PROFILE
セレクトショップ「エディフィス」にてバイヤーを務めた後に独立。自身の活動を経て、2015年に「レショップ」を立ち上げる。現在は同ショップのコンセプターを務めるとともに、さまざまなブランドやレーベルの監修も行う。
時間をかけて自分にとってのベーシックが見えてきた。
世界中を飛び回るバイヤーという職業柄、各地でたくさんのモノを手にとり、その温度や肌触り、そして美しさや、おもしろさを確かめてきた金子さん。そのときどきの自身の気分を発信しつづけてきたなかで、いつも愛用しているアイテムとは、一体どんなものなのでしょうか?
「なんだかんだでやっぱり、ベーシックなものを愛用していますね。とくに最近は原点回帰というか、よりそうした傾向が強くなっている気がします。トレンドを追い続けるのは簡単なんですけど、ベーシックなものをいざ選ぼうと思うと、どこにポイントを置くかというのが大事になってきます。値段であったり、クオリティーであったり、あとは歴史や背景であったりとか、たくさんのポイントがある。ぼくもいろんなものを手に取りながら、時間をかけてようやく自分にとってのベーシックが見えてきたんですよ」
“ローマは一日にして成らず”という言葉があるけれど、やっぱり金子さんの場合も時間をかけてその審美眼を磨いてきたということ。そして、そこにはただのベーシックではない“金子さんのベーシック”が確実に存在しているのです。
「アメリカものをヨーロッパ的視点で眺めたり、またその逆も然り。あとはドレスをカジュアルに着たりとか、そういうクロスオーバーした感覚がぼくは好きなんですよ。ベーシックはベーシックなんだけど、着方や使い方は直球ではいかない。そういう感覚が常にぼくのなかにありますね」
今回紹介してもらうアイテムは当然、すべて金子さんの私物。何度も着て、何度も洗濯とアイロンが重ねられてきたもの。あるときは丁寧に、そしてあるときは荒っぽく、金子さん独自の距離感で手入れがされてきたものは、なぜだか佇まいに魅力を感じてならないのです。
「普通に洗濯して、普通に干しているだけなんですけどね。やっぱり洗い上がりがダメなものは着る回数も減るんですけど、それを経てだんだんとよくなってきたものもあって。だから洗うっていう行為も、ぼくのなかでは結構大事だったりしますね」
モノに寄せるというよりは、金子さんの場合、モノを自分に寄せるのが上手なのかもしれません。だからこそ、アイテムによってその向き合い方に変化があるような気がします。その距離の測り方と、タッチの方法に金子さんのセンスが凝縮されているのです。これから紹介する“金子さんのベーシック”から、そのセンスを覗いてみましょう。