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ディレクター吉川基希と共に編む、BEAMSの解体新書。 第8章「スチャダラパーBoseに聞く、ベーシックを貫くことの大切さ」
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ディレクター吉川基希と共に編む、BEAMSの解体新書。 第8章「スチャダラパーBoseに聞く、ベーシックを貫くことの大切さ」

いま再び盛り上がりを見せる2000年代のファッション。今季の「ビームス(BEAMS)」も「Y2K」をテーマに、90年代を経て生まれた2000年代のカルチャーに焦点を当てたものづくりがされています。そうして誕生したウェアの数々には、どんなビハインドストーリーがあるのか? メンズカジュアル部門のディレクター、吉川基希さんとともに、今季のオリジナルアイテムの攻略法を探ります。
今回のゲストは、日本のヒップホップシーンの金字塔的存在である「スチャダラパー」のBoseさん。1990年代から2000年代にかけての話をたっぷりとしてもらいながら、自身のファッション観についても語ってもらいました。Boseさんと「ビームス」の相性やいかに!?

  • Photo_Teppei Hoshida
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Yuri Sudo

スチャダラパーは、みんな一旦諦めてます(笑)

ーBoseさんは「スチャダラパー」として何度か「ビームス」とコラボレーションされてますよね。

Bose:いろんなことを一緒にやらせてもらってますよ。

吉川:「ビームス・ジャパン」でコラボしていただきましたよね。

Bose:あとは「トーキョー カルチャート by ビームス」とかね。

ー「ビームス」に対して、どんな印象をお持ちですか?

Bose:むかし、渋谷のファイヤー通りにお店がありましたよね?

吉川:ありました。「ビームス」の歴史の中でも超初期の頃ですね。

Bose:80年代ですよね? ぼくがまだ学生のときに学校が渋谷にあって、その通学路に「ビームス」があったんですよ。それで寄ってましたね。自分たちのスタイルに合うカジュアルなアイテムを揃えていて、セレクトショップの中でもとくにおしゃれな印象ですね。

ーどんなアイテムを買ってたんですか?

Bose:いろんなものがセレクトされてて、いろいろ買ってましたよ。ジーパンの形をした、カットソーの生地のパンツとか。当時はDCブランド全盛だったんだけど、他のお店とはちょっとちがうセレクトだったんですよ。メインとはちょっと外れたような服が置いてて。

ーBoseさんのスタイルは、むかしからずっと一貫されているような気がします。

Bose:変わってないようでね、実は変わってるんですよ。多分だけど(笑)。友達に服をつくっているひとたちが多いから、みんながつくるものを「こんな感じかな?」って着ているんだけど、時期によって細くなったり太くなったりして、振り返るといろいろ着ているような気がしますね。それでいまはまた90年代の雰囲気に戻ってる感じ。

ーヒップホップからの影響というのはやっぱり大きいんですよね?

Bose:そうですね。最初はアメリカのラッパーたちが着ているような、いわゆるなスタイルを真似したかったんですよ。だけど、当時は〈チャンピオン〉のトレーナーが売ってない問題があって(笑)

吉川:「リバースウィーブ」ですよね。

Bose:そうそう。ニューヨークだと当たり前にあるんだろうけど、あんまり東京には入ってなかったんですよね。あとは〈ラルフ・ローレン〉とか、〈RRL〉もそうなんだけど。

それで〈ア ベイシング エイプ®︎〉とか、〈ネイバーフッド〉とか、友達がやっているブランドがそれを落とし込んだものを出してくれて。それが自分たちにぴったりで、どんどん着れるものが増えていったんです。

吉川:それは90年代前半から半ばくらいですか?

Bose:そうですね。日本人がデザインしているから、向こうのラッパーたちが着ているものとはちょっとだけセンスがちがうんですよね。だから違和感なく着られて。向こうのものをそのまま着ると、サイズ感とか大きくて、ちょっと気恥ずかしかったりするじゃないですか。だけど、それがないんです。

ー吉川さんはBoseさんであったり、スチャダラパーに対してどんな印象をお持ちですか?

吉川:ぼくは79年生まれなんですけど、Boseさんは69年生まれで、ちょうど10個違いなんですよね。

Bose:その年齢差の先輩って、いちばん近いようで遠い存在ですよね。ぼくの場合、みうらじゅんさんがそうなんですよ。自分たちが高校生のときに活躍して憧れているひとたちって、だいたいそれくらい年齢が離れてますよね。

吉川:まさにそうなんですよ。ぼくが高校1年のときがちょうど94年で、『今夜はブギー・バック』がリリースされた年で。その翌年には『サマージャム’95』が出て、ドンズバなんです。

中学から高校にかけてぼくはスケートをちょっとかじってたんですけど、高校生の頃にみんなスケートのビデオ撮ってたじゃないですか。

Bose:はいはい、みんなやりますよね。

吉川:それで音楽をのせるときに、ぼくの先輩がスチャダラさんの曲をのせてたんです。それがめちゃくちゃかっこよくて。それまでスケートビデオの音楽って、ハードコアとかが多かったんですよ。

Bose:あとはスラッシュとかもね。いつからかヒップホップも混ざるようになって。

吉川:ヒップホップもかっこいいんだけど、ドープすぎて当時の自分たちはまだ馴染めなくて。そこに先輩がスチャダラさんのトラックを入れてて、なんておしゃれな音楽なんだって思ったんです。

Bose:スパイク・ジョーンズが出てきたあたりから、スケートビデオもちょっとおしゃれになったんですよね。

吉川:そうですね。あとはラリー・クラークの映画の『KIDS』とかにも影響を受けて、あれもニューヨークのストリートの話なので、極太のパンツを穿いたり。

Bose:太ければ太いほどいい、みたいなね(笑)

吉川:そうなんです(笑)。だけどその先輩は〈グッドイナフ〉とかを着ていて、それがすごく等身大で、おしゃれでかっこよく見えたんです。

Bose:ちょっと日本的に落とし込まれた感じだ。

吉川:まさにさっきBoseさんが仰っていたような服ですね。ぼくは田舎が新潟なんですけど、すごく東京を感じました。

Bose:ファッションも音楽もそうだけど、海外と同じことをそのままやるのは無理なんですよ。スケートビデオもそうじゃないですか。かっこよく撮りたくても、どうしても背景に商店街が映っちゃう(笑)。だったらもう、その商店街を大事にしたほうがいいですよね。向こうのビデオはパームツリーとかが映ってておしゃれに見えるんだけど、あっちはそれが普通にできる環境があるってことだから。やっぱり、ぼくらなりの翻訳が必要なんですよ。

ーこちらから海外を眺めると、どうしてもおしゃれなフィルターがかかってしまいますよね。

Bose:LAに行って写真を撮ったときにびっくりしたけど、イメージ通りの絵が簡単に撮れちゃうんですよ。それはもう天然だから、日本で同じことは絶対できない。だから、一旦諦める(笑)。諦めてから、自分たちのアイデアを練り直す。ネガティブな意味ではなく、前向きにね。

ぼくらは欧米人みたいにガタイも良くないし、強そうにも見えないから、だったら強く見せようとする必要ないじゃん? っていうね(笑)。むこうのラッパーたちってみんな下げパンしてるんだけど、お尻の形が全然ちがうじゃないですか。脚の長さもちがうし。

吉川:そうですよね(笑)

Bose:アメリカ人はお尻がプリッとしてるから、ちゃんとパンツが引っかかるんですよ。でも、日本人はお尻のところにタオルでも入れない限り、同じことはできないでしょ(笑)。だから真似してもしょうがない。

ーそれでご自身たちのスタイルを確立していったわけですね。

Bose:スチャダラパーは、みんな一旦諦めてますから(笑)。アフロとか似合わないし、そもそも俺たち髪サラサラだし(笑)。だけど、内心は自分たちのできることを必死になって探しているんですよ。真似はできないけど、かっこよくなるにはどうすればいいんだろう? って。

ースクラップ&ビルドということですね。

Bose:完全にそうですね。それで自分たちの方法を見つけた結果、東京のファッションが海外にウケたりしたわけでしょう? ファレルがそれを世界に広めたりして。NIGO®︎くんやシンちゃん(SKATE THING)たちがそれをやったような気がするんですよね。スチャダラパーもそれと同じような感覚で音楽をやっているつもりなんです。

INFORMATION

BEAMS 23SS COLLECTION

公式サイト
Instagram:@beams_official @beams_mens_casual

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