「ビームス」のアイテムはどれもきちんとツボが押さえられている。
ー今季の「ビームス」は、「Y2K」というテーマを掲げてメンズのオリジナルアイテムをデザインしています。
Bose:2000年代ってことですか?
吉川:そうですね。当時のカルチャーをもう一度掘り起こしてます。
Bose:もう23年前か…。
吉川:当時って、ちょっと近未来的なデザインがよく取り入れられていたんですよ。そうしたものがいままた新鮮に見えるんですよね。
Bose:ちょっと前まで90年代ブームだったけど、ぼくらが当時来てたものがそのまま古着屋で売ってて。要はサイクルしてるんですね。2000年代のファッションはシルエット的に細かったですよね?
吉川:そうですね。エディ・スリマンがめちゃくちゃタイトな服をコレクションで発表したりして。
Bose:じゃあまた細くなるんですか?
吉川:もしかしたら、そうなるかもですね。個人的にもう細い服には戻れないですけど…(笑)
Bose:戻れないですよね(笑)。だけど、いまの若い子たちを見ていると、パンツとか太いでしょ?
吉川:ボトムは太めですが、トップスはコンパクトになってますね。全身タイトっていうのは当分でてはこないと思いますが。
Bose:ダボっとしてたほうがラクですもんね。
ー今回はどんなラインナップになっていますか?
吉川:半袖アイテムやショーツ類など、盛夏ものが充実していて、ぼくらが得意とするアメカジを押し出してますね。そこに「Y2K」を象徴するような、テクニカルな服を効果的に差し込んでいってます。
Bose:自分たちも着ているようなベーシックな服が多いですね。
吉川:まずこのアイテムからご紹介したいんですけど、これは2000年代のスノーボードパンツからインスピレーションを受けてつくったアイテムですね。スノボパンツなので、本来ならショーツはないんですけど(笑)
Bose:おもしろいデザインですね。
吉川:スノーボードのパンツって、グローブしたままでもポケットを開きやすいように、タブが大きめについているんですよ。それがデザイン的におもしろくて、そうしたディテールを採用していますね。生地は真夏に穿きやすいように軽めのものを使用して、すこしだけ軍パンっぽく見えるようにデザインしてます。
Bose:たしかにポケット開けるのラクですね。これから全部のパンツにコレついてたらいいのにね(笑)
吉川:この短パンに合わせるトップスとして提案したいのが、このアロハシャツなんです。ちょっと素材のミスマッチ感があるんですけど、それによって短パンが引き立つかなと思って。このアロハシャツ、「ビームス」の特別なネームタグをつけているんです。
Bose:あっ! 雷門になってる!
吉川:そうなんです。あと、新幹線も描いてあって。「東洋エンタープライズ」というメーカーがやっている〈サンサーフ〉というブランドなんですけど、「ビームス」ではむかしから別注をつくらせてもらっていて、ネームタグもずっとこれを使わせてもらってるんです。とにかく研究熱心なブランドで、ヴィンテージのアロハを収集して、それを復刻しているんですよ。
Bose:じゃあ、この柄は本当にあったやつなんですね。
吉川:そうなんです。ヴィンテージの柄を見つけたらそれを買い取って、いつも新しいアロハを出しているんですよ。
Bose:むかしのガンプラを、むかしのまま出すみたいなね(笑)
吉川:そうですね(笑)。「ビームス」はクレイジーパターンをつくるのが得意なので、このアイテムでは4つの柄を混ぜているんですよ。
Bose:本当だ。ちゃんと考えてますね。
吉川:続いてはこちらのシャツですね。本当にベーシックなデザインではあるんですけど。
Bose:シワシワですね?
吉川:シワ加工を施してあって、洗ってもずっとシワシワなんです(笑)
Bose:わざとこういう風にしてあるんだ。お母さんに怒られちゃうね(笑)
吉川:若草色で絶妙なカラーリングが夏にピッタリかなと。そしてこのシャツに合わせたいのが、こちらのパンツですね。いわゆるベイカーパンツなんですが、夏仕様の生地を使っていて、すごく軽くて肌離れもいいんですよ。
Bose:本当にすごく薄手ですね。穿き心地よさそう。裾はカットオフしてるんですか?
吉川:穿くと9部丈くらいになって、サンダルとかとコーディネートしやすくしてますね。最近はベルトをしない人も増えているので、ウエストにドローコードをつけてます。
Bose:やっぱりみんなそうなの!? 自分もベルトなしでいいわってなってるんですよ(笑)。これに慣れちゃったらもうベルトには戻れないですよね。
吉川:一応ベルトループもつけているんですけど、やっぱりこれがあると圧倒的にラクなので。
ーBoseさんの服選びはどんどんリラックスな方へと向かっているんですか?
Bose:なんとなくそういうアイテムを選びがちになっちゃいますね。そういう服もだんだん増えてきたから。
吉川:その反面、若い子達はベルトをつけて上着をインしたりしてて。二極化してますね。
Bose:こっちのTシャツは古着みたいですね?
吉川:これは長年着込んで日焼けした古着をイメージして、いまの技術を駆使してつくったアイテムです。
Bose:この日焼けの加工はどうやってるんですか?
吉川:特別な染色方法で製品染し、ハンドブリーチで色を抜いているんですよ。古着屋さんにあるアイテムは経年変化が魅力的なんですけど、生地が痩せてたりして、耐久性が心配だったりするじゃないですか。だけど、これは新品なので長く着られます。
Bose:なるほど、そういうニッチな悩みを解決してるわけだ。
吉川:加工技術も年々進化していっているので、そうしたところにも目を向けてつくってますね。
ーBoseさんといえば赤い服というイメージがあります。
Bose:そうですよね。このTシャツぼくがむかし着てた服じゃない? って思いましたよ(笑)
ー赤い色に思い入れはあるんですか?
Bose:単純に赤レンジャー的な役割ですね。スチャダラパーは3人いるから「青、緑、赤」みたいな。このTシャツはそのまま着て帰ってもいいくらい。
吉川:シルエットはちょっとルーズにしてますね。
Bose:「BIG POLO」ってむかしあったけど、いまはまたあの当時のサイズ感に戻ってますよね。
吉川:続いて紹介するのは、「ビームス」の夏の定番シャツですね。ボタンダウンなんですけど、ヘビーオックスっていうかなりコシのある生地を使ってます。
Bose:サイズがかなりデカイですね。
吉川:かなり大きくしてます。だけど、ネックは首にフィットするようにして、着丈のバランスもしっかり調整してますね。ただ大きくするんじゃなくて、全体のバランスをきちんと整えて着やすくしてるんです。むかしはXXLとか、XXXLとかで着てて、どこかアンバランスな部分が出てきたと思うんですけど。
Bose:そうですね。着丈がすごく長かったりね。
吉川:あとは首もガバガバだったりするんですけど、そういう悩みを解決させながらつくってるんです。それでこのシャツに合わせたいのが、こちらのデニムのショーツですね。
Bose:これもベルトなしのパターンですね。
吉川:〈グラミチ〉の別注なんですけど、シルエットもいまっぽくしてますね。ウエストはジャストサイズで、太もも辺りからふくらみがでるようなラインです。
Bose:こういうショーツもむかしは36インチとか極端にデカイやつを穿いて、ウエストをギュンギュンに絞って穿いてましたよね。
吉川:こちらはすごくピッチの細かなボーダーTシャツです。遠くから見ると無地に見えてもおかしくないんですけど、実はボーダーなんです。生地はコットンにレーヨンを混ぜていて。
Bose:本当だ。すこしだけとろみがありますね。
吉川:それがちょっとした清涼感につながってます。デザインは本当にベーシックなので、いろんな着こなしに合わせやすいかと。
Bose:すごい清潔感がありますね。
吉川:お母さんによろこばれるアイテムです(笑)
Bose:「こういう服着てる子と付き合いなさい」みたいなね(笑)。親ウケ抜群!
ーこちらでひと通りアイテムをご覧いただきましたが、どんな印象を受けましたか?
Bose:全体的にはすごくベーシックでしたね。すごくなじみがあるというか。だから何も気にせずパッと手に取って、サッと着やすそうだなと思いました。やっぱりね、普通がいいんですよ。それで素材がよければなおうれしい。気をつけないと、全身ファストファッションだと思われちゃうから。だけど「ビームス」のアイテムはどれもベーシックで、なおかつちゃんとしてましたね。きちんとツボが押さえられてました。
吉川:ぼくらもデザインを考えるときに、ファストファッションみたいにならないように気をつけてるんです。だからアイテムによってきちんとこだわるポイントを明確にしているんです。
Bose:着る側もそこは気にしますよ。肌に触れるものだから、できれば質のよいものを選びたい。説明をしてもらいながら、それがしっかり形になっているんだなと思いました。