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THINK ABOUT FASHION vol.2新時代を予感させる10のファッショントピックス。
MONTHLY JOURNAL SEPT.2020

THINK ABOUT FASHION vol.2
新時代を予感させる10のファッショントピックス。

ちょっと先の未来において、2020年のファッションシーンはどのように語られるのでしょうか? ポストコロナ時代の新しいアプローチを予感させる動き、従来とは少し違う意味を持ちはじめた “コラボレーション”、進化するデジタルテクノロジーを活用した取り組み、顕在化した環境問題やサスティナビリティへの意識の高まり…。いずれもパンデミックが起こる前から動いていたプロジェクトですが、新型コロナを契機とするぼくたちの生活感覚の変化とともにスポットライトが当たりはじめました。ここではそんなこれからのファッションを予見するような10のトピックスをクローズアップ。

  • Photo_Hiroyuki Takashima, Yoshio Kato
  • Text_Tatsuya Yamaguchi
  • Edit_Ryo Muramatsu

TOPIC 05 最新の中国ファッション。パリコレでも発表するリーニン。

パリの「ポンピドゥー・センター」を舞台に、ランウェーショー形式で発表された〈リーニン(LI-NING)〉の2020-21年秋冬コレクション。タイトルは「フューチャーヴィンテージ、スポーツフォーマル」。対義語を組み合わせたこの言葉の通り、さまざまな先入観や常識を覆しながら異なる時代感やスタイルを融合させたクリエーションが目を引きました。初期のビデオゲームの技術にちなんでローファイなグラフィックがアパレル、フットウェア、アクセサリーに施されています。

そもそも1990年にスポーツライフスタイルブランドとして誕生した〈リーニン(LI-NING)〉の創業者は、80年代に中国代表男子体操チームを率いて数多くのメダルを獲得した “体操王子” こと李寧(リーニン)。彼のビジョンと実体験に基づき、30年もの間、プロアスリートやナショナルチームのための製品をつくり続けてきたこのブランドは、2018年からスタートしたファッションライン「プレミアムコレクション」にも力を注いでいます。現在はパリ・メンズファッションウィークでコレクションを発表し、ステファノ・ピラーティによる〈ランダム アイデンティティーズ〉や〈ニール バレット〉とのコラボレーションも展開。トップアスリートに認められた技術力と製法、中国国内の自社工場でつくられるプロダクトのクオリティ、そして、独自の視点を感じさせる変幻自由なデザインアプローチがこれまでの中国のイメージを覆すブランドとして注目を集めています。

目覚ましい経済発展を遂げる中国から登場した〈リーニン〉。写真は2020-21年秋冬コレクションから。新感覚のグラフィックデザインは漢字と英語の組み合わせが新鮮に映る。モダンなフォルムのスニーカーも展開。(リーニン オフィシャルサイト

TOPIC 06 西アフリカ、シエラレオネの物語を綴るラブラム。

かつて奴隷制から解放されたアフリカ系の人々の移住地として開拓された、西アフリカのシエラレオネ。その首都フリータウンに生まれ、キプロスとロンドンの地で育ったのが〈ラブラム(LABRUM)〉のデザイナーであるフォデイ・ダンブヤです。イギリスの「ノッティンガム・トレント大学」を卒業した後、〈DKNY〉と〈ナイキ〉で経験を積んだ彼は、2015年に自身のブランドを設立しました。

ブランド名は、ラテン語で「エッジを持つ」という意味。コレクションの基本となるのは伝統的なブリティッシュミリタリーと自身のルーツである西アフリカのエッセンスが溶け合った、ユニークかつ洗練されたデザインにあります。ダンブヤが掲げるビジョンは、〈ラブラム〉を通して異文化やコミュニティへの理解を深めていくこと。つまり、ファッションを通じていままで多くを語られることのなかった西アフリカの現状を表現することに向けられているのです。

近年では、「LVMHプライズ2019」を受賞した南アフリカ出身のデザイナーが手がける〈テベ マググ〉や日本の〈サルバム〉らが参加し、東京とナイジェリア・ラゴスで「FACE A-J」というイベントが開催されるなど、ファッションを通じてあまり語られることのなかった “アフリカ” というバックボーンから生み出されるクリエーションに注目が集まっています。

〈ラブラム〉の2021年春夏メンズコレクションのアイテムを一足早くご紹介。写真上から厚手のコットンの生地を使ったセットアップ。アンコンのジャケット(¥88,000+TAX)は立体的なパッチポケットに特徴があり、2タックのパンツ(¥59,000+TAX)は程よい太さのストレートのシルエットを描く。フード付きのプルオーバー(¥74,000+TAX)はオリジナルのカモフラージュ柄が新鮮に映る。オープンカラーのショートスリーブシャツ(¥50,000+TAX)は絞り染を思わせるグラフィックがプリントされている。(エスディーアイ/電話:03-6721-1070/ラブラム オフィシャルサイト

〈ラブラム〉は来年開催予定のスポーツの祭典に合わせて、シエラレオネの代表チームの服もデザインしている。独特のグラフィックは国旗の色を用いながら、この国を代表する16の部族への敬意を表したという。写真のスタイリングを担当しているのは、デザイナーのダンブヤの親友でいま注目を集める同国出身のスタイリスト、イブ・カマラ。

TOPIC 07 ジェイエムウエストンによるサステナブルな一点もの。

フランスの老舗〈ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)〉が、シューズを下取りし、再販するリサイクルプロジェクト「ウエストン・ヴィンテージ」を始動しました。各モデルに応じたショッピングクーポンとの交換で回収された靴は、年間1万足が手作業で修理されるというフランス中部のリモージュに構えた工房に運ばれ、一足一足状態を見ながら丁寧にリペアされるというフロー。そして、ソールやインソールが交換され、以前の持ち主が大切に履き込んだ風合いも残ったワンバイワンの “ヴィンテージ” として、新たに呼吸をはじめます。1足の靴がブランドと顧客の間を循環し、確かなリレーションシップを育むプロジェクトは、世代をまたぐサステナブルな取り組みとして成長していくに違いありません。

このプロジェクトで回収されたシューズはまるで新品のように生まれ変わる。日本ではこの秋から販売開始予定で、価格はモノによって異なるが、大体新品の半額程度というからリーズナブル。これに先立ち、日本でも不要になったシューズの下取りがスタート。シグニチャーローファーは15,000円相当、ゴルフは20,000円相当のクーポンと交換。写真はリペアされたゴルフ。¥60,000+TAX(ジェイエムウエストン 青山店/電話:03-6805-1691)

TOPIC 08 F/CE.®の山根敏史が手掛けるセーブ・ザ・ダックのカプセルコレクション。

2015年から今日までに1,800万羽以上のアヒルを救い、17年から今日までに230万本以上のペットボトルをリサイクル使用──。動物や地球を愛し、“素材” のところからサスティナブルなあり方を推し進めるイタリア・ミラノ生まれのアウターブランド〈セーブ・ザ・ダック(SAVE THE DUCK)〉は、そのようにレポートしています。そんな彼らが〈エフシーイー(F/CE.®)〉の山根敏史さんと組んで、カプセルコレクションを発売します。そびえる山々や森の神秘性から着想を得たという、美しいフォルムを描くジャケットは、中綿にダウンフェザーの代わりとして、再生ペットボトルを原料としたポリエステル繊維の独自開発素材「RECYCLED PLUMTECH®」を使用。さらに、表地には100%リサイクルのポリエステル素材でつくられた「GORE-TEX®」を採用。これからの時代に相応しい、機能性にも優れたアウターに仕上がっています。

今回のカプセルコレクションはメンズとウィメンズの製品をラインナップ。ここでピックアップしたアウターのうち、最初の3型はメンズモデル。最後の1型は男性でも着れるウィメンズモデル。コート ¥114,000+TAX(1枚目)、ブルゾン ¥114,000+TAX(2枚目)、ブルゾン ¥81,000+TAX(3枚目)、コート ¥78,000+TAX(4枚目)(帝人フロンティア/電話:03-6402-7739)

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