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着ぶくれ手帖 〜金子恵治のファッション備忘録〜 2022年夏のバイイング日記 第三回 アメリカ編

着ぶくれ手帖 〜金子恵治のファッション備忘録〜
2022年夏のバイイング日記 第三回 アメリカ編

ファッションディレクターの金子恵治さんの、久しぶりの海外出張を追いかけた連載「2022年夏のバイイング日記」もいよいよ最終回。アメリカ大陸に上陸です。東のニューヨークに、西のロサンゼルスとサンフランシスコ。これまた旅がしたくなる極上のレポートとなっております。

  • Photo_Keiji Kaneko
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Komuta

人と人が有機的につながっていく。

ーニューヨークでの買い付けは「ものづくりをメインに、人ともコラボする」というテーマで臨まれたそうですね。

金子:はい。それでまず会ったのが、もともと〈ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)〉にいたアーチュロさんで、ラルフ・ローレンさんの右腕的な存在だったんです。いまはブルックリンに小さな工場をつくって、いろんなブランドのコンサルティングやディレクションをしているんですけど。

ー有名な方なんですか?

金子:ニューヨークでは有名ですね。彼にディレクションに関する考え方を聞いたんですけど、やっぱりすごく軸がしっかりとしているというか、基本に忠実な人なんですよ。そういうことって、ぼくらが忘れかけていたことだったりするので、とても勉強になりました。

ーこのアーチュロさんとは一緒になにかするんでしょうか?

金子:一緒にするというよりは、この人の工場で「レショップ」とのコラボラインをつくることになりました。デニムでリメイクしたハンティング系のアイテムを仕込んでます。

ー続いてこちらは〈ユッタ ニューマン(Jutta Neumann)〉ですね。

金子:〈ユッタ ニューマン〉は以前、シューズが完成する手前の段階のアイテムを別注したことがあって。完成品ももちろんなんですけど、その前の段階もすごく美しいなと思ったことがあるんです。それで今回もそういうオーダーをしました。前回よりもラインナップを広げてやる予定です。ユッタさんは頑固な人なんですけど、また受けてくれたのがうれしかったですね。

ーこちらは〈ギットマンブラザーズ(GITMAN BROS)〉です。

金子:フランスの〈ハートフォード〉のシャツを持っていったんですが、なかなか話がうまくいかず、結果的にシャツはつくれませんでした。熱意と情熱を持って僕たちのストーリーを伝えて、その熱量は理解してくれていたんですけど、〈ギットマンブラザーズ〉としてはできないということで。でも勉強になりましたね。

ーこれも〈ギットマンブラザーズ〉のシャツですか?

金子:はい。これは映画の広告をプリントしてるんです。〈ギットマンブラザーズ〉はやっぱりこういう柄物がすごくユニークなので、「レショップ」で別注を企画してます。こういう生地ってマーケットに行けばあるようで、実際にアメリカ出張中に見つけたりもしたんですけど、その生地も購入して別注商品を店頭に並べる際に、VMD用に使ったらいいかもと考えたりしました。

金子:そしてニューヨークからクルマを運転して、ニュージャージーにも行きました。ミリタリーの大きい倉庫があるんですけど、そこでは軍モノのアイテムの生産もしていて、軍の仕事がない暇な時期はオーダーも受け付けているということでした。

ーなにか仕込んでいるんですか?

金子:ニューヨークに「デイブス(DAVE’S)」というワークウェアの専門店があるんですけど、そこで買ったアイテムを題材にして、ミリタリー工場がつくるワークウェアみたいなものを仕込んでます。ディテールはワークウェアなんですけど、生地は軍モノのアイテムでよく見るリップストップを使ったりしたらおもしろいかなと思って。

ー続いて、こちらのブランドはなんというブランドですか?

金子:マノニク(Manonik)〉という日本人アーティストの服ですね。ニューヨークにある美術館でも作品が飾られているようで、ニュージャージーに拠点を移したそうなんです。最近どんどん家賃が上がっているようですね。この人はアーティストが集まるビルの一角にアトリエを構えていました。そこに織機があって、自分で見つけてきた糸で生地を織って、自分で縫って服をつくっているんです。

ーすごく繊細な服というのが、写真から伝わってきます。

金子:完全に特殊な服でアートピースですね。本当に天才だと思います。

ーニュージャージーはいま盛り上がっているんですか?

金子:アーティストの人たちがみんな移っていってるという話を聞きました。もしかしたらコロナの影響もあるのかもしれません。ニューヨークよりは静かだし、家賃も安いということで。クルマをちょっと走らせればすぐにニューヨークまで行けるので、利便性も悪くないですし。

ーこちらはレザーのボックスなどをつくっているブランドですか?

金子:まるで工具入れのようなバッグをつくっていたり、インテリア向けのレザー製品などをつくっているブランドです。うちのPRなどをやっているスタッフが見つけて、やりたいと言っていて。こういうアイテムを僕らがどうやってファッションに落とし込むかということを考えるのも、自分たちの役割かなと考えているんです。 ただ仕入れて売るだけじゃおもしろくないので。それでインテリア家具のような形に落とし込んだらいいんじゃないかということで、富士山のような形にして別注しています。

ーニューヨークもニュージャージーも、やはりいろんなカルチャーがミックスされている感覚はあるんですか?

金子:自分たちができるビジネスを、みんなそれぞれがやっているという感じがしますね。その原点にはやっぱり“好きだから”という気持ちがあって。それで人と人がつながっていきながら、おもしろいものが生まれている感じはします。

INFORMATION

金子恵治インスタグラム
金子恵治ブログ
旧金子恵治ブログ(着ぶくれ手帖)

一ヶ月にわたる今回のバイイングトリップで買い付けたアイテムの数々を、一堂に集めて展示販売する「ワールドバザール」が開催されます。国籍やジャンルも多種多様。日本ではなかなか見かけることのない珍品が揃います。ぜひお出かけください。

WORLD BAZAAR

会期:12月23日(金)〜12月27日(火)
会場:レショップ 青山店
住所:東京都港区南青山3-17-3
営業:11:00〜20:00

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