画を通して語る、この世界のテクノロジーレベル。
ー ガジェットなどSFとしてのデザインはどうでしたか?
羽ばたき式飛行機のオーニソプターが印象的でしたね。原作にも羽ばたくガジェットとして出てくるオーニソプターをイメージすると、鳥のように羽ばたくのでしょうが、やはり難しい。そこをヴィルヌーヴは昆虫系の羽ばたきで見事に視覚化してくれました。そのあたり含めて彼は逃げずによくぞやってくれたと思います。原作愛を感じました。
原作にも挿絵はあるとはいえ、読者はこまかなところではどんなデザインか想像力を働かせるじゃないですか。そういった多くのひとのイメージと彼のイメージが乖離することなく、両者の最大公約数的なものがちゃんと画面に写っていたと思いますね。宮崎さんの『天空の城ラピュタ』でもオーニソプターは出ていましたよね。あれも小説『デューン』を読んでやりたくなったのかも。ちなみにリンチ版では羽ばたかないオーニソプターが出てきます(笑)
ー リンチ版はそのあたりのデザインがちょっと…というひとも多いですよね。
リンチはやっぱりねちっこいアングラな感じがしますが、ヴィルヌーヴはおしゃれできれい、洗練されている。どこか育ちの良さを感じます。まあリンチ版もいま見ると愛おしいんですけどね。
ー 特にSFというジャンルでは、そういった科学、テクノロジーが表現されたデザインが映画の評価を左右することもあります。
この映画が描く科学的なことのなかには、現実ではそうじゃないだろうということもあると思うんです。たとえば砂漠のなかで精密機械であるはずのオーニソプターを使うところとか。でも、こまかな点ではリアルと反しているかもしれないけど、原作設定を咀嚼しつつビジュアルの力でそういう疑問をねじ伏せてくれる。
あとは、戦闘時のシールドのダメージ表現とかメランジの採掘機を浮遊させ脱出する方法とか、ちゃんとメカニカルとしてどうかを映像として描いていて、それがこの世界のテクノロジーのレベルがどれくらいかを自然に観客がわかるようにしています。しかもそれを台詞ではなくて、メカデザインやその運用を通して体現している。そこに非常に好感が持てます。