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いわく付きの物語は映画になり得るか。『DUNE/デューン 砂の惑星』を観た、デザイナー二人の視線。
That dune stir someone's feelings.

いわく付きの物語は映画になり得るか。
『DUNE/デューン 砂の惑星』を観た、デザイナー二人の視線。

原作となった小説『デューン/砂の惑星』は恐るべき怪物だ。映画監督としていまや大いなる名声を獲得したリドリー・スコットとアレハンドロ・ホドロフスキーは戦う前に挫折し、ようやくつくられたデヴィッド・リンチ版の『デューン/砂の惑星』は本人も認める黒歴史となった。映画界、いや人類悲願でもある『デューン』の映画化がいよいよ実現された。監督は『メッセージ』『ブレードランナー 2049』を手がけたドゥニ・ヴィルヌーヴ。デザイナー、美術、衣装、俳優など、現代の才能が結集したこの壮大なる映画の魅力をひとかけらでも掬い取りたく、メカニックデザイナーの出渕裕さん、フイナムの映画連載でもおなじみのグラフィックデザイナー大島依提亜さんのお二人に映画を観る “目” を借りることにした。

  • Photo_Kaori Nishida
  • Text_Shinri Kobayashi
  • Edit_Yuri Sudo

画を通して語る、この世界のテクノロジーレベル。

ー ガジェットなどSFとしてのデザインはどうでしたか?

羽ばたき式飛行機のオーニソプターが印象的でしたね。原作にも羽ばたくガジェットとして出てくるオーニソプターをイメージすると、鳥のように羽ばたくのでしょうが、やはり難しい。そこをヴィルヌーヴは昆虫系の羽ばたきで見事に視覚化してくれました。そのあたり含めて彼は逃げずによくぞやってくれたと思います。原作愛を感じました。

原作にも挿絵はあるとはいえ、読者はこまかなところではどんなデザインか想像力を働かせるじゃないですか。そういった多くのひとのイメージと彼のイメージが乖離することなく、両者の最大公約数的なものがちゃんと画面に写っていたと思いますね。宮崎さんの『天空の城ラピュタ』でもオーニソプターは出ていましたよね。あれも小説『デューン』を読んでやりたくなったのかも。ちなみにリンチ版では羽ばたかないオーニソプターが出てきます(笑)

ー リンチ版はそのあたりのデザインがちょっと…というひとも多いですよね。

リンチはやっぱりねちっこいアングラな感じがしますが、ヴィルヌーヴはおしゃれできれい、洗練されている。どこか育ちの良さを感じます。まあリンチ版もいま見ると愛おしいんですけどね。

ー 特にSFというジャンルでは、そういった科学、テクノロジーが表現されたデザインが映画の評価を左右することもあります。

この映画が描く科学的なことのなかには、現実ではそうじゃないだろうということもあると思うんです。たとえば砂漠のなかで精密機械であるはずのオーニソプターを使うところとか。でも、こまかな点ではリアルと反しているかもしれないけど、原作設定を咀嚼しつつビジュアルの力でそういう疑問をねじ伏せてくれる。

あとは、戦闘時のシールドのダメージ表現とかメランジの採掘機を浮遊させ脱出する方法とか、ちゃんとメカニカルとしてどうかを映像として描いていて、それがこの世界のテクノロジーのレベルがどれくらいかを自然に観客がわかるようにしています。しかもそれを台詞ではなくて、メカデザインやその運用を通して体現している。そこに非常に好感が持てます。

INFORMATION

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』

全国公開中
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:エリック・ロス ジョン・スペイツ ドゥニ・ヴィルヌーヴ
原作:『デューン/砂の惑星』フランク・ハーバート著(ハヤカワ文庫刊)
出演:ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ステラン・スカルスガルド、ゼンデイヤ、シャーロット・ランプリング、ジェイソン・モモア、ハビエル・バルデムほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
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