TOPIC 09 拡大し続けるeスポーツにあのファッションデザイナーが新風を吹き込む?
新型コロナの影響でeスポーツへの関心が高まっています。競技人口は年々増加し、いまではその数、世界に1億人以上。グローバル規模の大会も、世界中で繋がるデジタルコミュニティが生み出す未来のエンターテインメントの場として、かなり盛り上がりをみせています。とはいえ、ファッションとの関わりはまだまだ希薄。しかし、eスポーツイベント「RAGE ASIA 2020」のオフィシャルTシャツを「ビームス」がデザインし、VR上のアバターが同じTシャツを着ることができたりと、新しいアクションは確実に生まれています。そんななかでも、ジャンルを横断するコラボレーションの旗手であるヘロン・プレストンが、世界的なeスポーツ団体「ジェン・ジー(Gen.Z)」のエグゼクティブ・ブランド・アドバイザーに就任したことで、様相は変わっていくかもしれません。限定アイテムのデザインを手掛けるだけでなく、運営全般におけるアドバイスやカウンセリングも行っていくとのこと。ファッションデザイナーのアイデアがeスポーツをどのように進化させていくのか、目が離せません。
PROFILE
ファッションデザイナー。1983年サンフランシスコ生まれ。ニューヨークの「パーソンズ・スクール・オブ・デザイン」でデザインと経営を学び、2008年に経営学士号を取得。その後、〈ナイキ〉で働きつつ、アート集団「ビーン・トリル」の一員としても活動。17年に自身の名を冠したブランドを設立。DJ、コンサルタント、アートディレクターなど多彩な顔を持つ。
www.heronpreston.com
TOPIC 10
GR8の久保光博が目を向けたのは日本。
ディーゼルがつくる異色のカプセルコレクション。
PROFILE
セレクトショップ「GR8」のオーナー兼バイヤー。2017年には「BOF 500」に選出されるなど、これまで培ってきたカルチャーをバックボーンに、ファッション界に刺激を与え続けている。
〈ディーゼル(DIESEL)〉が東京を代表するセレクトショップ「グレイト(GR8)」とのコラボレーションを発表しました。ただ、これは世間で良く目にするコラボではありません。「GR8」のオーナー兼バイヤーの久保光博さんがキュレーションし、日本のインディペンデントマインド感じる個性的な8組のデザイナーとアーティストをセレクト。それぞれのアートワークが〈ディーゼル〉の服に新たな息吹を吹き込みました。この刺激的なカプセルコレクションはどういう経緯から生まれ、なぜ日本のアーティストをクローズアップしたのか。このプロジェクトを指揮した久保さんに尋ねました。
ー 来日した〈ディーゼル〉の創始者、レンツォ・ロッソ氏との出会いがきっかけとなったという今回のコラボレーション。改めて、プロジェクトのコンセプトを教えて下さい。
40年を超える伝統と歴史のあるブランドとのコラボレーションを、ただの商業的なものではなく、レンツォ氏の足跡を辿るようなプロジェクトにしたいという思いが、そのままコンセプトになっています。現在の同社の規模からは想像もできない、創生期を想起させる彼の努力や、これまでの軌跡を感じてもらえる企画にしたいと思いました。ここまで自由にさせてもらえたことはいまの「ディーゼル」社の規模からすれば普通あり得ません。しかし、それこそがカルチャーであり、それを〈ディーゼル〉を通じ表現することが大きなテーマになっています。
ー 日本で活躍するデザイナーやアーティストに声をかけた理由を聞かせて下さい。
もともとは今年8月のドロップを予定していました。世界的なスポーツの祭典の開催都市が東京ということもあり、ここ日本から、日本人として世界に発信できる場を頂きました。〈ディーゼル〉を通じて、「GR8」を知ってもらう機会にもなればという思いもあったので、自分の気持ちをしっかり自分の言葉で伝えることのできる日本人のクリエイター、尚且つ、今回の主旨を理解して真っ直ぐに汲み取ってくれる方たちを選ばせてもらいました。
ー 〈ディーゼル〉のデニムジャケットやスウェット、Tシャツをベースに、写真、イラスト、カリグラフィー、タイポグラフィーといったさまざまな手法が用いられました。それぞれのクリエイターと、どのようなプロセスでデザインしていったのでしょうか?
まずは、私と〈ディーゼル〉で決めたデザインのベースになるスタイルを10型ほど選びました。その中から、各ブランドさんにスタイルを選んで頂き、自由にデザインしてもらいました。私はデザイナーでもクリエイターでもありません。各ブランドさんやデザイナーさんに敬意を払い、彼らの個性が100%出るようにデザインにおける規制は設けませんでした。ここでは、私のバイヤーとしての意見も一切声に出していません。
ー コラボレーションは、これからのファッションやカルチャーシーンにおいてどのような未来を描いていくとお考えでしょうか?
コロナが深刻になる以前から進んでいた企画ではありましたが、結果として、コロナにより世界は分断されました。私も月に1、2回は海外に出向くことが多かったのですが、もう6ヵ月も日本から出ていません。各国がそれぞれ鎖国状態にあるいま、グローバル企業として世界を理解する必要があります。ソーシャルメディアだけでは限界もあり、それぞれの国の発信するファッションを、遠く離れたところから理解することは非常に難しいものになっています。このコラボレーションは、現行のリアルなアジアのファッションの動向やマーケットをイタリア、そして世界にダイレクトに発信しています。以前の様には世界中を行き来できないいま、こういったグローバルなブランドとのコラボレーションは非常に有意義であり、お互いがお互いを理解するのに最適なプロジェクトなのではないでしょうか。企業の規模に関係なく手を取り合うことで、そのシグナルは大きくなり、それがまたカルチャーへと成長していくと思います。