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着ぶくれ手帖 〜金子恵治のファッション備忘録〜松浦弥太郎とつくったオックスフォードのレギュラーカラーシャツ。
Keiji Kaneko × Yataro Matsuura

着ぶくれ手帖 〜金子恵治のファッション備忘録〜
松浦弥太郎とつくったオックスフォードのレギュラーカラーシャツ。

「なにか一緒につくりたいですね」。「着ぶくれ手帖」で対談をした松浦弥太郎さんと意気投合した金子恵治さん。あれから1年が経ち、1枚のシャツが完成しました。できあがったのはオックスフォードのレギュラーカラーシャツ。対談の際に松浦さんが「ずっと着続ける」と語った「U.S. AIR FORCE」のシャツを手に取りながら、じっくりとお互いの意見を交わし合ってつくったアイテムは、オリジナルに忠実なようで何かが違う。普遍的であるのに、どこか愛嬌のあるつくりになっているのです。そんな1枚を眺めながら、おふたりに誕生秘話を語ってもらいましょう。

アメリカの原風景が、やっぱり忘れられない。

ー実際にできあがったサンプルをご覧になられて、いかがですか?

松浦: やっぱりいいですね。オックスフォードのシャツってボタンダウンが一般的で、なんだか神話化しているじゃないですか。だけど実際に袖を通すと、なかなかアメリカ人のようにかっこよくは着れない。そうゆうコンプレックスを抱いていると、レギュラーカラーであり、ボタンが白いプラスチックでカジュアルなつくりになっているシャツってちょうどいいんです。

金子: あの神話を疑うひとっていないですよね(笑)。いたとしても、その代替案として別のアイテムを探したりするひとってあまりいない。そういう意味でも、オックスフォードのレギュラーカラーシャツって、すごく盲点だったなと思います。

松浦: そうそう。ぼくはもともとアメリカかぶれなので、これが理想的だなと思ってずっと着ていたんです。とはいえ、他のメディアでも紹介することはなかったんですけどね。

金子: どうして紹介してこなかったんですか?

松浦: 基本的にアメカジ、アメトラが好きで、若いときにどっぷりと沼にハマっていたんですけど、それをあえて公言しなかったんです(笑)。

日本でアメカジが好きと言うと、どうしてもヴィンテージとか、そうした文脈で見られがちじゃないですか。「自分はそうじゃない」「誤解されたくない」と思っていたんです。それでなかなか自分から言い出すことができなくて。その後にヨーロッパものとかも好きになったりするんですが、結局は自分がカテゴライズされてしまうのを恐れていたんだと思います。

ーだけど、いまこうやってシャツを紹介されて、それを隠されていないですよね。

松浦: 歳を重ねると、アメカジがしっくりくるんです。だから着たくなる。ようやくアメカジが好きって言えるようになったんです。

金子: 前回の対談で「ファッションはコミュニケーションだけど、プレゼンをする必要はない」って仰ってましたよね。その話と通じるような気がします。

松浦: ぼくの中のアメカジって、音楽とか、カルチャーとかが絡んでいない普通の一般的な格好なんですよね。日曜日のお父さんみたいな感じというか、なんてことないシャツをチノパンにタックインしてるようなスタイル。決しておしゃれしている様子はないし、すごくコンサバティブなんだけど、あれがぼくにとってのアメカジなんです。

金子: 本当の日常のアメリカですよね。

松浦: 理想は宇宙飛行士の休日の格好というかね(笑)。それに憧れがあったから、今日もポロシャツ、チノパン、キャンバスのスニーカーなんです。出かける前に家で鏡を見て、まさに保守的なアメリカン・クラシックだなと思いましたよ。とくに主張はないけどちょっと小綺麗で、全然ファッションとは関係のないアメリカの原風景が、やっぱり忘れられないんです。それが年齢と共にできるようになってきて、だからカミングアウトしてもいいかという気持ちになったんですよ。

ーそうしたコンサバティブなアメカジって、大量生産されたもので構成されるような気がします。今回のシャツも「U.S. AIR FORCE」のシャツがオリジナルとしてあって、やっぱり工業製品なんですよね。

松浦: そうですね。アメリカのそうした服って質実剛健なんですよね。デザインよりも、そうしたつくりに憧れます。

INFORMATION

松浦弥太郎 × 金子恵治
フライターオックスフォードシャツ受注会

開催期間: 8月11日(日)〜31日(土)
場所: BOUTIQUE
住所:東京都港区北青山2-12-42 秀和第二北青山レジデンス 1F
*営業日時 不定期の為、BOUTIQUEインスタグラムにてご確認ください。
*8月11日(日)のみ、松浦弥太郎さん在店(11:00〜19:00)

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