで愛用し続けているけど、この配色は初見だった。どうもサンプルみたいなんだけど。
藤原:はい(笑)。ウチのブログを見た阿部さんから、早速電話がありまして。
阿部:ホントにありがとうございます! 正規品にはない配色だし、裏地がメッシュだったり仕様も若干違っていて。


栗原:そもそも表地も違いますよね。それに、タグには「F94、95」と記されているので’94年秋冬にリリース予定だったんでしょうけど、「シティレインコート」ってそのタイミングではもうつくられてなかったですよね? 確か’90年代初頭くらいまでだったかと。
阿部:そうだね。おそらくこのサンプルはその後継機として開発途中にドロップしたんだろうね。でも、しっかりタグに「City Rain Coat」と記載されてるのもイイよね。

栗原:「Fabric Wear Test」の記載があるので、モデルは関係なく生地自体の実用性をテストしていた可能性もありますね。
今野:サンプルとはいえ、デッドストックではなさそうですよね。
阿部:着た形跡はあるね。正直、普段着るにはかなり大きめなんだけど、こんなに珍しくてキレイな配色はまず出てこないと思って。
栗原:確かに。「ベビーレトロカーディガン」(’90年代初頭にリリースされたジップアップパイルジャケット)みたいに〈パタゴニア〉らしいパープルですよね。

藤原:そうですね。「ダスパーカ」を筆頭に、〈パタゴニア〉の数ある配色の中でもパープルはやっぱり別格ですよね。
栗原:パターンは正規品と一緒ですか?
阿部:たぶん一緒だと思うよ。
「フード付き、ブランケットライナー付き、おまけにハートタグまで付いた
カーハートのカバーオール。」

‘50s Carhartt COVERALL WITH HOOD
阿部:3つめは〈カーハート〉のフード付きカバーオール。「サンタモニカ表参道」で買ったもので、決め手は何よりフードが残っていたこと。前開きが4つボタン仕様だし、年代は’40sか’50sだよね?
藤原:デカボタンなら間違いなく’40sですが、これはおそらく’50年代ですね。中のブランケットライニングが当時の「ストームライダー」(リーが継続展開するコード襟のライニング付きデニムジャケット)と全く同じ柄なのと、ブランドタグにサイズ表記が入るのは基本的には’50年代に入ってからなので。


今野:フードは別売りオプションだったんですかね?
栗原:どうなんでしょう。現行品でも別売りなものも一部ありますし、その可能性がないとは言えないでしょうね。ただ、阿部さんのはフード側のタグも同じハートマーク時代だし色味も合ってるので、別売りにせよ元のオーナーが同時期に付けて着用してたものですよね。

藤原:ウチでもこの時代のフードだけ2つほど在庫していて、ボディが出てきたら使いたいとずっと思ってはいるんですが、何年経とうが全く出てこなくて。
栗原:じつはぼくも今日のネタ候補として、ほぼ同じモデルの’60sを持ってきたんですが、こんなの出されたらホントに出さなくてよかったなと。もちろんフードも残ってないですし(笑)
一同:(笑)
藤原:あと、フードが付属するのはブランケットライニングが付いたモデルだけなので、より出づらいと思うんですよね。
阿部:なるほどね。

栗原:ぼくが持ってきた’60sのものと比べるとやはりこの年代の方がブラウンダックの色味も全然濃いですね。
阿部:そうね。よりチョコレートブラウンぽい感じだよね。
「好きなマリンモチーフは、
ダブってもとりあえず買うようにしています。」

’50s-‘60s HANDKERCHIEF MARINE MOTIF
阿部:最後は好例のバンダナ、というか今回はハンカチーフなのかな。タグやフラッシャーなどがないにせよ、柄や仕様からおそらく’50~’60年代頃のもの、さらにマリンモチーフのもので選んできました。
藤原:ハンカチーフとバンダナの大きな違いって何なんでしょう?
阿部:やっぱり生地感とサイズかな。

今野:毎回思うんですが、こういうレアなものをどこで見つけてくるんですか?
阿部:いろいろだけど、このマリンモチーフに関してはネットオークションが多いかな。星、アンカー、ヨットと、好きなモチーフがたくさん使われているので、気にして集めているんだけど。
栗原:この色落ちしているやつは、’50sや’60sよりも旧そうですけどね。
阿部:そうね。これは旧いかも。
栗原:それにコットン100%ではなさそうな生地感だし、スカーフとして販売されていた可能性もあるでしょうね。


阿部:うん。しかも大半が白、赤、ネイビーのマルチカラーで。とりあえずダブったにしても出れば買うようにしていて。
藤原:特定のブランドとかあるんですか?
阿部:それが袋もタグもフラッシャーもないからわからないんだけど、同柄色違いともかもあるから、さらに調べればいずれ特定できるのかもね。普段使いはしないにせよ、これもさっき裕くんも言っていた、ひとつのアートピースだと思って集めてる感じかな。

藤原:いくらぐらいするものなんですか?
阿部:そんなに高くないよ。でも、うちの奥さんがコレを読むかもしれないから、後ほど個人的に(笑)
一同:(笑)