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着ぶくれ手帖カルチャーをなくしたものづくり。金子恵治が手がけるAORのリミックス。
Keiji Kaneko × Adult Oriented Robes

着ぶくれ手帖
カルチャーをなくしたものづくり。金子恵治が手がけるAORのリミックス。

「ぼくはファッションの人間であって、カルチャーの人間ではない。だから〈AOR〉はずっと憧れだったんです」。「着ぶくれ手帖」を主宰する金子恵治さんがそんなことを呟きます。今回取り扱うのは、〈アダルトオリエンテッドローブス(Adult Oriented Robes)〉の服。このブランドのデザイナーである弓削匠さんの背景には音楽が流れています。だからこそ「手が出せなかった」と金子さん。それならば、ということでつくられたのが「AOR Classics」と名付けられたコレクション。カジュアルな〈AOR〉の服をイチから見直し、クラシックなテーラードの手法を取り入れて“リミックス”した今作。その裏側にはどんなストーリーがあるのでしょうか? 金子さん、弓削さんに、思う存分語ってもらいましょう。

本当に理想系のものができちゃった。

ーそして今回、おふたりが「AOR Classics」として交わることになったと。

金子: 基本的には〈AOR〉のパターンは変えずに、つくり方や素材を変えて、ぼくらしい服に変換しました。

弓削: めちゃくちゃ新鮮ですね。

金子: 一瞬、「『LE』のアイテムなんじゃないか?」って見間違えてしまうくらい、ぼくっぽいアイテムになりました(笑)。

弓削: それはぼくの思惑通りでもあるんですよ(笑)。

ーこの大きさと、クラシックなつくりの掛け合わせが、ユニークですよね。

金子: 伝統的な製法を取り入れた〈AOR〉という意味で、「AOR Classics」という名前をつけました。あと、〈AOR〉の服ってシーズン毎にアップデートが繰り返されているんですよね。だけど、ぼくはファーストシーズンで弓削さんがつくったフォルムが好きで、それを今回は採用しているんです。だから原点回帰という意味も“Classics”という言葉には込められています。

ー初期〈AOR〉のフォルムなんですね。どんな変遷があったんですか?

金子: 現行のアイテムはもっと肩の付け方がソフトで、ぼくが何もしなくてもみんな着やすくなっているんです。だからこそ、初期のアイテムの着にくい感じを着やすくアレンジしたくて。

弓削: ぼくが理想とするオーバーサイズってピンポイントのひとたちにしか響かないんですよ。だから現行のものは万人受けするように、フィットを見直したんです。それでもオーバーサイズに変わりはないんですけどね。ただ、ぼくとしてはやっぱり初期のフォルムをどこかに残したかった。それを金子さんが見直してくれたので、本当によかったですね。

ー今回金子さんがアレンジを加えた初期のジャケットは、どんなお気持ちでデザインされたんですか?

弓削: それはもう完全に〈ジョルジオ アルマーニ〉です。あのバランスをどう再構築したら、現代的になるかということを考えたんですよ。素材を現代のものに変えたりとか、機能的なディテールを加えたりしながら〈AOR〉らしいデザインに組み替えていったんです。

AOR Classics New Milton Keynes ¥88,000

ーそれを今度は金子さんがクラシックな製法に置き換えたわけですね。

金子: そうですね。ウールの生地を使って、芯地も入れて。

弓削: ぼくがつくったときは完全にアンコンジャケットでしたけど、今回はしっかりとブラッシュアップされています。袖を通したときに「おぉ!」って声が出ちゃいましたもん。

ーしっかりと着丈があって、肩幅と身幅もゆとりがありますよね。そこに芯地が加わることによってベタッとせず、しっかりとフォルムが出るようになっていて。

金子: 芯地に頼りすぎると逆に変なフォルムになっちゃったりするんです。だから、ある程度柔らかさを残すように意識しましたね。そのバランスがすごく難しくて。今回はテーラードに詳しい方々にチームに入ってもらって、セッションしながらつくったんですよ。結果的にこのフォルムは引き算をして生まれたものなんです。

弓削: 金子さんが着ているのも見てみたいですね。

ー是非、おねがいします。

金子: どうですか? 個人的には本当に理想系のものができちゃったと思ってるんですけど(笑)。パンツもそんなに太すぎず。

ー生地はどんなものを採用しているんですか?

金子: 国産のSuper 100’sの生地で仕立てていて、フォーマルにもカジュアルにも着やすいようにしました。あんまり気を使わずに着られるというか、絶妙なバランスを狙っています。

弓削: めちゃくちゃいいですね。

金子: ボタンダウンのシャツも、アメリカのトラッドブランドのアイテムを参考にしています。ボタンの数は6個にしているので、襟の開き具合がちょうどいいんです。これ本当に思い描いたままのものができてますよ。

弓削: ぼくら世代のひとたちが着るのはもちろんだけど、若い世代の子たちが着てもよさそうですよね。また違った雰囲気になりそうです。

ーサックスに加えて、クリーム色は金子さんらしい色ですね。

AOR Classics Seine ¥30,800

弓削: 色はすごくこだわってましたよね。

金子: たまに古着で出てくる色で、すごく好きなんですよ。チャコールと合わせたときに、すごくシックなムードが出るというか。

弓削: なんか70年代の雰囲気がめちゃくちゃ出てます。映画に出てきそう。

金子: サックスのほうは、やや赤みがかった色を選びました。こちらはブレザーと合わせると、すごく発色がキレイに出ますね。シャツはどちらもあえてズレた色をセレクトしていますね。生地は若干繊細なものをピックアップして、細かな運針でドレスっぽくつくっているんです。

ースラックスはストレートですか?

AOR Classics Lodgers ¥55,000

弓削: これは〈AOR〉にないシルエットですね。

金子: いわゆるパイプドステムみたいな、腰から裾までズドンと落ちるシルエットです。厳密にいうとすこしだけテーパードしたような感覚があるんですが、ほぼストレートに近いです。ぼくのマイブームシルエットですね。ジャケットがこれだけ大きいので、パンツのシルエットがはっきりしているほうがバランスがよくなると思って。

ー受け皿がしっかりとするというか。

金子: そうですね。今日は革靴を履いてますけど、スニーカーでも合わせやすいと思います。ウエストにはマーベルトをつけているので、腰回りがしっかりとフィットして、シャツがずり上がってくることもないと思います。

INFORMATION

Adult Oriented Rooms

080‐4874‐5038

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