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THINK ABOUT FASHION vol.2新時代を予感させる10のファッショントピックス。
MONTHLY JOURNAL SEPT.2020

THINK ABOUT FASHION vol.2
新時代を予感させる10のファッショントピックス。

ちょっと先の未来において、2020年のファッションシーンはどのように語られるのでしょうか? ポストコロナ時代の新しいアプローチを予感させる動き、従来とは少し違う意味を持ちはじめた “コラボレーション”、進化するデジタルテクノロジーを活用した取り組み、顕在化した環境問題やサスティナビリティへの意識の高まり…。いずれもパンデミックが起こる前から動いていたプロジェクトですが、新型コロナを契機とするぼくたちの生活感覚の変化とともにスポットライトが当たりはじめました。ここではそんなこれからのファッションを予見するような10のトピックスをクローズアップ。

  • Photo_Hiroyuki Takashima, Yoshio Kato
  • Text_Tatsuya Yamaguchi
  • Edit_Ryo Muramatsu

TOPIC 02 コラボを介してアートと出合う。コム デ ギャルソン・シャツが蘇らせたのはフューチュラの25年以上前の名作。

現代のカルチャーにおいて、ファッションとアート、あるいは、デザイナーとアーティストの関係はますます親密になっています。アートのエネルギーを宿したプロダクトが生活の中に浸透していくにつれて、これまで以上に芸術を身近に感じられるようになってきました。コラボの可能性が探求され続けてきたからこそ、これからも方法をアップデートさせながら拡張されていくはずです。また、ちょっと見方を変えると、両者のコラボレーションを通してブランドやアーティストと出合うことがあります。たとえば、〈ラフ シモンズ〉を介してスターリング・ルビーの存在を知るといった具合に、作品と触れる好機を得る。そういう意味では、コラボレーションには “キュレーション” の意味もあるのかもしれません。

ファッションとアートのコラボレーションの先駆けといえば〈コム デ ギャルソン〉です。2020年秋冬コレクションでフィーチャーしたのは、グラフィック界のレジェンド、フューチュラ(本名はレナード・ヒルトン・マクガー)。彼が25年以上前に描いたという3つのペインティングが、〈コム デ ギャルソン・シャツ(COMME des GARÇONS SHIRT)〉に施され、新しいかたちで蘇りました。刺激的なアートワークを身に纏う喜びもありますが、きっとフューチュラは自分の作品が時を超え、新しい世代の目に触れることを喜んでいるような気がします。

「コム デ ギャルソン」社と組んだ2度目のコラボのラインナップは、コーチジャケットやロングスリーブTシャツ、Tシャツ、PVCバッグなど計12型。1970年代にストリートアートへの過激なアプローチによってグラフィティ界に革命を起こし、さまざまなコラボでも広く知られるフューチュラ。今回の商品には彼のアイコン「ポイントマン」の姿も。写真上からシャツ ¥107,240+TAX、Tシャツ ¥13,720+TAX、トートバッグ ¥43,120+TAX(コム デ ギャルソン/電話:03-3486-7611)

TOPIC 03 1型の服が無限の可能性を秘めるイシューシングス。

今年設立された〈イシューシングス(ISSUETHINGS)〉というブランドをご存知でしょうか? ファーストシーズンの今季は、たった3型のミリタリーのエッセンスが香るアウターのみ。そのざっくりとした見た目は一見未完成のようにも見えますが、実は染めやダメージ加工によるデザイン違いのものを揃え、好きなものを選んでもらうという特殊な方法を取っています。初回のテーマは「revolve」。このワンワードが示す通り、1型の服がさまざまな “展開” を見せました。

類を見ないアプローチについてデザイナーのワタナベさんに話を聞くと「服だけでなく、全般的にいえることですが、何かの拍子にそのものの印象がガラリと変わることがあると思います。今回は加工しただけでここまで違って見えるのはなぜなのかと、皆さんに問いかけるような思いでつくりました」。さらに、今季はさまざまなセレクトショップと積極的に組んだ別注アイテムも見どころのひとつ。なかでも東京・代々木上原の「JOHN」がオーダーしたものには、インラインにはない黒の生地を通常の3倍のインクを使ってグリーンに染める加工が施されました。「黒を染めるという発想はなかったので、別注だからこそ生まれた」とそのクリエーションの背景を教えてくれました。

「何のためにつくっているのか分からないのですが、謎の製作意欲は日々湧いてきます」とワタナベさん。ただ、“issue(問題)” を内包したピースに対峙して、何かしらのアクションが自分のなかに生まれる。それが加工という選択であり、服とのコミュニケーションでもあるということはある種、いままでなかった新しいアプローチかもしれません。現在は「服をつくることによって、世の中との距離をはかれることに面白さを感じています。製作物への反応や意見を観察し、立ち位置などを確認している」と言う通り、まだまだ模索しながらブランドの形を追求していることが伝わってきます。来シーズンはまた違ったアプローチでコレクションを発表するというから期待が膨らみます。

写真は「type2」という、4つポケットが配されたロング丈のジャケット。無加工のニュートラルなプロダクトの状態に、染め、ダメージなど異なる加工が加えられ、表情に変化をもたらしている。写真は上から無加工 ¥55,000+TAX、黒染め ¥69,500+TAX、ダメージ&リペア ¥105,500+TAX、ダメージ&カットオフ ¥66,000+TAX(イシューシングス/インスタグラム

代々木上原のセレクトショップ「JOHN」で発売中のモデル。インラインには展開のない黒のボディをグリーンで染める加工が施されている。(ジョン/インスタグラム

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